マンションは、住んでいる人が安心して生活できるようにするため、法定点検が義務付けられています。
法定点検だけではなく、任意点検と呼ばれるものもあります。
法定点検と任意点検にはどのような違いがあるのかいまいちわからない人もいるでしょう。
そこで今回は、マンションに必要な法定点検とはどのようなものか、法定点検に必要な資格は何か、任意点検との違いは何か、といった疑問に答えていきます。
マンション経営をするなら安心できる住まいを提供したいと考えるものです。
そのためには、法定点検に関する知識も必要不可欠です。
点検の頻度や法定点検を怠った場合のペナルティ、法定点検を業者に依頼する時に知っておきたいポイントについても解説するので、マンションの大家さんはぜひ目を通してみてください。
Contents
マンションに必要な法定点検とは?

マンションの大家さんは、法定点検の必要性を把握しておくことが大切です。
まずは、マンションに必要な法定点検とはどのようなものか、解説していきます。
法定点検について
法定点検は、マンションの建物や設備に対して法律で義務付けられています。
点検する部分によって、関連する法律が異なるので、それも把握しておく必要があります。
関連する法律は、建築基準法や消防法、水道法です。
それぞれの点検部分は以下のようになっています。
【建築基準法】
・マンションの敷地や建築と構造の調査
・換気、非常照明、給排水などの設備検査
・昇降機(エレベーター)定期検査 など
【消防法】
・消防設備の点検
【水道法】
・水質検査
・水槽の清掃 など
電気設備に関しては、基本的に電力会社が維持管理の責任を負います。
しかし、高圧受電設備が設置されているマンションの場合は、管理組合の責任で点検を実施することが電気事業法で定められています。
法定点検を行えるのは有資格者のみ
法定点検は、行う周期が定められています。
また、エレベーターや消防設備、給水設備などの法定点検を行えるのは有資格者のみです。
有資格者による点検が義務化されているものに関しては、専門業者に依頼するケースが大半を占めます。
検査結果に関しては、地方自治体や管轄の消防署などの機関に対し、所定の方法で報告しなければなりません。
法定点検の種類
法定点検は、7つに分けられます。
続いては、それぞれの内容や周期についてみていきましょう。
・特殊建築物定期調査
特殊建築物定期調査の関連法は建築基準法です。
周期は3年に1回となっています。
マンションの敷地に地盤沈下や排水不良がないか、外壁や基礎など建物の構造強度に問題はないか、といった点を調べるために行われます。
・建築設備定期検査
建築設備定期検査の関連法は建築基準法です。
周期は1年に1回となっています。
換気設備や排煙設備、非常用照明装置といった設備に関する検査です。
地域によっては、給排水設備が検査対象になる場合もあります。
・エレベーター(昇降機)定期検査
エレベーター(昇降機)定期検査の関連法は建築基準法です。
周期は1年に1回以上となっています。
エレベーターの機能全般を点検するために実施されます。
マンション内にエスカレーターが設置されている場合は、エスカレーターも法定点検の対象になることを覚えておいてください。
・消防用設備点検
消防用設備点検の関連法は消防法です。
周期は、外観のチェックなど簡単な点検は6ヶ月に1回、総合的な点検は1年に1回以上となっています。
消火器や消火栓、火災報知機、ガス漏れ警報器、避難器具、避難通路などの設備を点検することが目的です。
防用設備の配置や状態を外観や簡単な操作でチェックする機能点検、消防用設備を実際に動かして全体の点検を行う総合点検の2種類に分けられます。
・専用水道定期水質検査
専用水道定期水質検査の関連法は水道法です。
周期は、受水専用水道の水質や残留塩素の検査は毎日、水質検査は月に1回以上、受水槽の清掃を年1回以上となっています。
この検査は、受水槽が100㎥以上、1日の最大給水量が20㎥以上で居住人口が101人以上、口径25㎜以上の導管の全長が1,500mを超える、のいずれかに該当する場合に実施しなければなりません。
・簡易専用水道管理状況検査
簡易専用水道管理状況検査の関連法は水道法です。
周期は、1年ごとに1回となっています。
受水槽の有効容量の合計が10㎥を超える場合は、水質検査と受水槽の清掃をしなければなりません。
・自家用電気工作物定期点検
自家用電気工作物定期点検の関連法は電気事業法です。
600Vを超える高圧受電装置の月次点検と年次点検が含まれます。
前述したように、マンションの電気設備は電力会社の責任で維持管理を行うのが原則です。
しかし、屋外型の高圧受電設備が設置されている場合は例外となります。
管理組合の責任で点検を実施しなければなりません。

