2018年の訪日外国人観光客数は3,119万人と、6年前と比較して約6倍となり過去最高を記録。
また、2017年の国内における旅行消費額26.7兆円のうち約6割の16.1兆円が、日本人国内宿泊旅行に費やされています。
そして、インバウンド市場の盛り上がりに加えて、2020年に開催予定だった東京オリンピックを見越し、ホテルを対象とした不動産投資も増加していました。
そのなかでも人気だったのは、専門ノウハウがそこまで必要ではなく、賃料負担力も高く、比較的小さな土地から検討することが出来る、ビジネスホテルへの投資でした。
しかし、これにより起こったのは、ビジネスホテルの供給過多問題。加えてコロナ禍により、その状況は悪化してしまったのです。
差別化も出来ず供給だけが大きく増えすぎてしまったビジネスホテル。
コロナ禍によって明るみになったものの、実はそれ以前から増えすぎな状況にありました。
そこで、今回はホテル業界はどのような分類の上に成り立っているのか、世界と日本の上位ホテルチェーンの比較、ホテル業界に今後求められることは何か。をお伝えしていきます。
Contents
ホテルの分類はどうなっている?4つの観点から解説
ホテルと聞けば誰もが連想できるもの。
旅行や出張など、さまざまな目的で活用されます。
しかしひとくちにホテルといっても、さまざまな種類に分けられるのです。
まずはホテル業界がどのように分類されているのかを、4つの観点から解説していきます。
ホテルの種類による分類① 機能別分類
まずご紹介するのは、機能別でみたホテルの分類です。
機能面では、ホテルが提供するサービスや保有施設などの観点から3つに分類されています。
フルサービス
フルサービスは宿泊機能だけでなく食事や宴会など、さまざまな機能を抱えている多機能施設のことです。
立地条件に縛られないものの、都市の中心部に多いことから、シティホテルとも呼ばれます。
宿泊目的ではなく披露宴や新年会などの宴会、またはホテル内レストランのビュッフェやアフタヌーンティーを楽しむ目的でも訪れることが可能。
ホテルのグレードは高い傾向にあり、中級以上のホテルが多いです。
リミテッドサービス
リミテッドサービスはその名の通り、機能に制限があるもの。
つまり本来の宿泊機能を主体としているホテルです。
別名「宿泊特化型ホテル」ともいわれます。
リミテッドサービスの場合は宿泊費を安く抑えられるように、宿泊機能以外を極力減らしている点が特徴的。
そのためサービスや施設も最小限、そして食事も小規模で、セルフサービスの場合がほとんどです。
宿泊のみを必要としている場合に利用され、格安ホテルに多くみられます。
しかし最近では最小限に抑えたなかでも、差別化を図るためさまざまな工夫を施すホテルが増えているそうです。
リゾート
リゾートは著名な観光地エリアにあり、保養・避暑避寒・行楽など休暇滞在のためのホテルです。
宿泊機能はもちろんのことレストランやプール、スパのような施設が充実しています。
比較的高価格帯のホテルが多く、旅行などで遠出した際に利用する場合が多いでしょう。
フルサービスのホテルがリゾート地にあるイメージです。
ホテルの種類による分類② 価格別分類
次にご紹介するのは、価格別でみたホテルの分類です。
宿泊の際に価格を基準にしている方は多く、機能面や客室面積、ADR(平均客室単価)により7段階に分類されています。
ラグジュアリー
ラグジュアリーとは、「豪華な、贅沢な」を意味する英単語。
ラグジュアリーホテルは「最高級価格帯」であり、世界的なラグジュアリーブランドとして認知されている著名なホテルチェーンのことです。
米国ホテル&モーテル協会によると、「大規模で豪華な設備とサービスが国際基準をクリア、多数のスイートルームを持ち、1,000室級の施設で、多くの客の収容が可能な施設」とされています。
機能タイプ | 客室面積の目安(㎡) | ADRの目安(円) |
