マンション経営に関する業務の中でも、多くのオーナーが頭を悩まることの一つが、十数年単位で実施する大規模修繕です。
大規模修繕のためには、工事内容や予算、施工会社の選定、住民への説明など、検討しなければならないことがたくさんあります。
そこで今回は、そもそも大規模修繕とは何か、大規模修繕の流れはどうなっているのか、費用や工事期間はどのくらいかかるのか、さらに大規模修繕に充当する修繕積立金が不足した場合の対処法まで解説していきます。
大規模修繕の時期が来てから慌てないためにも、ぜひ一読してみてください。
Contents
マンションの大規模修繕について

マンションの大規模修繕は、高額な費用がかかる上に、住民に工事にともなう不便に対して理解を得るなど、通常の修繕よりも多くの負担が発生します。
しかし、建物の安全や資産価値を守っていくためには避けて通れないものです。
まずは、そんな大規模修繕の定義と実施する周期について解説していきます。
大規模修繕の定義
国土交通省が公表しているマンションの大規模修繕に関するガイドラインによると、マンションの大規模修繕とは「マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値を維持するために行う修繕工事や必要に応じて建物及び設備の性能向上を図るために行う改修工事のうち、工事内容が大規模、工事費が高額、工事期間が長期間にわたるものなどをいう」と示されています。
築年数が経過するにつれて、建物の劣化は必ず生じてきます。
そのため、住民が快適に過ごせる住環境や建物の資産価値を維持していくには、定期的に大規模修繕を行う必要があります。
大規模修繕を行う周期はマンションによっても異なりますが、大体12~16年周期で行うことが一般的です。
修繕工事と改修工事の違い
先ほど紹介した国土交通省のガイドラインにも記載されている通り、大規模修繕には、修繕工事と改修工事の2種類があります。
どちらも劣化した建物に対して実施される工事ですが、両者では目的が大きく異なります。
修繕工事の目的は、経年劣化した建物や設備に対して、問題箇所の補修・交換などを行って建築当時の水準まで戻すことです。
一方の改修工事の目的は、住民のライフスタイルや時代の変化に合わせて、マンションの機能や設備を建築当時よりもグレードアップさせることです。
なお、国土交通省が公表するガイドラインの「2.マンションの改修について」という項目では、以下のような記述があります。
1.マンションの経年に伴う劣化や不具合に対しては、大規模修繕等の計画修繕を適切に実行していくことが必要
2・高経年マンションでは、質及び価値を長持ちさせていくために、修繕による性能の回復に加えて、現在の居住水準・生活水準に見合うようマンションの性能をグレードアップし、住み良いマンションにして行くことが重要
上記の2点以外にも、国土交通省のマンションの大規模修繕に関するガイドラインには、マンションの現状や課題を踏まえた工事について、データや法律なども交えた多角的な提案が掲載されています。
そのため、マンションの長期修繕計画を立てる上では、非常に参考になるでしょう。