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法定点検に必要な資格

法定点検を実施できるのは有資格者のみとなっています。
続いては、法定点検を行うために必要な資格についてみていきましょう。
一級建築士・二級建築士
一級建築士や二級建築士は、特定建築物定期調査や建築設備定期検査、昇降機定期検査を行うために必要な資格です。
鉄筋コンクリートなど建物を設計できる資格になります。
一級建築士は設計できる建物の構造や規模に制限がありませんが、二級建築士は戸建て住宅の設計を想定した資格という違いがあります。
免許の交付先も、一級建築士は国道交通大臣、二級建築士は都道府県知事といった点もこの2つの大きな違いです。
特定建築物調査員
特定建築物調査員は、もともと特殊建築物等調査資格者と呼ばれていた資格です。
2016年6月1日に施行された建築基準法改正によって、特殊建築物等調査資格者から移行されました。
特定建築物定期調査を行うために必要になります。
この資格を取得するには、登録特定建築物調査員講習を受講した後、資格者証の交付を受けなければなりません。
講習が終わった後に与えられる講習受講修了証書を添付して国道交通大臣に申請すると、特定建築物資格者証を交付してもらえます。
受講するためには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
① 建築学・土木工学・機械工学・電気工学に相当する過程を卒業し、次の期間の建築に関する実務経験を持つ人
・大学卒業後2年
・3年制短期大学卒業後3年
・2年制短期大学もしくは高等専門学校卒業後4年
・高等学校もしくは中等教育学校卒業後7年
② 建築に関して11年以上の実務経験を持つ人
③ 建築行政に関して2年以上の実務経験を持つ人
④ 消防吏員として5年以上の実務経験を持つ人
⑤ 防火対象物点検資格者として5年以上の実務経験を持つ人
⑥ 甲種消防設備士として5年以上の実務経験を持つ人
⑦ 一級建築士や二級建築士、建築基準適合判定資格者の有資格者など、これらと同等以上の知識・実務経験持つ人
建築設備検査員
建築設備検査員は、建築設備定期検査を行うために必要な資格です。
建築基準法第12条第3項の規定に基づいて特定建築物に設けられた建築設備(換気設備、排煙設備、非常用の照明装置、給水設備及び排水設備)のうち、特定行政庁が指定したものに関して定期的に検査資格者(建築設備検査員、一級建築士又は二級建築士)による検査とその結果を特定行政庁に報告することが義務化されているのです。
国家資格の1つです。
講習はWEBでも受けられるようになっています。
そのため、会場まで足を運ぶのが難しくても受講できます。
ただし、建築設備検査員の資格を取得するためには細かい条件が定められているので、あらかじめ確認しておきましょう。
受講資格は、公式サイトの【参考】建築設備検査員の受講資格から確認できます。
昇降機等検査員
昇降機等検査員は、国が所有または管理する建物以外のエレベーターやエスカレーター、小荷物専用昇降機、遊戯施設で検査を実施できる資格です。
昇降機等検査員が検査した後、その結果を特定行政庁に報告することが義務化されています。
国家資格の1つです。
建築設備検査員と同じく、講習はWEBでも受けられるようになっています。
受講資格は、公式サイトの【参考】昇降機等検査員の受講資格から確認できます。
消防設備点検資格者
消防設備点検資格者は、消防用設備等点検を行うために必要な資格です。
第1種(メインは機械系統の設備)、第2種(メインは電気系統の設備)、特種(特殊消防用設備など)の消防設備点検資格者講習が全国で実施され、終了考査に合格すると第1種・第2種・特種の消防設備点検資格者免状が交付されます。
新しい知識を得るために、この資格を持つ人は5年ごとに再講習を受けなければなりません。
受験資格は、第1種・第2種と特種で異なるので、公式サイトで確認してみてください。
