賃貸経営ではさまざまな指標が重視されますが、そのうちの1つに「平均入居期間」があります。家賃収入は家賃が高ければそれだけ収入にもつながりますが、その状態が安定して続くわけではない点が難しいところです。安定した家賃収入がある状態は、常に入居者がいれば実現します。しかし見落とされがちなのは、その入居者が同じ人であるかという点です。同じ人がどれだけの期間、入居しているかの指標が「平均入居期間」であり、安定した賃貸経営には欠かせない指標なのです。では、なぜ同じ入居者である方が安定した家賃収入につながるのでしょうか。
そこで今回は賃貸経営において欠かせない、平均入居期間について詳しくお伝えします。合わせて平均入居期間を延ばす方法もご紹介するため、賃貸経営で安定した利益を得たい方は必見です。
Contents
平均入居期間とは
賃貸経営において、よく着目されるのは入居率です。入居率が高い物件であればそれだけ家賃収入が得られるということであり、加えて安定した家賃収入にも期待できます。しかしオーナーは、家賃収入が得られる側面だけに着目してはいけません。なぜならオーナーは退去時の修繕費や、新規入居者を募るために仲介手数料など、家賃収入を得るために支出も発生するからです。この支出にも着目した上で、安定した家賃収入が得られるかの指標が平均入居入居期間なのです。まずは平均入居期間について、基本情報を詳しくお伝えします。
平均入居期間の定義
平均入居期間とは、同じ入居者がどれだけ同じ部屋に入居しているかの指標です。賃貸物件には更新が設けられており、入居者は更新にあたり入居し続けるか、引っ越すかの選択肢が得られます。しかし中には更新有無にかかわらず、やむを得ない転居も発生します。
転居せずに更新して入居し続けている場合は、平均入居期間が長くなります。つまり平均入居期間が長い物件は、同じ入居者が長く住み続けているということです。さらに1人あたりの平均入居期間が長ければ、必然的に物件の入居率も高くなります。
一方入居率のみ高く、平均入居期間が短い場合は、入居者の入れ替わりが激しいということです。この場合物件自体の需要が高くても、定着率が低い物件といえます。つまり本当の意味で安定した家賃収入を得るためには、入居率の高さだけでなく、平均入居期間にも着目すべきなのです。
平均入居期間の統計
公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会 日管協総合研究所による「賃貸住宅市場景況感調査」の『日管協短観』では、平均入居期間についてのデータがあります。2020年上半期の調査では、全国の平均入居期間は以下の通りです。
入居者属性によっても、平均入居期間には特徴があります。たとえば学生や一般単身は、卒業や転勤に伴う転居が発生するため、2〜4年が最も多い割合です。反対に一般ファミリーや高齢者の場合は、4〜6年や6年以上と平均入居期間も高くなる傾向にあります。ファミリー層は4〜6年の割合が大きいものの、一般単身者と比較しても最大2年の違いしかありません。そして高齢者は仕事や生活での生活変化が少ないことから、平均入居期間も6年以上が最も多い割合となっています。
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平均入居期間を伸ばすことはなぜ重要か
一般的に、賃貸経営において着目されることの多い指標は入居率です。「入居率が高い=入居者が常にいる」ということであるため、安定した賃貸収入に期待できるといえます。しかし前述したように、家賃収入を得るには退去時の修繕費や、不動産への仲介手数料などの支出が発生します。この修繕費や仲介手数料が発生するのは、退去が発生し、新規入居者を募る場合です。つまり入居率が高くても、回転率が早い場合は、修繕費と仲介手数料が発生する回数も多くなります。
修繕費は入居者の居住年数や原状回復の程度によって、そして仲介手数料は時期によってそれぞれ変動します。修繕費は一般的に家賃1ヶ月分に相当すると言われており、仲介手数料は礼金と相殺すると考えるとこちらもおよそ家賃1ヶ月分に相当します。たとえば入居者が更新せずに2年で転居してしまうとすると、月10万円の家賃で得られる家賃収入は以下のようになります。