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大規模修繕の流れについて

大規模修繕工事をスムーズに進めるためには、全体の流れを把握しておくことが大切です。
ここからは、大規模修繕の具体的な流れを、9つのステップに分けて解説していきます。
①修繕委員会を立ち上げる
多くのマンションでは、管理会社から大規模修繕の提案を受けた時点で、まず「修繕委員会」を立ち上げます。
マンションによっては理事会が主導するケースもありますが、通常の組合運営業務に大規模修繕の準備に関する業務が加わると非常に多忙となります。
そのため、理事会の一組織として修繕委員会を設置して、大規模修繕工事に関わる一連の業務を担当するのです。
具体的な業務としては、工事内容の検討や建物診断への立ち会い、説明会の開催、進捗管理などが挙げられます。
必ずしも修繕委員会を設置する必要はありませんが、設置しない場合は理事の任期を1年から2年に変更するなど、工事途中での引継ぎによるロスを減らすための対策を講じている管理組合もあります。
②工事の発注方式を決める
大規模修繕工事には専門的な知識が求められるため、外部の専門家を起用して工事計画の設計や監理などをサポートしてもらうことが一般的です。
代表的な工事の発注方式には、「管理会社主導方式」「責任施工方式」「設計監理方式」の3があります。
「管理会社主導方式」は、管理会社に大規模修繕の設計から工事までをすべて一任する方式です。
「責任施工方式」は、管理組合と施工会社が直接契約を結んで工事を発注する方式です。
「設計監理方式」は、発注者と施工会社の他に、コンサルタントが加わります。
コンサルタントが設計した工事仕様書に基づいて施工会社が工事を行い、工事中の監理も管理組合に代わってコンサルトが務めます。
発注方式ごとにメリット・デメリットがあり、また施工会社やコンサルタントによっても特色が違うので、しっかりと協議して慎重に決めましょう。
③建物診断を受ける
発注方式が決まったら、工事範囲や工法を検討するために建物診断を受けます。
専門の調査員が実際に建物を訪問して、どこにどのような不具合が発生しているのかを目視や打診、機械などで細かく調査します。
建物診断を受けることで現状をしっかりと把握できるため、工事を実施するタイミングや緊急性による優先付け、工事内容の決定などに役立ちます。
④予算・工事計画を検討する
建物診断を受けて建物の現状が把握できたら、工事の実施時期と工事内容を決めていきます。
建物診断の結果、劣化が著しく緊急性が高いと判断された箇所は優先的に修繕計画に取り入れる必要があります。
反対に、状態がそれほど深刻でない箇所は、次回の大規模修繕までの維持措置に留め、その分の費用を住民からのニーズが高い改良工事に回すといった予算の使い方も一つの案です。
スロープやオートロック、自動ドアの導入など、安全性や利便性が向上する改良工事を行えば、住民にも工事に対して高い満足度を感じてもらえるでしょう。
また、大規模修繕工事の費用は修繕積立金から支払われますが、積立金だけで賄えない場合には、一時金を徴収するか金融機関から融資を受けるといった方法もあります。
しかし、修繕積立金は将来予定されている工事のためにも必要な費用なので、長期的な見通しを持って予算の使い方を考えることが大切です。
もし、将来的に修繕積立金が足りなくなることが予想される時には、工事内容や工事時期の見直しも検討しましょう。
⑤施工会社を選定する
工事内容と予算が決定したら、次は施工会社の選定です。
施工会社を決める際は、複数社の見積もりを比較し検討します。
施工会社の選定方法は、インターネットや専門誌、マンションの掲示板などを使って公募を行うのが一般的です。
応募を受けた会社の中から書類選考で数社までに絞ったら、プレゼンテーションの場を設置し、各社の体制や工事の進め方、アフターサービスなどについてヒアリングします。
施工会社を決める際に、費用はもちろん重要な判断基準の一つになりますが、他にも施工実績や経験の豊富さ、財務状況の安定性など、総合的に見て決定することが大切です。
施工会社とは工事中だけでなく、施工後も定期点検などを通して長期にわたり付き合っていくことになるため、安心して建物を任せられる会社を選びましょう。
⑥総会決議を行う
大規模修繕の概要が決まったら総会を開き、組合員へ修繕の目的や工事内容、工事期間、施工会社、工事費用などについて説明します。
総会で組合員の承認が得られてはじめて、正式に工事を発注できるのです。
そのため、選考から決定に至るまでのプロセスには、公平性や透明性が求められます。
建物診断で判明した建物の現状、予算の使い方、施工会社の選定理由、組合員に向けて分かりやすく説明ができるように準備しておきましょう。
また、総会を開催するまでに広報誌を作成したり、必要に応じて臨時総会を開いたりして、組合内における意見の抽出やすり合わせを行うことも必要です。
こうした準備段階での丁寧なコミュニケーションが、スムーズな合意形成に役立ちます。
⑦工事説明会を開く
総会決議で組合員から大規模修繕実施の承認を得られたら、施工会社と契約を締結し、工事の準備を進めていきます。
着工のおよそ1ヶ月前に工事説明会を開いて、組合員や住民に工事内容や注意点などを説明します。
マンションに住んでもらいつつ大規模修繕工事を進めるには、住民の理解と協力が不可欠であるため、特に安全上留意してもらわなければならないことや、日常生活への影響に関しては、時間をかけて丁寧に説明することが求められます。
説明会で上がった意見や疑問、不安点は管理会社や施工会社などとも共有して、できるだけ住民の生活に支障が出ないよう対応策を練っていきましょう。
⑧着工
工事説明会と周辺への挨拶が済んだら、いよいよ着工に移ります。
大規模修繕工事では、事前にどれだけ綿密な施工計画を立てていても、実際に足場けて施工箇所を確認したことで初めて見つかる不具合も出てきます。
工事期間中は関係各位と定期的に打ち合わせを行って、予定外の修繕箇所の確認や進捗への影響、住民からの要望などを共有し、工事に遅れが出ないように意見交換やスケジュール調整をします。
それと同時に忘れてはならないのが、住民に向けた広報活動です。
足場の建設に伴う騒音、作業員や工事車両の激しい出入りなど、普段の環境との大きな違いにストレスを感じる人は少なくありません。
住民の生活に直接影響が出る事柄や安全上の留意点は、掲示板や各部屋に配布するチラシなどを利用し、必ず事前に周知徹底を図りましょう。
⑨工事完了・引き渡し
工事の終盤になると、足場を撤去する前に竣工検査を実施します。
管理組合や施工会社などの関係者が立ち会いの元、施工箇所に問題がないか確認を行い、不具合が見つかった場合は手直しを依頼します。
そして、完了後に改めて確認をして問題がなければ無事、工事完了となります。
竣工・引き渡しの際には工事内容を記録した「竣工図書」受け取ります。
竣工図書は建物を維持管理していく上で非常に重要な書類となるので、くれぐれも無くさないように大切に保管してください。