消防設備士
消防設備士は、消防用設備等点検を行うために必要な資格です。
甲種と乙種の2種類があります。
甲種は工事整備対象設備などの工事・整備・点検が可能、乙種は整備と点検ができるのが大きな違いです。
また、甲種特類(特殊消防用設備など)、甲種又は乙種の第1類(屋内消火栓設備・スプリンクラー設備・水噴霧消火設備・屋外消火栓設備・パッケージ型消火設備・パッケージ型自動消火設備・共同住宅用スプリンクラー設備)、第2類(泡消火設備・パッケージ型消火設備・パッケージ型自動消火設備・特定駐車場用泡消火設備)などに分かれていて、類ごとの免状が必要です。
甲種には受験資格がありますが、乙種はどなたでも受験可能となっています。
防火対象物点検資格者
防火対象物点検資格者は、防火対象物点検を行うために必要な資格です。
消防法令や火災予防などに関する専門知識を有します。
この資格を持っていれば、火管理業務の遂行上管理的もしくは監督的な地位にある場合において防火管理者になることも可能です。
講習を受け、考査に合格すれば資格を取得できます。
講習を受けるための受講資格もあるので、確認しておきましょう。
貯水槽清掃作業監督者
貯水槽清掃作業監督者は、貯水槽の清掃を行う際に必要となる資格です。
建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則第28条第4号イに規定されている、建築物飲料水貯水槽清掃業が実施する貯水槽の清掃作業の監督を行えるようになります。
講習会を良好な成績で修了すると、修了証書が交付されます。
修了証書の有効期限は6年です。
受講資格は以下の通りです。
① 学校教育法(昭和22年法律第26号)に基づく高等学校または中等教育学校、旧中等学校令(昭和18年勅令36号)に基づく中等学校を卒業後、2年以上建築物の貯水槽の清掃に従事した経験を持つ人
② 5年以上建築物の貯水槽の清掃に関する実務経験を持つ人
③①と同等以上の学歴や実務経験を持つ人
貯水槽清掃作業従事者研修受講者
貯水槽清掃作業従事者研修受講者は、貯水槽の清掃を行う際に必要となる資格です。
建築物における衛生的環境の確保に関する法律で建築物貯水槽清掃業(5号登録)の登録要件として定められている「貯水槽清掃作業従事者研修」を受講することで取得できます。
厚生労働大臣登録研修実施団体・一般社団法人新潟県ビルメンテナンス協会が開催している講習になります。
受講資格は、建築物における衛生的環境の確保に関する法律第12条の2第1項第5号の登録を受けている事業所または受けようとする事業所の従事者です。
電気主任技術者
電気主任技術者は、自家用電気工作物定期点検を行う際に必要となる資格です。
この資格を取得すると、発電所や変電所、工場、ビルなどにおける受電設備や配線といった電気設備の保安監督に従事できます。
社会的評価の高い資格です。
電気設備を設けている場合は、工事や保守、運用のために電気主任技術者を選任しなければなりません。
電気主任技術者には、第一種、第二種、第三種という3つの種類があります。
第一種は全ての事業用電気工作物、第二種は電圧が17万V未満の事業用電気工作物、第三種は電圧が5万V未満の事業用電気工作物(出力5,000kW以上の発電所を除く)を取り扱うことができます。
第一種と第二種には一次試験と二次試験があり、第三種は一次試験のみです。
一次試験は、理論・電力・機械・法規の4科目がありますが、科目別合格制となっているので有効期限の3年間をフルに使えば合格できる可能性が高いです。
二次試験は、電力・管理と機械・制御2科目で、科目別合格制度はありません。
しかし、一次試験に合格した年度に二次試験が不合格だった場合でも、翌年度は一次試験が免除されます。
受講資格もあるので、取得したいと考えているのであれば確認しておきましょう。

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任意点検との違いとは?