家賃:月10万円/2年で転居の場合
年間家賃収入=10万円×24ヶ月−10万円(修繕費)−10万円(仲介手数料)=220万円
契約更新せずに2年目で転居が発生する場合、実質得られる家賃収入は22ヶ月分です。このように実質的な利益をみると、入居月マックス分の利益は得られないことがわかります。つまり短いスパンで転居が発生するほど、修繕費や仲介手数料の負担数が増えていき、実質的に得られる利益も少なくなってしまいます。
ということは契約更新し続けてもらい、長く入居してもらえれるほど、修繕費や仲介手数料が発生するローテーションも長くなります。そうなるとそれだけ支出が減り、安定して収入のみ得られる状態になります。
これまでは家賃収入だけでなく、敷金や礼金での収入を増やすために、回転率を高める賃貸経営の考え方もありました。しかし現代では敷金・礼金がある、またはそれらの額が高いとなると新規入居者が獲得しにくく、かえって損失が大きくなります。そのため敷金礼金0円物件なども多く、オーナーにとって敷金礼金は、収益源として期待できるポイントではなくなってしまったのです。さらに少子高齢化社会により、入居にアクティブな学生や社会人の人口が減少しており、そもそも新規入居者の母数が少なくなっています。そのため、今日では長く入居してもらうことで、家賃収入を得る考え方に重きを置く必要が出てきました。
もちろん家賃収入に影響を与えるのは平均入居期間だけでなく、空室率などさまざまな要素があります。しかし一度獲得した入居者を逃さずに平均入居期間を延ばすことが、最も効率的に安定した家賃収入を得る方法です。しかし学生や単身者に多いように、やむを得ず転居しなければならない入居者は避けられません。そのためそれ以外の入居者にいかに長く入居してもらえるかを考え、工夫しながら賃貸経営をしていく必要があります。
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平均入居期間を延ばす4つの方法
やむを得ない事情でない限り、手間とお金がかかる転居は入居者にとっても頻繁にしたいものではありません。入居者からしても特に事情がなければ契約更新する方が楽であり、オーナーからしても支出が発生しないため、契約更新はお互いにとってwin-winなものなのです。近年はそもそも新規入居者の獲得が難しくなったことにより、新規物件は入居者獲得のため、多くの好条件を揃えています。特に事情がなくとも転居してしまう大きな原因は、現在の物件に満足していないことが挙げられます。つまり平均入居期間を延ばすには、住み続けたいと思ってもらえる物件であることが前提であり、プラスして住み続けることでメリットを感じてもらうことが必要です。ここではそのためにできる、4つの方法をご紹介します。
①定期清掃の徹底
住む場所の清潔感は、重要なポイントです。オーナーが着目すべきは、入居者全員が利用する場所である共用部の清潔感です。共用部は管理人であるオーナーの管轄となるため、清掃に関してもオーナーが責任を負います。共用部にゴミが散乱していたり、清掃されていない様子が見てわかるようですと、入居者は気持ち良く住むことができません。共用部をはじめ見た目が綺麗な物件と、ゴミが散乱していて乱雑としている物件の2択であれば、誰もが前者に住みたいと思うはずです。入居者が常に気持ち良く住めるよう、定期清掃の徹底は欠かせません。定期清掃により物件の清潔感をキープしている場合、居住年数は約20%アップするとのデータもあるほどに、定期清掃は重要なものなのです。
②入居者との丁寧なコミュニケーション
やむを得ない事情を除き、退去の原因となるのは物件に対する何らかの不満です。この不満を蓄積させず、常に改善していく体制にするには入居者との丁寧なコミュニケーションが重要です。コミュニケーションといっても、多くの場合オーナーと入居者が直接対面する機会はほぼないでしょう。しかし中にはオーナーも同じ物件に住んでおり、身近にコミュニケーションが取れるケースも見られます。どちらの場合でも、常に入居者の要望や不満を聞き入れる体制は整えているべきです。不満の声が聞き入れてもらえない、そもそも伝える場所がないなどでは、入居者の不満は一方的に溜まっていくばかりです。オーナーは物件を貸しているだけでなく、住環境というサービスを提供している立場です。となれば、入居者が不満なく快適に住める環境にするか否かは、オーナー次第となります。