フルサービス/リゾート | 40〜 | 40,000〜 |
アッパーアップスケール
ラグジュアリーホテルが5つ星ホテルだとすると、アッパーアップスケールは4つ星ホテル。
アッパーアップスケールホテルは、「高級価格帯」のホテルであり、世界的な高級ホテルブランドとしてに認知されている著名なホテルのことです。
有名なホテルチェーンの親会社であることが多い点が特徴。
日本のホテルでは御三家である「帝国ホテル」「ホテルオークラ東京」「ホテルニューオータニ」などが相当します。
機能タイプ | 客室面積の目安(㎡) | ADRの目安(円) |
フルサービス/リゾート | 30〜40 | 30,000〜40,000 |
アップスケール
アップスケールホテルは、ラグジュアリーやアッパーアップスケールの高級感を維持しつつ、機能を効率化した「上級価格帯」のホテルのことです。
世界的な高級ホテルブランドとして認知があり、著名なホテルチェーンの傘下で展開している点が特徴的。
ホテルの機能はフルサービスからリミテッドサービスと、幅広い形態のホテルがあります。
日本のホテルの代表例には「京王プラザホテル」「東急ホテル」などが挙げられます。
機能タイプ | 客室面積の目安(㎡) | ADRの目安(円) |
フルサービス/リゾート/リミテッドサービス | 20〜30 | 20,000〜30,000 |
アッパーミドルスケール
アッパーミドルスケールホテルは、機能を最小限に抑えつつも客室面積やインテリアが優れ、より快適さを求めた「上〜中価格帯」のホテルのことです。
宿泊機能をメインとしつつも、快適さや高級感が味わえる層といえます。
機能タイプ | 客室面積の目安(㎡) | ADRの目安(円) |
リミテッドサービス | 415〜20 | 10,000〜20,000 |
ミッドスケール
ミッドスケールホテルは、宿泊客層や機能を絞った「中価格帯」のホテルのことです。
サービスや施設などの機能ではなく、宿泊機能や価格を重視している点が特徴的。
ビジネス客やファミリー層など、幅広い客層が利用します。
機能タイプ | 客室面積の目安(㎡) | ADRの目安(円) |
リミテッドサービス | 10〜15 | 〜10,000 |
エコノミー
エコノミーホテルは、相対的にADRが低価格帯にある「徳用価格帯」のホテルです。
コンパクトな部屋と必要最低限の設備。寝られればOKで安く済ませたい客層向けで、ミッドスケールよりも機能面を抑えたホテルです。
ビジネスチェーンのホテルが多く、「東急イン」「サンルートホテル」「ワシントンホテル」などがあてはまります。
機能タイプ | 客室面積の目安(㎡) | ADRの目安(円) |
リミテッドサービス | 10〜 | 10,000〜 |
バジェット
バジェットは「低予算の」という意味をもつ英単語。
バジェットホテルは、「格安帯」のホテルでエコノミーよりも安く、そして機能や設備も最小限のホテルのことです。
一番宿泊に特化している分類のホテルといえるでしょう。
駅に近いロケーションに多く所在していることから、宿泊だけを済ませたい客層に人気となっています。
日本の有名ホテルチェーン、アパホテル・東横イン・ルートインが代表的な例です。
機能タイプ | 客室面積の目安(㎡) | ADRの目安(円) |
リミテッドサービス | 10〜15未満 | 10,000未満 |
運営方式による分類
ホテルは運営方式によっても分類され、主に4つの運営方式から成り立っています。
宿泊客としてホテルを調べる際に運営方式を気にする必要はないため、馴染みがないかもしれません。
しかし、不動産業界、あるいは不動産投資に関わるのであれば、知っておくべき重要なポイントです。
直営方式
ホテル運営の直営方式とは、事業者が土地購入・ホテル建設などの開発から手がけ、経営や運営も担当します。
