入居者に立ち退きのお願いをするには?文書のテンプレートや流れを解説!

建物の老朽化や建て替え、家賃の未払いなど、様々な理由から入居者に退去してほしいと考えることもあるでしょう。
しかし、入居者に対して立ち退きを要求するには正当な事由が必要となります。
そこで今回は、立ち退き要求が認められる正当な事由をはじめ、立ち退きのお願いを記載した文書のテンプレート、立ち退き交渉の流れについて解説します。
立ち退き料や交渉が難航した場合のポイントなども紹介しているので、入居者への立ち退きをどうすれば良いのか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

Contents

立ち退きのお願いはどんなケースで発生する?

立ち退き

入居者に物件から退去するよう求める立ち退きは、「賃貸人の都合」と「賃借人に契約違反がみられた場合」の2つのケースがあります。
まずは、それぞれのケースについてご紹介しましょう。

賃貸人の都合

「老朽化した建物を建て替えたい」「建物を取り壊したい」などの理由により入居者に退去を求めるのは、オーナー側の都合になります。
契約期間がまだあるにも関わらず、自己都合で賃貸借契約を終了させるには「正当な事由」が必要です。

正当な事由とは、立ち退きを要求するもっともな理由を指します。
自己都合の立ち退きであっても耐震性が基準を満たしていない、老朽化による強度不足など、正当な事由と判断されれば立ち退きを求めることが可能です。
ただし、たとえ正当な事由があったとしても、住む場所を奪われる入居者には立ち退き料を支払うのが一般的です。

また、借地借家法ではオーナーの都合により立ち退きを求める場合、以下のような規制が設けられています。

・契約期間満了の場合
契約期間を定めた賃貸借契約を結んでいた場合、期間満了をもって入居者に退去を求めることがあります。
期間満了で建物の明け渡しを求める場合、オーナーは半年~1年前までには更新しない旨を通知することが、借地借家法によって定められています。
ただし、期間の定めがあったとしても、通知を出したからといって契約を終了できるわけではありません。
たとえ契約期間満了だとしても、契約更新を拒絶するには正当な事由が必要です。

・解約申し入れする場合
期間を定めていない賃貸借契約の場合、契約の解除を申し入れるには6ヶ月以上前に通知する必要があります。
なお、期間がない場合でも、立ち退きを求めるには正当な事由が必要です。
正当な事由を満たさないと判断された場合には、たとえ6ヶ月前に通知し期限が来たとしても、立ち退きを求めることはできないので注意してください。

賃借人に契約違反がみられた場合

賃借人側の契約違反には、家賃の滞納やペット不可にも関わらず飼育していた、無断で民泊として利用していたなどが挙げられます。
家賃の支払いが滞った場合、賃貸借契約の解除理由として認められるので、入居者に退去を求めることが可能です。
ただし、未払いが1ヶ月程度では退去を求めるほどの事由に認められないことがほとんどです。
少なくとも3ヶ月は様子を見る必要があるでしょう。
入居者に問題があって立ち退きを求める場合、基本的に立ち退き料を支払う必要はありません。

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立ち退き要求が認められる正当な事由

立ち退き

上記でもご紹介しましたが、立ち退き要求が認められるには正当な事由が必要です。
ここでは、立ち退きを要求が認められる4つの事由についてご紹介します。

賃貸人による自己利用

賃貸人の自己利用とは、貸している物件をオーナーが自ら使うことを意味します。
オーナーの自己利用で退去を求める場合、居住の必要性・営業の必要性・経済的困窮のいずれかに該当する必要があります。

・居住の必要性
貸している部屋にオーナーや家族、従業員が住む必要性を主張するものです。
例えば、介護のために家族と同居することになった、従業員に住む場所を提供することになったなどの理由から立ち退きを求める場合、居住の必要性に該当します。

・営業の必要性
オーナー自ら営業活動するために入居者に立ち退きを求める場合、営業の必要性に該当します。
例えば、新たに店舗を開業したいが他の物件が見つからないので、立ち退きを求めるケースです。