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マンションの大規模修繕を怠るとどうなる?

上記でご紹介したように、マンションの大規模修繕には事前準備から着工、竣工・引き渡しに至るまでに、いくつものステップを踏まなければなりません。
しかし、そもそもなぜそこまでして大規模修繕を行わなければならないのか疑問に思う方もいるでしょう。
そこで、マンションの大規模修繕を怠った場合、どうなってしまうのかを見ていきましょう。
安全性や快適性が損なわれる
大規模修繕の重要な目的の一つが、経年劣化によって低下した建物の機能や性能を回復することです。
例えば、新築時のマンションなら外壁にはきれいに塗装が施されています。
外壁の塗装には、外観の美しさを演出するだけでなく、内部のコンクリートを紫外線や風雨から守るという役割もあります。
しかし、いくら高機能の塗料を使用していても長年、強い日差しや風雨にさらされていれば少しずつ劣化していきます。
すると、ひび割れや剥がれなどが発生し、そこから雨水が侵入して徐々に構造部のコンクリートが傷みます。
やがてコンクリート内部の鉄筋にまで雨水が入り込むと、鉄筋が錆びて膨張し、周囲のコンクリートが割れてしまいます。
その結果、建物の強度が大きく低下し、住民の安全が脅かされるといった事態になりかねません。
建物を長持ちさせるには、劣化が深刻になる前に塗料の塗り直しや防水シートの張り替えなどを行って機能や性能を回復させることが大切です。
適切な修繕時期を見逃さないためにも長期修繕計画に基づき、およそ12~16年周期で大規模規模修繕工事が設定されているのです。
資産価値が低下する
大規模修繕の目的でもう一つ重要なのが、資産価値の維持・向上です。
マンションは数十年に渡って使用していくため、住民のライフスタイルや時代の変化によって求められるニーズも次第に変わっていきます。
それに対して何の対策も講じなければ、経年とともに資産価値はどんどん低下していってしまいます。
そこで、建物を定期的に修繕して良好な状態を保ち、さらに住民の要望に合わせて不便な部分を改良したり、新しい設備を取り入れたりすることで、さらなる付加価値が生まれるのです。
マンション全体を刷新するほどの大規模な工事を行うケースもありますが、一部の設備を改良するだけでも利便性が大きく向上します。
特に、住民から改良のニーズが高い設備の一つが、エントランスです。
例えば、バリアフリーを目的としたスロープや手すりの設置、オートロック機能付きの自動ドアの導入、宅配ボックスも兼ねた集合ポストの設置など、エントランスは多くの人がほぼ毎日利用する場所なので、住民のニーズをうまく取り入れることで工事への満足感を得られやすい場所です。
築年数が経過しても、大規模修繕の際に適切な修繕・改良が行えていれば、住民離れによって空室が発生するリスクも抑えられるでしょう。

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マンションの大規模修繕にかかる費用や工事期間はどのくらい?