ホテルの所有・経営・運営が全て同じ事業者であるため、最もわかりやすい方式です。直営方式の場合、土地購入やホテル建設費など、開業までに相当な額のお金がかかります。
しかし、ニーズや要望に合わせたホテルの改革など、迅速な意思決定が可能な点が魅力的です。
また社会的にも信用性が高く、融資を受けやすい点も特徴。
独自ブランドの成長とともに、チェーン展開にも期待できます。
日本の代表的な直営方式のホテルには「帝国ホテル」「プリンスホテル」「リーガロイヤルホテル」などが挙げられます。
MC(マネジメントコントラクト)
ホテル運営のマネジメントコントラクト方式とは、運営は別の会社に任せる方式のことです。別名「管理運営委託契約」ともいい、こちらの言い方の方が意味がわかりやすいでしょう。
資本力がある企業や第三者がホテルを建設・所有し、経営も行います。
運営会社はそれ相応の知名度と専門的な運営ノウハウが求められます。
一方で、運営会社は経営リスクを負うことなく、チェーン展開が容易な点が特徴です。
またホテル所有者と経営者が共同でホテル運営会社を設立し、その会社に運営を委託することもあります。
日本の代表的なMC契約のホテルには「星野リゾート」「ホテルJALシティ」「オークラホテルズ&リゾーツ」などが挙げられます。
外資ホテルによくみられる方式で、世界的にも有名な「リッツカールトン」などはMC契約が多いホテルブランドです。
賃貸借契約
ホテル運営の賃貸借契約方式は、別名「リース方式」ともいいます。
賃貸借契約は一般的な不動産投資と同じ方式で、所有者(オーナー)からホテルを借り、経営・運営を担当。
建物のみを借りているため、ホテルのブランドは運営会社のものとなります。
テナントを賃貸で借りることと同じで、運営会社は所有者に賃料を支払います。
賃料はホテルの運営成績に拘らず定額を支払う固定賃料方式や、運営成績に応じて算定する変動賃料方式の2種類から選ぶ場合が多いでしょう。
フランチャイズ方式
ホテル運営のフランチャイズ方式は、ホテルの所有者や経営者が特定のホテルチェーンに加入し、その経営ノウハウやブランドを使用して運用する方法です。
コンビニ運営にも多く見られるのがフランチャイズ方式です。
所有者はホテル運営の売り上げが直接の収入となりますが、その代わりに本社へ加盟料やブランドロイヤリティを支払います。
日本のホテルでは「アパホテル」「スーパーホテル」「ホテルサンルート」などが代表的です。
立地による分類
ホテルはさまざまな場所で見かけますが、その立地も分類の要素となります。
立地についてはイメージしやすいと思いますが、ここでは改めて3つの立地から分類について解説していきます。
ダウンタウンホテル
ダウンタウンホテルというワードは、日本ではあまり馴染みがないですが、都心に立地した「シティホテル」のことです。
アメリカでは「アーバンホテル」とも呼びます。
ファミリーやカップル、ビジネスマンなどさまざまな宿泊ニーズに応えられるホテルです。
都市部に多く所在し、格安〜高級価格帯まで幅広いホテルがあります。
とはいえ高級カテゴリーのホテルが多く、機能面からみても「フルサービス」の多機能ホテルの傾向が強いです。
エアポートホテル
エアポートホテルは空港周辺、または空港構内に立地するホテルのことです。
成田空港や羽田空港、関西国際空港などの主要の国際空港周辺のホテルをイメージすると良いでしょう。
ビジネスマンや旅行者に多く活用されるホテルです。
リゾートホテル
リゾートホテルはその名の通り、著名観光地に立地する休暇に最適なホテルのことです。
高級カテゴリーに分類されるホテルが多く、施設や設備など多種多様な機能が充実している点が特徴です。
利用目的からの分類
一方で利用目的からもホテルを分類することが可能です。
ここでは4つの観点から、利用目的別にホテルをみていきましょう。
オールスイートホテル