・経済的困窮
オーナーの経済状況が悪化し経営が難しいことを主張する場合、経済的困窮が当てはまります。
例えば空室が多いアパートを売却するなどのケースです。

建物の老朽化

貸し出している物件が老朽化し、住み続けるのが危険と判断される場合、入居者に立ち退きを求めることができます。
例えば、耐震性に問題がある、老朽化により倒壊する危険性があるなどです。
命に関わる可能性がある場合、立ち退きが認められることがあります。

ただし、空室対策のためリフォームしたいなど、緊急性に欠ける理由は正当な事由として認められないことがほとんどです。

賃貸契約の内容・経過

賃貸契約の内容や入居者の住み方によっては、退去を求める正当な事由として判断されます。
例えば、入居前に売却や建て替え計画など、立ち退きの可能性を提示していた場合、認められやすいです。
また、入居者側に家賃滞納や用法違反などにより立ち退きを求める場合、契約違反があるとして立ち退きが認められることがあります。

本来の用途で利用されていない

勝手に民泊として利用している、事務所として使っているなど、本来の用途とは違う目的で使用している場合、立ち退きを求める正当な理由として認められる場合があります。
賃貸借契約では契約で定められた用法に従って使用する必要があり、これを用法遵守義務といいます。

マンションやアパートの一室を旅行者に提供する民泊は、ホテルや旅館に比べて低価格で寝床を確保できるとして旅行者に人気のサービスです。
しかし、原則として民泊営業するには行政による許可や届け出が必要となります。

また、騒がしい・ルールを守らないなどの理由から、近隣住民とトラブルになることもあるでしょう。
こうした理由から賃貸借契約で民泊営業を禁止している場合、契約違反として立ち退きが認められやすいです。

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立ち退き通知書とは?

立ち退き

立ち退き通知書とは、対象物件から立ち退きを依頼する文書のことです。
入居者に立ち退きを求める場合、立ち退き通知書を送付し、なぜ立ち退きが必要なのか・立ち退き料・引っ越し期日などを記載します。
立ち退き通知書に記載する内容については後述しますが、立ち退きを求める場合は立ち退き料や引っ越し費用を支払うのが一般的です。

しかし、提示した金額を入居者がそのまま了承するとは限りません。
交渉によっては、提示した金額より高くなる場合もあります。

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立ち退きをお願いする文書のテンプレート

立ち退き

ここでは、立ち退きをお願いする立ち退き通知書に記載する項目について、詳しく説明します。
また、賃貸人都合と賃借人に契約違反がみられた場合、2つのケースの文書テンプレートもご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

立ち退き通知書に記載する項目

立ち退き通知書には、主に以下の内容を記載します。

・通知日
・宛先
・オーナーまたは管理会社名
・物件の所在地や家屋番号、床面積等
・賃貸借契約を締結した日
・賃貸借契約の満了日
・物件から立ち退きしてもらいたい理由
・立ち退き料や引っ越し費用など金銭に関する内容

賃貸人の都合で立ち退きをお願いする場合のテンプレート

立ち退き理由により、内容も変わります。
ここでは、老朽化による立ち退きを例にサンプルをご紹介しましょう。

通知書

令和○年○月○日(通知日)

〒 住所
○○ ○○殿(賃借人名)

〒 住所 
通知人 ○○(オーナーまたは管理会社の担当者名)

前略 通知人は、貴殿に対し、次の通り通知いたします。
通知人は、令和○年○月○日(契約締結日)、○○殿に対し、以下の条件で賃貸借契約を締結し、以下の建物を引き渡しました。

物件名:○○
所在地:○○
賃料:○○円
賃貸借期間:○○年

しかしながら、本物件は建築してから既に○○年経過しており、老朽化しています。
万が一倒壊した場合、貴殿を含む入居者の生命や体に重大な危険が及ぶ可能性もあることから、通知人は貴殿に対し、期間満了日である令和○年○月○日までに、速やかに本物件の明け渡しをお願いする次第です。
こちらからの退去願いとなりますので、契約時に原状回復費としてお預かりしております敷金の返還と引っ越し費用の負担をさせていただきます。
ただし、それ以上の費用負担は考えておりません。
つきましては、明け渡し日が決まりましたら、ご連絡ください。
退去に関するお手続きをさせていただきます。
以上、用件のみとなりますが、よろしくお願いいたします。

