ワークスペースの歴史から、今後どんなワークスペースが必要か。

2020年に突入し、じわじわと広がりを見せた新型コロナウイルス。
そしてその猛威は勢いを増し、ついに東京都では2020年4月7日に緊急事態宣言が発令されました。緊急事態宣言の発令によって、様々な方面に影響を及ぼし、半ば半強制的に在宅をしなければならない機会が企業や学校など問わず増加しました。そんななか企業ではテレワークが突如導入されました。
日本企業での一斉テレワーク導入は、まるで社会実験をしてるかのような、新しい試みといっても過言ではなく、多くの企業が不安を抱えるなかでのテレワークが開始しました。
そのような不安の中で開始しましたが、実際に実施してみると、満員電車からの解放によるストレス減少や、プライベートとの両立のしやすさから、業務の生産性が向上したとの良い結果や意見もみられることができました。
一方で、テレワーク導入当初から懸念されていたとおり、テレワークによって浮き彫りになった課題は進捗管理の難しさや作業効率、コミュニケーション効率の低下でした。
このような課題を解決するため、企業側では必要なビジネスツール(ウェブ会議ツールやクラウドストレージ等)や業務効率化ツール(クラウドの進捗管理ツール等)の導入も一斉に進み、課題解決に向かっている最中といわれています。
一方で、簡単に解決できない、課題も発見されました。
それは、仕事をする環境、つまりワークスペースです。
テレワークによって、仕事をする場所であったオフィスで仕事ができないことは、オフィスワーカーにとって仕事へのやる気(モチベーション)や作業効率の面にも大きく影響し、快適に仕事ができるワークスペースを整えることが企業として急務となりました。
そこで、今回はワークスペースに焦点をあて、産業革命以前から現代までのワークスペースの歴史・変遷を考え、今後どのようなワークスペースが必要になるかについてお伝えしていきます。

ワークスペースとは

ワークスペース

昨今、ワークスペースという言葉を、頻繁に耳にするようになりました。
ワークスペースは、単に言葉を分解すると「働く場所・空間」という意味です。
オフィスと同等の意味ですが、なぜあえてワークスペースと呼ぶのでしょうか。
それには、オフィスが単に働くだけの空間であることに対して、ワークスペースは働く空間も含め、コラボレーションの場であることを意図していると考えます。
オフィスはコラボレーションの場所であるという認識も加わり、ここ数年で単純なオフィスからワークスペースへと企業の関心が高まりました。その結果、先進的なITベンチャー企業などではこれまでにないオフィス空間を作り上げている事例も少なくありません。
最近のITベンチャー企業で多くみられることが出来るケースは、オフィス内にハンモックがある、社内がフリーアドレスで好きな場所で仕事ができる、自由に利用できるラウンジが多く配置されている、スナックや軽食が置いてあるなど。様々な事例が見受けられます。
しかし、これは方法論としての一例に過ぎず、実際はコミュニケーションを取りやすく、さまざまな人と交流できる場を意図的にオフィスに導入しようとし考え抜いた結果、先進的なオフィス空間を作り上げています。
こういったものを設置する場合は、通常のワークスペースを作るよりも、それなりの投資が必要です。
それでは、あえて企業として投資をする意味とは。
それは、従来のオフィスでは実現できない、イノベーションや新しい価値の創出(新しい人材を採用できる効果を含め)を期待し多くの企業は投資を決断されています。
実際に世界的にも成功している大企業、Google、Apple、Facebook、Amazonなどはワークスペースにかなりの設備投資をしており、設備にさまざまな工夫を凝らしています。
例えば、NYにあるGoogleオフィスでは、オフィス内のどこからでも歩いて食べ物を取りに行ける環境を意図的に作りだしています。これにより食べ物を取りにきた社員たち同士で、さまざまな社員(本来仕事では交流しないもの同士)と交流する場となっています。
仕事以外の時間に生まれた交流やコミュニケーションは、仕事へのモチベーションを高めるだけでなく、結果的に新しいアイデアやイノベーションの創出にも影響するのです。
このように、ただの作業場としての意味だけでなく、コラボレーションの場という意味合いで、オフィスという言葉と共に、ワークスペースという呼称が用いらるケースが増えています。

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ワークスペースの歴史と変遷

ワークスペース

昨今、ワークスペースの動きに変化が見られ始めているように、ワークスペースはこれまでも時代によって変化を重ねてきました。
現状、日本で見られるワークスペースの変化として、ワークスペース(オフィス)に合わせて働く考え方から、働き方に合わせてワークスペースをつくる考え方が浸透しつつあります。
ワークスペースが変化し続けている背景には働き方の変化、そして社会の変化が関係しているのです。
ここでは社会の変化、働き方の変化を合わせた3つの観点からみたワークスペースの変遷、そしてこれからのワークスペースについてお伝えしていきます。