ここまで大規模修繕の内容や流れ、必要性についてご紹介してきました。
安心して住めるマンションを長く運用していくためにも、大規模修繕は欠かせないものです。
しかし、実際にどれくらいの費用がかかってくるのか、工事期間はどれくらいかかるのか気になる部分も多いでしょう。
そこでここからは、マンションの大規模修繕にかかる費用や工事期間について解説していきます。
大規模修繕にかかる1戸あたりの費用相場
大規模修繕にかかる費用の相場は、1戸あたり75~125万円とされています。
国土交通省が実施した「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」では、1戸あたりの工事金額は100~125万円が最も割合が多く(27%)、次いで75~100万円(24.7%)、125~150万円(17.4%)となっています。
つまり、マンションの半数以上が1戸あたり75~125万円かかっていると言えるのです。
また、戸あたり工事金額は修繕工事を実施した回数によっても異なってきます。
1回目の平均値は151.6万円/戸、2回目の平均は112.4万円/戸、3回目以上だと106.1万円/戸となっていました。
このことから、大規模修繕工事は1回目の金額が高くなりやすいことがわかります。
もちろん、修繕工事の内容によっても異なるため、一概に必ず1回目が高くなるわけではありません。
大規模修繕にかかる1㎡あたりの費用相場
先ほどは1戸あたりの費用相場をご紹介しましたが、床面積(㎡)あたりどれくらいの費用がかかってくるのでしょうか?
床面積1㎡あたりの工事金額は、1.0~1.5万円/㎡の割合が最も高く(33.4%)、次いで0.5~1.0万円/㎡(19.9%)、1.5~2.0万円/㎡(15.4%)となっています。
修繕工事の回数で見た場合、1回目の平均値は1.3万円/㎡、2回目は1.5万円/㎡、3回目以上は1.9万円/㎡となっていました。
平均値だけを見ると3回目以上が高くなっていますが、実際には無回答の人が多く、中央値で見ると1.2万円/㎡で、1回目(1.1万円/㎡)・2回目(1.3万円/㎡)とほとんど変わりません。
大規模修繕にかかる費用が高額になってしまう理由
マンションの大規模修繕には多額の費用がかかることがわかりましたが、なぜこれほどまでに高額となってしまうのでしょうか?
その理由として、人件費の高騰や建材を入手するのが困難になっていることの2点が挙げられます。
・人件費の高騰
マンションの大規模修繕工事は、一部分のみを修繕するものではなく、全体的に修繕を施していきます。
つまり、それだけ修繕工事を行うスタッフが必要です。
しかし、日本は現在少子高齢化が進み労働人口が減少していく中で、建設業界も含めて人手不足が深刻化しています。
元々建設業界は3K(きつい・汚い・危険)のイメージが強いことから、若い世代から選ばれにくい職種です。
工事の担い手となる職人はどんどん高齢化の一途をたどっていることも問題になってきています。
それでもマンションは定期的に大規模修繕を行わなければ、安心できる暮らしを提供できません。
こうした理由から、人件費が高騰しており修繕費が高額になっているのです。
・建材を入手するのが困難になっている
人件費の高騰以外に、建材の入手が難しくなっていることも高額になっている要因と言えます。
例えば新型コロナウイルスの影響で中国の資材工場がストップしてしまい、建築業界は物資不足に悩まされた過去があります。
また、ロシアのウクライナ侵攻も建材の入手が困難になってしまった要因となっています。
現在も円安によって輸入建材が高騰しており、予算内に建材を入手することが難しくなっている状態です。
大規模修繕にはコンサルティング費用もかかる
マンションで大規模修繕工事を実施する場合、直接施工会社へ見積もりを依頼することも可能ですが、特に建設・修繕の知識がない管理組合だけで話を進めようとしても、見積もりの金額が適正かどうか判断するのは難しいです。
建築に関する専門知識を持つ人がいれば問題ないですが、そうでないケースが多いでしょう。
この場合、大規模修繕工事をサポートしてくれる専門家に相談することになります。
ただし、専門家に相談する場合は費用も発生するので注意が必要です。
コンサルタントの費用相場は、1戸あたり約2~3万円または総工事費用の約5~10%になると言われています。
例えば約50戸のマンションで大規模修繕工事を行う場合、コンサルタント費用は約100~150万円かかることになります。
マンションの規模別に見る修繕工事期間
大規模修繕工事の費用は、工事期間が長くなればその分高額になっていきます。
そのため、事前にどれくらいの工事期間になるのか把握しておきたい方もいるでしょう。
マンションの規模別に見ると、修繕工事期間は以下が目安となります。
小規模マンション(総戸数50戸未満):約3~4ヶ月
中規模マンション(総戸数50~100戸):約4~6ヶ月
大規模マンション(100戸以上、団地、超高層タワーマンション):約6ヶ月~1年以上
50戸未満の小規模マンションであれば3~4ヶ月程度で工事は完了します。
住民の数もそれほど多くないことから、準備期間に時間がかかりにくい点も1つのメリットです。
中規模マンションになると約4~6ヶ月はかかってきてしまいます。
修繕箇所も増えるため、費用と工事内容のバランスを取りながら準備を進めていきましょう。
大規模マンションになってくると、約6ヶ月~1年以上は必要です。
特に高層の建物や施工面積が大きい場合は工事期間も延びやすくなります。
各修繕工事にかかる期間
大規模修繕工事といっても様々な工事を実施していくものです。
ここでは中規模マンションを想定し、それぞれの工事でどれくらいの期間がかかるのか、目安をご紹介しましょう。
・足場や仮設設備の設置工事
修繕工事を開始するために必要な足場や仮設設備(作業員事務所や資材置き場などの工事期間中に使用する設備)を設置するのに、約15~20日はかかります。
足場は建物の周囲を囲うように設置し、メッシュシートなどでマンションを覆うことで、塗料の飛散や資材の落下を防ぐことが可能です。
工事が終了したら足場や仮設設備はすべて解体・撤去されます。
・下地補修、シーリング工事、鉄部塗装など
下地補修やシーリング工事は約2週間~1ヶ月はかかります。
下地補修は壁や天井などで見つかったひび割れなどを補修するための工事です。
シーリング工事は外壁・タイルの継ぎ目やサッシまわりなどに充填されているシーリング材を打ち直していきます。
鉄部塗装は、階段の手すりなど鉄部の錆びを落として耐久性をアップさせるために塗装し直す工事です。
・外壁塗装や防水工事
外壁塗装や防水工事には約1~3ヶ月はかかります。
外壁塗装を行う前に下地補修などを実施し、高圧洗浄で汚れを取り除いてから塗装工事に入ります。
また、屋上やバルコニーなどで雨による影響を防ぐために、防水工事で機能回復を目指します。