オールスイートホテルとは、全室が寝室とバスルーム以外に独立したリビングルームやキッチンがついているスイートルームのホテルです。
高級価格帯のラグジュアリーホテルに多くみられ、客室面積が大きい点が特徴です。
長期滞在型ホテル
長期滞在型ホテルは、別名「レジデンシャルホテル」ともいいます。
一般的には1週間以上の利用客が対象となり、客室の広さや収納スペース、キッチンなどの設備が充実しています。
長期滞在になると宿泊費もかかることから、セルフサービスを導入していることが多いです。
またなかなかには1年以上の長期滞在が可能なホテルもあります。
会員制タイムシェアホテル
会員制タイムシェアホテルとは、会員となることで客室や提携施設が利用できるホテルのことです。
一般的には年間に決まった日数分、自由に宿泊できます。
例えばハワイによく訪れる場合、現地の会員制タイムシェアホテルに登録していれば別荘のように自由に利用できるのです。
INA&Associates Inc.は、不動産、IT、投資などにおける専門性と技術を活かし、「不動産」×「IT」を実現するために発生する、複雑な事柄に真摯に向き合い、”不動産をもっと分かりやすく。住まいを探されている方にとってもっと使いやすく。取引をもっとスムーズに。” 不動産×ITで独自の価値をお客様に提供することを目指しています。
世界と日本の有名ホテルチェーンをご紹介
これまで4つの観点から詳しくホテルの分類をお伝えしていきました。
では、売上や展開数が上位のホテルチェーンはどのような特徴を持っているのでしょうか。
今回は世界の3大ホテルチェーン、そして日本の5大ホテルチェーンをご紹介いたします。
【世界のホテル】マリオット・インターナショナル
まずは世界No. 1ホテルチェーンでもある、マリオット・インターナショナルからご紹介していきます。
歴史・概要
マリオット・インターナショナルは、世界的に有名な「ザ・リッツ・カールトン」を持つ世界1のホテルチェーンです。
その事業の始まりはホテルではなく、ノンアルコールビール店。
ここから事業が順調に拡大し、1937年に機内食事業を開始しました。
多くの航空会社にサービスを提供したことで、海外進出に成功。
そしてついにはフード産業に進出したことで、マリオット・コーポレーションが誕生しました。
好調なフード産業にとどまらず、1957年に第1号となるホテルを開業。
1980年代には100軒の展開を突破し、1993年に分社化してホテル部門であるマリオット・インターナショナルが登場しました。
1998年にはリッツ・カールトンを傘下に、そして2016年にはSSPGを買収。
今では世界131の国と地域に30のブランド、そして7,000を超えるホテルを傘下に抱えるNo. 1ホテルチェーンになりました。
マリオットグループのほとんどのホテルはアメリカに所在し、中国や東南アジアにも多くあります。
基本的にはラグジュアリーな高級ホテルが多い点が特徴です。
運営ブランド
30ものブランドをもちつつ、高級感溢れる個性的なホテルが多く集まっています。
下記に代表的な運営ブランドをピックアップしてみました。
◼︎ザ・リッツ・カールトン
◼︎マリオット・ホテル&リゾート
◼︎JWマリオット・ホテル&リゾート
◼︎シェラトン
◼︎ウェスティンなど
旅行者のさまざまこもにに対応できる多彩なブランドが揃っています。
伝統あるホテルが多い点も魅力的です。
日本での展開
2005年にブランド内で日本初のリゾートホテルが沖縄に誕生しました。
大規模な施設の充実さに加え、プライベートビーチでのアクティビティも豊富に揃えています。
また2019年には4年をかけて日本に34もの施設を開業予定と発表。
2020年春には「アロフト銀座」、夏には「ACホテル・バイ・マリオット銀座」がオープンしました。
マリオットの急激な日本進出の背景には、訪日外国人旅行客の増加があります。
基本的にはMC契約による展開で、マリオットが運営のみを担うスタイル。