草々

賃借人に契約違反がみられた場合のテンプレート

続いては、賃借人に契約違反が見られた場合の文書のサンプルです。
家賃の不払いを理由に立ち退きを求める事例を参考にご紹介します。

通知書

令和○年○月○日(通知日)

〒 住所
○○ ○○殿(賃借人名)

〒 住所 
通知人 ○○(オーナーまたは管理会社の担当者名)

前略 通知人は、貴殿に対し、次の通り通知いたします。
通知人は、令和○年○月○日(契約締結日)、○○殿に対し、以下の条件で賃貸借契約を締結し、以下の建物を引き渡しました。

物件名:○○
所在地:○○
賃料:○○円

しかしながら、貴殿は令和○年○月分以降の賃料の支払いが滞っており、未払い額が○○万円となっております。
つきましては、通知人は貴殿に対し、これらの未納分家賃合計○○万円の支払いを請求いたします。
本通知書到達後○週間以内にお支払いください。
上記期限内に未納分全額のお支払いがない場合、改めて通知を送ることなく、貴殿との本物件賃貸借契約を解除しますので、ご了承ください。
その場合は、速やかに建物を原状回復し、通知人に明け渡していただきますようお願いいたします。
以上、用件のみですが失礼いたします。

早々

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立ち退きのお願いをする文書はどうやって渡す?

立ち退き

立ち退き通知書は裁判になった時証拠として必要になるので、内容証明郵便で出すのが望ましいです。
ここでは、内容証明郵便について詳しく解説するとともに、なぜ直接渡すことを避けた方が良いのか、その理由をご紹介します。

内容証明郵便がおすすめ

立ち退き通知書を相手に通知する際、普通郵便ではなく内容証明郵便を活用するのには理由があります。

・内容証明郵便とは
内容証明郵便は、郵便局が出した送付物の宛先・差出日時・差出人・書面の内容を証明してくれるものです。
内容証明郵便で送ることで、必要な通知を送ったという証拠を残せます。
普通郵便の場合、立ち退き通知書を送ったとしても、相手が届いていないと言えばそれを証明することはできません。
「見ていないのだから無効だ」と言われれば、それまでになってしまうのです。
しかし、内容証明郵便なら書面を送ったことを郵便局が証明してくれるので、届いていないという言い訳は通用しません。

・裁判の証拠としても使える
立ち退き通知書を出したからといって、スムーズに交渉が進むとは限らず、裁判に発展することも少なくありません。
裁判になった場合、いつ・どのような書面を出したかが争点となりますが、内容証明郵便ならそれらを証明する証拠として使えます。

・内容証明郵便を送るには
内容証明郵便を送るには、差出人に送る原本のほか、差出人の控え用と郵便局への提出用として2通の謄本(内容を謄写した書面)が必要です。
また、所定の書式に従い、表題・宛先・差出人・差出日・通知や請求の内容の記載が必須です。
書面の準備ができたら、郵便局で発送の手続きを行います。
一般の郵便物とは違い、ポストに投函できないので注意してください。
また、郵便局の窓口で手続きをする必要がありますが、すべての郵便局が対応しているわけではないので、内容証明郵便に対応している郵便局か事前に確認しておきましょう。

直接渡すとトラブルになりかねない

内容証明郵便を送るには所定の書式に従って書面を作成する必要があり、費用もかかります。
そのため、直接渡した方が早く、確実に渡せるのではないかと思われるかもしれません。
しかし、直接渡した場合、いきなり退去を通知された入居者は納得できず、口論などのトラブルに発展する可能性もあります。

借地借家法では、立ち退きをするにはオーナーと入居者、双方の合意が必要です。
万が一直接渡したことでトラブルになった場合、その後円満な解決に向けて話し合いを進めるのは困難になってしまうかもしれません。
トラブルを回避する意味でも、立ち退き通知書は内容証明郵便を活用した方が良いでしょう。