マンションの点検には、法定点検とは別に任意点検があります。
法定点検との違いを理解するためにも、任意点検の概要と必要性をご紹介します。
任意点検とは
任意点検は、管理組合が自主的に行う点検であり、実施に関しては法律で義務付けられていません。
また、法定点検は点検内容に応じて実施頻度が決まっていますが、任意点検は頻度も任意となっている点も大きな違いです。
任意点検で実施される主な点検内容は以下のとおりです。
・自動ドアの点検
・宅配ボックスの点検
・管理人による目視での点検
・機械式駐車場の点検
いずれもマンションの管理人が日常的に行っている点検ばかりです。
法定点検と違って法律で義務付けられているわけではないので、実施しなくても法律違反にはなりません。
しかし、建築物の管理者・所有者は、建築基準法第8条に基づいて敷地や設備を安全な状態に保つようにすることが言及されています。
自動ドアや機械式駐車場は建築基準法第8条の対象となる設備であるため、法的な義務はなくとも点検が必須となる設備です。
任意点検もマンション管理には欠かせない
定期的に任意点検を行えば、共有部や設備の異常にいち早く気付けるため、早々に解消することができます。
マンションの安全性を保つことは入居者の満足度向上につながるので、任意点検も欠かさず行いましょう。
任意点検は目視によるチェックが基本なので、管理人や組合員だけでも実施は可能です。
しかし、外壁や水道の給排水管など目視が難しい部分は、専門業者に点検してもらうのが無難です。
任意点検は管理会社を通じて下請けの専門業者に業務を委託できるほか、管理組合が直接専門業者に発注して点検を行う方法もあります。
コスト面では専門業者と直接契約した方がお得ですが、理事会と業者間でやり取りが必要となる点がデメリットです。
多少の労力がかかっても点検にかかるコストを抑えたい場合は、組合で相談しながら直接契約を検討してみましょう。

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各点検の頻度について

法定点検は1年に1回は行うことになりますが、点検の種類によって実施頻度が異なる点に注意が必要です。
ここで各点検の実施頻度をまとめたので、確認してみましょう。
点検の種類 | 実施頻度 |
特殊建築物定期調査 | 3年に1回 |
建築設備定期検査 | 1年に1回 |
エレベーター(昇降機)定期検査 | 1年に1回 |
消防用設備点検 | 機械点検:6ヶ月に1回 総合点検:1年に1回 |
専用水道定期水質検査 | 残留塩素点検:毎日 水質検査:1ヶ月に1回 受水槽清掃:1年に1回 |
簡易専用水道管理状況検査 | 1年以内ごとに1回 |
自家用電気工作物定期点検 | 月次点検:1ヶ月に1回 年次点検:1年に1回 |
このように、点検内容によって実施頻度が大きく異なります。
特に専用水道定期水質検査や自家用電気工作物定期点検は、生活に欠かせない水道や電気に関する点検であるため、短いスパンで実施されています。
専用水道定期水質検査の一種である残留塩素点検においては、飲み水の安全を確保するために毎日測定し、水の色や濁り、臭い、味などに問題がないか確認しなければなりません。

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法定点検を怠った場合は?