長年の歴史と高いノウハウを持つマリオットはオーナーからも人気が高く、その知名度と規模から日本のパートナー企業も存在しています。
【世界のホテル】ヒルトン・ホテル&リゾート
お次にご紹介する世界のホテルは、日本でも知名度の高いヒルトン・ホテル&リゾートです。
マリオットに次ぐ2番手ながらも、ブランド単体ではNo. 1の売上を誇ります。
歴史・概要
2019年に100周年を迎えたヒルトン。
その歴史は、創業者であるコンラッド・ヒルトンが地方のホテルを購入したことから始まりました。
最初に購入したホテルはテキサス州シスコにあるホテル「ザ・モブリー」です。
のちに数年にわたりテキサス州内のホテルを数件購入し、ビジネスは順調に。
そして1925年に自身の名「ヒルトン」を冠する初めてのホテル「ダラス・ヒルトン」を開業したのです。
そして1943年には他ブランドのホテルを購入したことで、米国初のホテルグループに成長。
その3年後にはヒルトン・ホテルズ・コーポレーションを設立しました。
1960年代に入り、日本にも初となる外資系ホテルチェーンとして現ヒルトン東京がオープン。
その後も世界展開は衰えることなく、現在では18のブランドを抱え、世界118ヵ国に約6,100軒のホテルやリゾートを構えています。
運営ブランド
現在では18の運営ブランドを抱えているものの知名度の高さ、つまりブランド力でいえば創業者自身の名前を冠する「ヒルトン」「コンラッド」ではないでしょうか。
ヒルトンの中にもさらにラインナップが分かれており、利用目的や価格帯から豊富に選べます。
下記にいくつか運営ブランドをピックアップしていきます。
◼︎ヒルトン
◼︎コンラッド
◼︎ダブルツリー・バイ・ヒルトン
◼︎ヒルトン・ガーデン・イン
◼︎キュリオ
◼︎タペストリー・コレクションなど
日本での展開
日本での展開が大規模な外資ホテルチェーンでもあり北は北海道、南は沖縄まで所在します。
特に関東と沖縄に多く、関東には7軒、沖縄には5軒のヒルトンブランドのホテルが展開しています。
また2021年には「ヒルトン長崎」、2022年に「ダブルツリーbyヒルトン富山」、2023年には「ヒルトン札幌パークホテル」の開業を予定しています。
【世界のホテル】アコーホテルズ
最後にご紹介する世界3番手のアコーホテルズは、日本ではあまりメジャーではありません。
しかし日本にもいくつかブランドを展開しており、ヨーロッパや東南アジアで強いホテルチェーンとなります。
歴史・概要
アコーホテルズはヨーロッパ最大の大型ホテルチェーンで、世界各国に展開しています。
1967年にフランスで設立。
コンセプトやターゲットが異なる個性豊かなホテルブランドを展開している点が特徴です。
ヨーロッパのなかでも特に拠点でもあるフランスではかなりの展開数を誇っています。
他の大手ホテルチェーンが北米に集中していることもあり、売上の大半はヨーロッパ市場が占めています。
ヨーロッパが中心でありつつも、個性豊かな14のブランドを世界90ヵ国以上で3,500軒以上構えています。
運営ブランド
上級〜中級、そして格安ホテルと豊富なラインナップを揃えるアコーホテルズ、2016年にFRHIを買収し、「フェアモント」「ラッフルズ」「スイスホテル」のラグジュアリーブランドも加入しました。
以下が主なブランドです。
◼︎ソフティル
◼︎プルマン
◼︎Mギャラリー
◼︎メルキュール
◼︎イビスなど
ラグジュアリーホテルだけでなく、1泊5,000円未満のバジェットホテルがある点が、大手ホテルチェーンの中でも特徴的です。
ここまで幅広いカテゴリーのブランドを展開しているのは、アコーホテルズだけでしょう。
日本での展開
アコーホテルズの知名度は低いものの、日本での展開も多いです。
特に「メルキュール」「イビス」の展開が多く、今後も名古屋や京都に開業予定のホテルがあります。