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マンションの大規模修繕にかかる費用は修繕積立金から出す

マンションの大規模修繕にかかる費用は誰が支払うかというと、そこに住んでいる入居者が支払うことになります。
ただし、いきなり管理組合から「修繕費を出してほしい」と言われても対応が難しいため、家賃の一部として「修繕積立金」を徴収しているケースがほとんどです。
ここでは修繕積立金について詳しく解説していきます。
修繕積立金の金額はどのように設定する?
修繕積立金は長期修繕計画ガイドラインに則り、分譲事業者が作成した長期修繕計画によって決まります。
長期修繕計画ガイドラインでは、修繕積立金の計算方法として「均等積立方式(積立方式)」を挙げており、修繕積立金の金額を一定にすることを求めています。
例えば20年の長期修繕計画を作成する場合、予想される工事費用の総額を見積もった上で、毎月の金額に均して積立金を決めるのです。
一方、マンションによっては均等積立方式ではなく、段階積立方式で積立金の額を決めているケースもあります。
段階積立方式は事前に期間を決め、修繕積立金の金額を段階的に増やしていく計算方法です。
入居して間もない頃は修繕積立金の負担が他のマンションに比べて軽くなるメリットがありますが、長く住み続けていると負担が大きくなっていきます。
なお、毎月の積立金額が一定になる均等積立方式を採用していたとしても、物価高の影響や想定外で必要になった工事などを理由に、増額の検討が必要になってくるケースもあります。
そのため、長期修繕計画は5年に1回を目安に見直すことが大切です。
修繕積立金の相場
国土交通省がまとめた修繕積立金に関するガイドラインによると、専有面積あたりの修繕積立金額の平均月額は、20階未満の場合は252~335円/㎡、20階以上の場合は338円/㎡となっていることがわかります。
仮にマンション1戸あたりの専有面積が100㎡だった場合は、20階未満で約25,200~33,500円、20階以上だと33,800円かかることになります。
あくまで目安ではありますが、修繕積立金の相場は約2~3万円になると考えておくと良いでしょう。

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修繕費用が足りない場合はどうする?