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立ち退き通知書の送付から退去するまでの流れ

立ち退き

賃貸人の都合で立ち退きをお願いする時はもちろん、賃借人に家賃滞納などの契約違反がみられた場合でも、まずは理由を伝えます。
理由に加えて、立ち退きをしてもらいたい時期なども話しておくとスムーズです。
この時、嘘や隠しごとがあると、交渉が失敗に終わってしまうこともあるので注意しましょう。

賃借人が家賃滞納している場合は、家賃の支払いを促し、応じてもらえなかった場合はそのまま次のステップへ移ります。
しかし先ほどもご紹介したように、立ち退きのお願いを直接行うと口論などのトラブルに発展してしまうこともあります。
そういったトラブルを回避したい場合は、初めから立ち退き通知書を送付しましょう。
ここからは、立ち退き通知書の送付から退去に至るまでの流れをご紹介します。

立ち退き通知書を送る

賃貸人の都合によるもの、賃借人の契約違反によるものは、どちらも立ち退き時期が決まったら立ち退き通知書を送ります。
立ち退き通知書は、契約が終了する1年前から半年前までに送付しなければならないため、送付する時期には注意しましょう。

なるべく早めにスケジュールを決めておくことが大切になります。

口頭での説明

しっかりと口頭でも説明をしておきたい場合は、電話や対面で立ち退きの理由や条件などの説明を行いましょう。
立ち退き通知書だけで納得してもらえない場合は、口頭での説明が有効になることもあります。

口頭での説明といっても、立ち退き通知書に記載した内容を中心に話すだけで問題ありません。
了承が得られない場合は、立ち退き交渉を行っていくことになります。

賃借人が了承したら退去へ

立ち退き交渉を行い、賃借人が了承してくれたら退去の手続きをします。
退去の手続きは、立ち退きに同意するという旨を書面に記してもらいましょう。
書面での締結を行うことによって、賃借人の意見が変わった時でも証拠として提出できるので安心です。

立ち退きをスムーズに進めるために、転居先を提案したり引っ越し業者を紹介したりすることもあります。
なるべくスムーズに退去してほしい場合は、転居先として提案できる物件を事前に探しておくと良いでしょう。

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正当な事由でも「立ち退き料」が必要!

立ち退き

立ち退き料は、正当な事由であっても支払うのが一般的です。
ただし、中には立ち退き料が発生しないケースもあります。
ここでは改めて立ち退き料とは何か、どのように算出するか、発生しないのはどのようなケースかなどをご紹介します。

立ち退き料とは?

賃貸人の都合で賃借人が立ち退かなければならなくなった時、補償として支払う費用を立ち退き料と言います。
立ち退き料は法的に決まっている用語ではなく、明確に金額が決まっていない上、必ず支払うべき費用というわけでもありません。
しかし、トラブルなどを避けるために支払うことが一般的になっていることや、立ち退き料がなければ退去してもらえないケースも少なくないため、支払う方向で考えておくのが無難でしょう。

立ち退き料の交渉は難航することも多く、大家さんの精神的負担になりがちです。
快く条件に了承してもらうためにも、日頃のコミュニケーションや信頼関係の維持は重要となります。

立ち退き料はどうやって決める?

立ち退き料の決め方には明確なルールはないため、賃貸人と賃借人が納得できる条件を見つけていくことになります。
目安となる立ち退き料の算出方法は、2つです。

立ち退きに必要な費用を算出する

賃貸人が負担する費用は、主に「引っ越しにかかる費用」と「今の家賃と引っ越し先の家賃の差額」です。
立ち退きをするには他の住宅に引っ越さなければいけないため、賃貸人の都合での立ち退きであれば、負担するのが一般的です。
今の家賃と引っ越し先の家賃の差額は、引っ越し後に今より家賃が高くなる場合に発生します。
負担が求められる期間は、2~3年がほとんどです。
引っ越しにかかる費用が20万円、今の家賃と引っ越し先の家賃の差額が2万円×2年とすると、以下のようになります。