気軽に宿泊しやすい価格帯のホテルが多く、多くの利用客から親しまれています。
【日本のホテル】プリンスホテル
ここからは日本のホテルについてお伝えしていきます。
ビジネスホテルが多い印象の日本ですが、意外にもリゾート・レジャー系のホテルが売り上げシェアを占めているのです。
ここからは日本のホテルについてお伝えしていきます。
ビジネスホテルが多い印象の日本ですが、意外にもリゾート・レジャー系のホテルが売り上げシェアを占めているのです。
歴史・概要
プリンスホテルの始まりは1920年。
箱根土地株式会社(旧株式会社コクド)から始まり、箱根や軽井沢などの観光地進出がメインでした。
そして現在の社名、そしてブランド名である「プリンスホテル」は、戦後に旧宮家の土地を購入してホテルを開業したことに由来しています。
今では西武グループ内のホテル・レジャー事業として、ホテルのみならずスキー場やゴルフ場などのレジャー施設も運営。
国内のホテル・レジャー業界では最大規模を誇ります。
ホテル事業である株式会社プリンスホテルの総売上は、2018年度で2,021億円です。
運営部屋数
国内外76ヵ所に展開し、その総客室数は21,000室超え。
国内では43軒のホテル、そして4つのブランドを構えています。
◼︎ザ・プリンス
◼︎グランドプリンス
◼︎プリンスホテル
◼︎プリンススマートイン
世界での展開
5ブランドから、世界に33軒のホテルを展開。
またオーストラリアを中心に25ホテルを展開するStay Well Holdings Pty Ltdを子会社に迎えたことで、よりスピーディーなグローバル展開が進んでいます。
【日本のホテル】リゾートトラスト
次は日本の2番手ホテルチェーン、リゾートトラストのご紹介です。
歴史・概要
1973年、名古屋市に宝塚エンタープライズ株式会社を設立。
翌年に第1号の会員制リゾートホテル「サンメンバーズひるがの」を開業しました。
その後も事業は順調に進み各所にホテルを展開し、日本の総合リゾート企業へと成長。
ホテルは主要事業であり、その中でも主軸は会員制ホテル。日本におけるリゾート会員権のシェアはトップを誇ります。
2020年3月期の売上高は、1,591億円。ホテル事業以外も含まれますが、主要事業はホテル関連です。
運営部屋数
国内48ヶ所でリゾートホテルを運営し、会員数は17万人超え。
創業以来45年間、会員制高級リゾートクラブ市場を牽引しています。
運営部屋数の明確な情報はないものの、国内展開の規模と会員数から見てもかなりの運営部屋数があるでしょう。
世界での展開
リゾートトラストは国内展開を主軸としているため、世界ではハワイ1ヶ所のみの展開となります。
運営ブランドは「ザ・カハラ・ホテル&リゾート」で、2014年にリゾートトラストが買収しました。
【日本のホテル】ルートインジャパン
お次は日本3番手となるホテルチェーン、ルートインジャパンです。
歴史・概要
ルートインジャパンは、ホテル・飲食店・ゴルフ施設・温泉施設・スキー場を運営。そのなかでもホテルルートインは、ビジネスホテルチェーンとして知名度のあるブランドです。
1977年に長野県で、永山興産株式会社を設立。
1996年に現在のルートインジャパン株式会社に変更しました。
ビジネスホテルを主軸に、リゾートホテルやシティホテルも展開。
子会社も多く抱え、ホテルのみならずさまざまな施設運営をしています。
2019年3月時点の売上高は、約1,300億
運営部屋数
施設数になってしまいますが、全359施設を運営。
そのうちホテルは321施設です。ビジネスホテル、リゾートホテル、シティホテルと、さまざまな形態のホテルを運営しています。
以下が主な運営ブランドです。
◼︎ルートイン
◼︎アークホテル
◼︎グランヴィリオホテル
◼︎グランティア
◼︎ルートインGrand
世界での展開
リゾートホテルであるグランヴィリオをサイパンに1軒、ベトナムに2軒の計3軒を展開しています。