法定点検は法律で実施が定められているため、実施や報告を怠れば罰則を受けることになります。
また、消防設備点検では、罰則以外にも注意しなければならないリスクがあります。
ここで、点検を怠った場合のリスクを見ていきましょう。
法定点検を実施・報告しなかった場合の罰則
マンションの所有者や管理人が点検を実施しなかった場合だけではなく、検査結果の虚偽報告を行った際も罰金が科せられる可能性があります。
具体的な罰則は以下のとおりです。
点検の種類 | 罰則 |
特殊建築物定期調査 | 100万円以下の罰金 |
建築設備定期検査 | 100万円以下の罰金 |
エレベーター(昇降機)定期検査 | 100万円以下の罰金 |
消防用設備点検 | 30万円以下の罰金または拘留 |
簡易専用水道管理状況検査 | 保健所・市区町村の担当部署からの指導 100万円以下の罰金 |
自家用電気工作物定期点検 | 300万円以下の罰金 |
このように法定点検の実施や定期的な報告を怠ると、高額な罰金が科せられることがあります。
点検を怠ることは入居者の不平不満につながり、退去率や空室率の上昇にも関わってきます。
罰金だけではなく、そのリスクも理解した上で法定点検は上記でご紹介した頻度で確実に実施するようにしましょう。
消防設備点検の総合点検を怠った場合のリスク
半年に1回実施される、消防設備点検の機械点検は共有部にある消火器や火災報知器が点検対象です。
それに対して1年に1回実施される総合点検は、各部屋に設置されている消防設備が点検対象となります。
部屋に作業員を入れることになるので、基本的に各入居者の立会いのもと点検を行わなければなりません。
そのため、総合点検をする際は事前に入居者に通知し、立ち合いの了承を得る必要があります。
不在時の入室はトラブルに発展するリスクがあるため、入居者が不在の時は後日再点検が行われるのが一般的です。
しかし、中には業者を室内に入れることを拒むケースがある点に注意しましょう。
国土交通省のモデル管理規約におけるマンション基準管理規約で、管理者は管理をする上で必要な範囲内であれば、入居者が管理する専有部・専用使用部の立ち入りを請求できるとあります。
さらに、請求された入居者は正当な理由がない限り拒否してはならないと規定されています。
このような規約を設けていながら点検のための入室を拒んだ場合、規約違反となる可能性があるでしょう。
また、入居者の過失で他の住戸にも被害が及んだ場合、重度の過失でない限り入居者に不法行為責任は発生しません。
ただし、点検を拒んだことで消防設備の不備が放置され、火災時に作動せず被害が拡大した際には、重過失と見なされて入居者に損害賠償が請求される可能性があります。
入居希望者との契約時や点検を実施する際に、このリスクをしっかり説明して総合点検に協力してもらうようにしましょう。
法定点検にかかる費用相場
法定点検も実施にも一定のコストがかかります。
建物の規模や点検を行う業者によって金額は変動しますが、どのくらいの費用がかかるのか相場を把握しておくと安心です。
点検する設備によって点検にかかる費用は異なるため、各設備の相場を見ていきましょう。
特殊建築物定期調査
特殊建築物定期調査の費用は、マンションの延べ床面積によって相場が異なってきます。
延べ床面積 | 費用相場 |
~1000㎡ | 35,000円 |
1000~2000㎡ | 45,000円 |
2000~3000㎡ | 55,000円 |
3000~4000㎡ | 65,000円 |
4000~5000㎡ | 70,000円 |
建築設備定期検査
建築設備定期検査も延べ床面積によって点検にかかる費用相場が変動します。
延べ床面積 | 費用相場 |
~1000㎡ | 30,000~35,000円 |
1000~2000㎡ | 35,000~40,000円 |
2000~3000㎡ | 40,000~45,000円 |
3000㎡~ | 50,000円 |
エレベーター(昇降機)定期検査
エレベーターの定期検査は、エレベーターのメーカー、または保守点検や工事をメインとする業者(独立系)のどちらかに発注することになります。
どちらの業者に発注するか、さらに契約形態がフルメンテナンスとPOGのどちらかによって、相場が異なってくるので注意してください。
フルメンテナンス契約の相場 | POG契約 | |
メーカー | 月額40,000~60,000円 | 月額30,000~50,000円 |
独立系 | 月額30,000~40,000円 | 月額20,000~30,000円 |
※1基あたりの費用相場
フルメンテナンス契約は点検に加えて劣化した部品の取り換えや修理なども含まれるため、点検や保守のみのPOG契約よりも費用が高くなります。
また、メーカーと独立系で比べると、メーカーに依頼する方が相場は高めです。
消防用設備点検
消防用設備点検は、点検を行う設備の数によって変動します。
消火器・避難器具・火災報知器など基本的な設備の点検だけであれば、1回あたり30,000~35,000円が相場です。
しかし、連結送水管や非常電源用の受電設備などの点検を行う場合は、55,000~60,000円が相場になります。
簡易専用水道管理状況検査・専用水道定期水質検査
簡易専用水道管理状況検査にかかる費用相場は、1回あたり15,000~20,000円です。
そして、専用水道定期水質検査にかかる費用相場は、1回あたり3,000~10,000円が相場です。
また、受水槽清掃は容量によって費用相場が以下のように変動します。
容量 | 費用相場 |
~5t | 20,000~40,000円 |
5~10t | 30,000~50,000円 |
10~15t | 40,000~60,000円 |
15~20t | 50,000~70,000円 |
自家用電気工作物定期点検
自家用電気工作物定期点検は依頼する業者や設置している電気工作物によって変わってきます。
中規模以上のマンションに設置されるキュービクル(高圧受電設備)の点検であれば、1回あたり20,000~30,000万円が相場です。