20万円+48万円=68万円

こちらは一戸当たりの立ち退き料となるため、複数人に立ち退きをお願いする場合は、×人数で計算しましょう。

借地権価格を算出する

立ち退きによってアパートやマンションなどの借家がなくなり、財産的価値が失われてしまう賃借人のための補償として支払われる価格を、借地権価格と言います。
借地権価格の算出方法は以下のとおりです。

更地価格×借地権割合×借家権割合=借地権価格

算出した借地権価格は、建物全体のものであるため、アパートやマンションの場合はさらに戸数で割る必要があります。
もちろん算出した借地権価格どおりに支払う必要はなく、1つの目安として考えることになります。
立ち退き料は状況や条件によって変わりやすいため、お互いが納得できるように調整していきましょう。

立ち退き料を設定しなくても良い場合がある

正当な事由でも必要となる立ち退き料ですが、場合によっては設定しなくても問題ないことがあります。
具体的にどのようなケースで立ち退き料は不要なのか、ご紹介しましょう。

賃借人が契約違反をしていた場合

家賃滞納はもちろん、本来の用途で利用されていない場合、立ち退き料を支払う必要はありません。
家賃の支払いに応じなかったり、改善が見られなかったりする場合は、立ち退き料を支払わずに退去させることが可能です。

民法541条では期間を定めて債務履行を催告したにも関わらず履行がなかった場合、一方的に契約解除できるとしています。

定期借家契約だった場合

定期借家契約は、契約更新が行われない契約方法です。
その代わり、定められた期間が終わると契約も終了します。
つまり、定期借家契約で定められた期間が3年だった場合、3年経つと同時に立ち退きをお願いすれば立ち退き料が発生しないのです。

定期借家契約で立ち退き料を支払わなければならないケースは、以下のとおりです。

・定期借家契約で契約することを明確に説明していなかった時
・定期借家契約で契約したことを明記していなかった時
・定められた期間を満了する前に立ち退きをお願いする時

賃借人とのトラブルを避けるためにも、定期借家契約に対応する場合は明確な説明・契約書への明記を行うようにしましょう。

契約書に取り壊し予定と記載していた場合

建物を取り壊すタイミングで賃貸契約が終了することを契約書に記載・説明していた場合、立ち退き料を支払う必要はありません。
賃借人も取り壊しまでの契約であることを了承しているため、賃貸人都合の立ち退きとして扱われないのです。

しかし、下記のようなケースでは立ち退き料が必要になります。

・契約段階で建物を取り壊す理由・建物を取り壊す時期を明確に説明していなかった時
・建物を取り壊す理由が正当な理由でない時
・契約期間を満了する前に立ち退きをお願いする時

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立ち退き交渉が難航した場合に知っておきたいポイント

立ち退き

立ち退きのお願いをしているにも関わらず、なかなか交渉に応じてくれなかったり、反対されたりするケースもあるでしょう。
万が一難航してしまった場合には、以下でご紹介するポイントを押さえて交渉に臨んでみてください。

相手の立場になって交渉を進める

立ち退きは賃借人にとって不安やリスクが大きく、精神的な負担を感じることも少なくありません。
物件探しはもちろん、引っ越しにかかる費用や転居先の家賃など、多くの不安がついて回るでしょう。
特に賃貸人の都合で立ち退きをお願いする時は、相手の立場に立って寄り添いながら交渉を進めていく必要があります。

店舗やテナントの立ち退きであれば、常連客を失う可能性があると同時に、経済的なリスクも抱えていくことになります。
同じような環境の物件が見つかるかどうかという点も、賃借人が交渉に頷けない理由の1つです。
交渉前に賃借人の不安を調査しておくと、より納得のいく補償を提案できます。

早めの対策が肝心

立ち退きの交渉は、時間がかかるほど経済的損失が大きくなります。
順調に立ち退き交渉が進んで立ち退いてくれる入居者がいても、一部の入居者が拒否を続ければ賃貸収入がほとんどない中で物件の運営を行わなければいけません。
結果的に立ち退き料などに回せる費用もなくなり、さらに交渉が難航してしまうケースもあります。
早めに対策をしていくことでそのようなリスクを減らせるほか、より納得のいく条件で立ち退いてもらえます。