【日本のホテル】アパホテル
お次にご紹介するのは日本の格安ホテルとしておなじみ、日本4番手となるホテルチェーン、アパホテルです。
歴史・概要
アパはもともと注文住宅販売会社であり、1980年にホテル事業となるアパホテル株式会社が設立。
1984年に金沢片町に第1号店を開業しました。
その後順調に全国にチェーン展開していき、2004年には合計部屋数10,000室を突破。
2015年には40,000室にものぼり、都心3区棟数はNo. 1となっています。
これほどの規模にまで成長した背景には、ブランチャイズ事業による拡大があります。
2019年11月期の決算で公開した売上高は、1,371億円です。
運営部屋数
2020年2月時点での運営部屋数は、国内外合わせて100,856室。
ビジネスマンが利用するアパホテルが多く、それ以外にもアパブランドを構えています。
以下が運営するブランドです。
◼︎アパホテル
◼︎アパヴィラホテル
◼︎アパホテル&リゾート
世界での展開
アメリカ・カナダの北米を中心に40軒のホテルを構え、5,028室を有しています。
現在は北米エリアにおいてアパグループの「Coast Hotels」を中心に事業基盤を固めつつ、今後はアジアでの展開も目指しています。
【日本のホテル】東横イン
最後にご紹介するのは、各所で見かけることの多い日本でも知名度の高い東横インです。
歴史・概要
1986年にした東横インは、宿泊特化型のエコノミーホテル運営を主要事業としています。
日本のみならず海外への展開している、格安が最大の特徴であるホテルチェーンです。
「駅近くで宿泊に特化したリーズナブルなホテルが欲しい」というビジネスマンの要望をもとに、設立されました。
東京蒲田に第1号店を開業したのちに、都心部を中心に続々とホテルをオープン。
2002年から2010年の間には、毎年15〜25軒以上とハイペースな開業を進めていました。
2020年3月時点での売上高は、947億円。日本では5番手となります。
運営部屋数
国内では高知県と佐賀県を除く45都道府県で321軒を展開。
運営客室数は69,675室を誇ります。
運営ホテルブランドは「東横イン(INN)」、そしてホテル数は少ないものの「東横インJr.」も存在します。
世界での展開
世界では韓国・カンボジア・ドイツ・フィリピン・フランス・モンゴルにて、18軒のホテルを展開。
そのなかでも韓国への所在がほとんどを占め、その数13軒となります。
世界のどの店舗でも基本的に日本と同じ装備、そしてサービスを維持しながら進出しています。
まとめ
今回はホテル業界の分類から、世界と日本の上位ホテルチェーンをご紹介いたしました。
ホテル業界を俯瞰するととても面白く、さまざまな観点で違いが見えてきます。
例えばマーケティング戦略であれば、同じ運営会社でも価格や機能の観点からブランドによって戦略が異なります。
また、運営戦略であれば、対象顧客が「出張者」「エグゼクティブ層」「旅行/観光客」とさまざま。
そして、運営において顧客満足度なのか、コストメリットなのか、居心地の良さなのかなど、何に重きをおいているのかも異なるのです。
今回ご紹介したホテルは、戦略の観点からみても運営会社ごと、ブランドごとにマーケティングや運営の戦略が確立されています。
長い歴史と培ってきたノウハウ、そして時代の流れも捉えられているからこそ、今もなお成功を収めているのではないでしょうか。
つまりこれからのホテル業界には、運営やマーケティング方針、そしてホテルの存在価値により一層の差別化が求められるのです。
その背景には、コロナ禍の影響、そしてそれ以前から水面下に合ったビジネスホテルの供給過多があります。
ぜひ、今回ご紹介した内容を参考にホテルの分類、そして国内・海外で成功を収めるホテルチェーンの傾向から、今後のホテル業界について考えてみてください。