アンケートで満足度や不満、希望を調査するなど、オーナー側から適度に入居者とコミュニケーションを図る工夫が大切です。意見を聞き入れ、不満解消に努める基本的なサービス精神こそ、賃貸経営の原点といえます。
③設備故障への対応
生活にあたり、エアコンや給湯器などの設備は欠かせません。これらの設備は長く使い続ければ劣化も進み、故障などのトラブルも発生します。こうした設備は生活に関わるものであるため、迅速な対応が求められるもの。しかし設備故障の対応に関しては、たらい回しにされたり、対応が遅いなどのケースもよく聞かれます。いち早く対処すべきトラブルに対して、なかなか対応してもらえないと不信感が募り、今後住み続けることに対して不安を覚えてしまいます。設備故障のトラブルなどがあったときこそ、管理側の対応力が問われるものです。そのためオーナーは、そうしたトラブルに常に迅速に対応できる体制を整えておく必要があります。
④更新時の特典プレゼント
上記3つの方法は入居期間を延ばす方法であると同時に、オーナーが入居者に提供すべきあたりまえのサービスともいえます。対して4つ目の更新時の特典プレゼントは、入居者への利益還元であり、必ずしも提供すべきサービスではありません。特典分の費用はオーナー持ちになりますが、それで契約更新をしてもらえるのであれば損にはなりません。たとえば2年更新の物件であれば、2年ごとに更新することで特典がもらえる仕組みです。特典プレゼントは安すぎてもメリットが感じにくく、高価すぎてもオーナーにとって大きな負担となってしまいます。そのため目安を家賃1ヶ月分相当として、以下のような内容がおすすめです。
・家電:ドライヤー、ケトルなど
・家具:テーブル、ソファなど
・設備:温水洗浄便座、化粧台など
・チケット:旅券、宿泊券など
・商品券:3〜5万円相当
・1ヶ月フリーレント
上記は一例であるため、特典は家賃や入居年数に応じて調整しましょう。特典は、入居年数に合わせてグレードアップしていくことで、うまく入居者の心理に働きかけられます。長く住み続ければ、それだけお得な利益還元があるとわかることで、それまでは住み続けようという心理効果が働きます。
退去が発生すると、空室損失は平均5ヶ月分発生すると言われています。それだけでなく家賃も下落し、新規入居者を募るにもお金がかかります。このような空室リスクを考えれば、家賃1ヶ月相当の特典はとても高い費用対効果を発揮すると言えます。
またメリットだけでなく、オーナーに大切にしてもらえていると感じることもでき、住環境以外の面での満足度を上げることも可能です。あたりまえのサービスだけでなく、入居者にメリットを感じてもらえる工夫をすることで、平均入居期間の長期化に期待できます。
まとめ
今回は賃貸経営における重要な指標の1つである「平均入居期間」について、そして平均入居期間を延ばす方法についてご紹介しました。
新規入居者の確保が難しい今日では、既存入居者にいかに長く住み続けてもらうかが重要となっています。賃貸運営は投資の側面もありながら、一種のサービス業です。そのため良いサービスを提供することが利益へとつながる、単純な収益構造です。やむを得ない転居が発生してしまうのは仕方のないことですが、それ以外の入居者にできるだけ長く住み続けてもらうための工夫が必要です。そのためにも今回ご紹介した4つの方法を参考に、入居者ファーストの賃貸経営を行いましょう。
最近では迅速かつ質の良いサービスが提供できるように、管理会社に任せるオーナーも増えています。どんなにオーナー個人が頑張っても、手が回らないこともあるでしょう。それゆえに入居者の不満が溜まってしまっては本末転倒であるため、良質な賃貸運営をするには管理会社に任せるのも1つの方法です。優秀な管理会社に任せることで、サービスの質向上だけでなく、更新契約の締結率向上にも期待できます。