立ち退き交渉の際に必ず記録をとる

立ち退き交渉の話し合いは、文書や録音で記録をとっておくことが基本です。
言った・言っていないとトラブルに発展することも多いため、必ず記録を残しましょう。
どのような交渉を行ってきたのか、意見が食い違っているのはどの部分かなどを見直すことや、いざという時に証拠として提出できるようにしておくことで、スムーズな対応につながります。

立ち退き交渉の記録は詳細であればあるほど安心材料の1つとなるため、細かい部分まで記録するようにしてください。

譲歩できるポイントを用意しておく

立ち退き交渉は、賃貸人の希望どおりに進むことはほとんどないと考えておくと対応しやすいです。
思いどおりにならないことを前提にしていれば、譲歩できるポイントも浮かびやすくなります。
譲歩できるポイントは、立ち退き料についてだけではありません。

・引っ越すことで金銭的に大きな負担がかかる場合、立ち退き料を一部先払いにする
・引っ越し先を複数提案することで、リスクや不安の軽減をサポートする
・立ち退き時期はできるだけ賃借人の意向を尊重する

金銭面以外に精神的な負担もケアしていくことで、交渉がうまくいくこともあるでしょう。
なるべく視野を広くし、何に不安を抱えているのか、どうすれば解消していけるのかを考えることが大切です。

弁護士に相談する

弁護士は立ち退き交渉の代行を行ってくれるため、難航して進まないという時は弁護士に相談するのも1つの方法です。
弁護士に立ち退き交渉を依頼するメリット・デメリットをご紹介します。

メリット①:精神的・体力的な負担を減らせる

立ち退き交渉は、順調に進んだとしてもかなり労力が必要になるのが特徴です。
難航すると精神的にも体力的にも負担が大きくなり、体調を崩しかねません。

そういった負担を減らせるのは、弁護士に依頼するメリットの1つだと言えるでしょう。

メリット②:交渉がスピーディーに

弁護士は、法律のプロであることから、効率的に解決まで導いてくれます。
交渉が順調に進むことで、負担が軽減されるだけでなく、経済的損失も最小限に抑えられます。

メリット③:家賃回収にも効果的

家賃滞納が原因で立ち退きを求める時、立ち退きが叶っても家賃の回収は望めないケースが多いです。
弁護士は状況に合った対処を心得ているため、立ち退きに加えて家賃回収も可能になることがあります。

メリット④:裁判になっても安心

裁判になる前から弁護士に相談しておくことで、スムーズに訴訟を進めることが可能です。
複雑な手続きなどを代行してくれる弁護士もいるので、そのような部分も込みでどの弁護士に依頼するか検討しましょう。

デメリット①:費用がかかる

弁護士に交渉を代行してもらう時は、相談料に加えて着手金・成功報酬などの費用がかかります。
交渉代行にかかる費用は弁護士によって異なるため、事前にチェックしておくと良いでしょう。

デメリット②:賃借人との関係が悪くなってしまう

立ち退き後も賃借人と良好な関係を続けたい場合は注意が必要です。
弁護士が対応することでイメージダウンにつながったり、誠意が見られないと思われたりすることがあります。

今回は、立ち退きについてご紹介しました。
立ち退きのお願いは、賃貸人の都合・賃貸人に契約違反が見られた場合に行うことがほとんどです。
立ち退きのお願いをする時は、立ち退き通知書を活用することでスムーズかつ穏便に済ませられます。
また、立ち退きをお願いする時は、立ち退き料が必要になることがあります。
立ち退き料は、立ち退き交渉のキモにもなる重要な要素ですが、それ以外にも譲歩できる点がいくつもあるのです。
立ち退きをお願いする前に譲歩できるポイントをいくつか用意しておくと、よりスムーズな立ち退き交渉が可能になるため、ぜひ参考にしてみてください。

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