修繕積立金を設定したものの、いざ大規模修繕に取り掛かろうとすると、想定していなかった補修工事も必要となってしまうケースは多いです。
万が一修繕積立金だけでは予算が足りなかった場合、どうすれば良いのでしょうか?
住民に説明をして一時金を徴収する
修繕積立金だけでは不足してしまった場合、住民から一時金をまとめて徴収する方法があります。
一時金を徴収するメリットは、手数料や金利をかけずに足りない金額を補えることと、比較的すぐに集められることです。
ただし、マンションには色んな家庭が存在しており、すぐに一時金を出してもらえるところもあれば、一時金は支払えないといって拒否する家庭もあるでしょう。
そもそも、入居者の中には管理費や修繕積立金を滞納する住民もいるため、全戸から一時金を集めるのは困難と言えます。
また、一時金をいきなり徴収するのではなく、まずは住民から合意形成を得ることも必要です。
どうしても一時金の徴収が難しい場合には、分割で徴収することも視野に入れると良いでしょう。
不足した分を借り入れる
修繕工事の見積もりを取った結果、不足した金額分は金融機関から借り入れて賄う方法もあります。
借り入れに関してもまずは管理組合の総会で決議を取っていることが必須です。
例えばマンションのリフォームローンを組む場合、借入限度額の設定は工事費の80%以内、もしくは150万円×戸数のいずれか少ない方とされています。
また、住宅金融支援機構では「マンション共用部リフォーム融資」を提供しています。
対象の工事費全額以内で借り入れができるだけでなく、工事内容によって返済期間を長く設定することも可能です。
民間の金融機関から借り入れを検討する前に、まずは住宅金融支援機構に相談してみると良いでしょう。
修繕積立金の値上げを行う
毎月徴収している修繕積立金を増額して、不足分を補填する方法です。
こちらも実施するためには管理組合の総会で決議を取らなくてはなりません。
しかし、一時金の徴収と同様に反対意見が出てしまう可能性は高いです。
また、毎月の修繕積立金を値上げする場合は不足分が補填できるまで時間がかかってしまうため、大規模修繕工事を実施するまである程度期間に余裕のあるマンションに限られてきます。
工事内容を変更する
大規模修繕工事は様々な工事をまとめて行うのが一般的ですが、積立金が不足するようであれば分割して行うことも視野に入れる必要があります。
例えば今回は外壁塗装工事のみ、1年後に屋上防水のみを行うなどです。
この場合、一時的な出費を抑えることは可能となりますが、結果的に長期修繕計画を立て直し、積立金も見直す必要が出てきます。
大規模修繕を行う時期を延期させる
上記の方法を検討したものの、いずれの方法も難しく修繕費が確保できなかった場合は工事を延期するという選択肢もあります。
ただし、行うはずの修繕工事を見送ることで今後症状が悪化し、安心して住めるマンションではなくなる可能性も考えられます。
マンションを含め、建物は日々劣化が進んでいくものです。
損傷がひどくなるとその分高額な修繕費が必要となってくるため、早いうちに修繕工事が行えるようにしておきましょう。
今回は、マンションの大規模修繕工事についてご紹介してきました。
大規模修繕工事は、マンションの資産価値と安心して住める環境を守るためにも欠かせない工事です。
綿密に長期修繕計画を立てたとしても、修繕積立金を確保できなければ工事は行えません。
修繕費が不足した結果、工事を見送ってしまうと劣化が進んでしまい、余計に修繕費がかかってしまうリスクもあります。
そのため、管理組合と修繕工事を行わないリスクなども話し合い、万が一修繕費が不足する場合には一時金の徴収や借り入れなどを検討して、定期的に修繕工事が行えるようにしましょう。