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法定点検を業者に依頼する時に知っておきたいポイント

上記で述べたとおり、法定点検は点検内容に応じて資格を持つ技術者が行います。
そのため、法定点検を行う場合は専門業者に依頼しなければなりません。
技術者による点検とはいえ、対応の質や料金などは業者ごとに異なるので、最後に業者選びのポイントをご紹介します。
丁寧かつ適切に点検を行ってくれる業者を選ぶ
法定点検は、適切に点検と報告を行ってくれる業者を選ばなければなりません。
業者に問い合わせる際に、丁寧に対応してくれる業者かどうか確認してみましょう。
基本的な接客対応の良し悪しだけではなく、こちらの質問に対して正確な回答をもらえるかどうかも重要です。
質問に対して専門的でもわかりやすく、濁さず回答してくれるようであれば、対象の設備や点検に関する専門知識・ノウハウが豊富な業者と判断できます。
また、丁寧に対応してくれる担当者であれば、正確な内容の報告に期待できるので、安心して点検をお任せできます。
最新情報を持っているか確認する
建築基準法や消防法などの法令は定期的に改正されています。
改正されるたびに業者側は情報をアップデートさせ、法定点検にも反映させなければなりません。
そのため、業界や法令の最新情報を把握しているかどうかも、優良な業者選びでは大切なポイントになります。
最新情報を把握しているかどうかは、業者のホームページでは確認しづらい部分でしょう。
最近、法令の改正があったかどうかだけ確認し、実際に前と何が変わったのか業者側に質問して、どれだけ把握できているのかチェックしてみるのがおすすめです。
相見積もりをとる
法定点検にかかる費用は見積もりをとることで把握できます。
見積もりは1社だけではなく、複数の業者からとることをおすすめします。
法定点検の費用は業者ごとに異なるため、始めから1社だけに絞って見積もりをとってしまうと、相場の費用なのか判断できません。
相見積もりをとれば、他の業者との費用から相場がわかり、必要以上に費用が高くないかどうかを判断しやすくなります。
また、極端に安い業者は後から追加料金が発生する可能性があるので、安いからと安易に決めないようにしましょう。
見積り内容が明確かどうか確認する
見積書を見る時は総費用だけではなく、内訳にも注目してみてください。
例えば、「点検費用一式」という記述と金額だけが記されている場合、どこにどれだけの費用がかかっているのかが不透明です。
自分が気付かない所で余計な費用がかかっている可能性があります。
細かく内訳がされている見積書は、どこにどれだけの費用がかかっているのかわかるので、見積もりの内容にも納得した上で契約できます。
費用に関するトラブルを防ぐためにも、詳細な内容の見積書であること、わからない部分は質問して納得のいく回答が得られるかどうかをチェックしましょう。
点検と工事の両方に対応できる業者もおすすめ
できれば点検と工事の両方に対応できる業者に依頼するのがおすすめです。
点検のみ対応できる業者の場合、点検した結果、修繕や交換などが必要となると工事ができる業者に依頼しなければなりません。
そうなれば業者探しから始まり、相見積もりをとって業者の選定、依頼といった工程が必要になり、修繕・交換の対応に時間がかかります。
工事日を迎えるまで不具合が放置されるので、入居者の生活に支障が出てしまう可能性があるでしょう。
点検と工事の両方に対応できれば、問題が見つかればスムーズに対応してもらえます。
業者の選定や依頼の過程も1回で済むため、無駄な労力をかけずに法定点検からメンテナンスまですることが可能です。
今回はマンションの管理で必須となる法定点検とは何か、詳しく解説しました。
法定点検は、建築基準法・消防法・水道法・電気事業法に基づいて毎年行わなければなりません。
この点検を行わなければ法令違反となる上に、マンションの安全性を下げることになってしまいます。
安全性が保たれたマンションは入居者から信頼されやすく、退去率・空室率の低下につながり、マンション所有者の収入にも関わってきます。
入居者から支持されるマンション経営を実現するためにも、定められた頻度で法定点検を行うようにしましょう。