産業革命以前の家とワークスペース

産業革命以前の働き方といえば「家内制手工業」が一般的でした。
家内制手工業は工業の一形態であり、職人が自宅で生産を行う働き方でした。雇われの職人の多くは、親方の自宅に出向いて仕事をするスタイル。
この時代は通信網や流通システムも発達しておらず、生活に必要なものは最低限。衣食住に関わるものを生産するだけで社会が回っている時代ともいえます。
生活範囲の需要を充足する生産のみすればよく、今ほど労働が重視されていませんでした。また、働く場所や時間も決まっておらず、基本的には家での労働がメインでした。
つまり家は生活空間であると同時に、作業空間としての役割も担っていました。
そのため、ワークスペースという空間が明確にはなっておらず、単に作業空間が確保できれば良いという考え方でした。

産業革命時代からの工場のワークスペース

産業革命は大きな社会変化であり、働き方およびワークスペースにも大きく影響しています。
産業革命時代からは、決まった時間に、決まった場所で働く概念が誕生し、そのために集合する場所として「オフィス」が誕生したのです。
産業革命の中心地となる当時のイギリスでは蒸気機関車の発明、紡績工場を中心として多くの工場が建設されました。これにより大量生産・輸送ができるようになり、労働や生産管理の需要も増加することになりました。
単純労働力の集まりだけでは業務がまかなえなくなり、管理業務や業務調整を行う場所として工場にオフィスが併設されたのが始まりでした。
産業革命を機に、個々がバラバラに働いてきたスタイルから、労働者として工場やオフィスに集合し、集中的に業務を行うスタイルになったのです。
しかし、この頃のオフィスは現代のスタイルのように周りの人とコミュニケーションを取ったり、連携して仕事をすることはほとんどなく、黙々と仕事をすることが当たり前でした。
そのため産業革命頃のワークスペースは、単なる作業場であり、当然のように交流の場などは設けられていない環境だったのです。

産業革命後のワークスペース

産業革命後のワークスペースは、専用に用意されたワークスペースで働くことが一般的となり、明確なワークスペースがなかった時代からみると大きな変化がもたらされました。
産業革命頃のオフィスといえば事務作業を効率的に行うだけの場であり、黙々と作業をするだけの場でした。産業革命を経て、さまざまな産業が発達し、事務作業以外の仕事もオフィスでするようになり、効率よく業務をこなすため、様々な役割を分担をする専門部署が誕生し、業務におけるコミュニケーションも非アク的に増加しました。
その結果、部署内でコミュニケーションが取りやすいワークスペースの配置や、機能性や快適性も求められるようになり、作業効率を求めるだけのオフィスから、働きやすさや快適さも重視したワークスペースがつくられるようになったのです。

情報革命時代のワークスペース

情報革命時代になりIT技術が発達しました。そして、これまで人の手で行ってきた作業も、ITにより大幅な効率化が実現しました。これにより人を集めれば集めるほど、効率がアップする仕組みになり、企業は多くの人員を確保するようになりました。
そして、企業は多くの社員が働けるオフィスビルが必要になり、オフィスはなくてはならない場所となったのです。しかし、情報革命時代のワークスペースに意識されていたのは社員が働くワークスペースではなく、外観やエントランスのような共有空間のデザイン性や快適性のみでした。
そのため業務を行うワークスペースは、必要最低限の機能性や快適性を備えたものであることがほとんどでした。

これからのワークスペース

これからのワークスペースは、作業空間としてではなく創造空間としてのワークスペースが求められます。
日本では最近の動きですが、欧米などでは早くからこの考え方が経営者の間に浸透していました。
欧米では、ワークスペースは、企業によって多種多様に存在すべきであり、生産性をあげるためには多様なコラボレーションが重要とされてきました。
その考えの背景には、ワークスペースが単なる作業場として管理されるものではなく、自己実現の場として開放的なものであるべきという考え方があります。
そのために一人で黙々と作業をするワークスペースを作るのではなく、社員同士が刺激され、モチベーションの向上につながり、組織のパフォーマンスも向上にもつながるように促していくワークスペースを企業として作っていく必要があります。
これまでの様々な企業での取り組みの結果、意図的に交流できるように工夫されたワークスペースでは、自然な流れで人々と交流することが可能といわれています。さらに結果的には、工夫されたワークスペースは交流だけでなく、休息や協働など様々な目的でも活用できるようになります。
これにより仕事のパフォーマンスのみならず、価値あるコミュニケーションの誕生に期待できます。
つまり、企業には働く場所への設備投資を行い、意図的にコラボレーションの接点をつくることが求められます。
コラボレーションの場としてだけではなく、ワークスペースは、内側を変革するだけでなく、新たな人材の採用ツールとして、情報発信の拠点として、地域とのハブとしての役割も担えるようになるのです。それを実現するためには、企業の働き方や社風、ルールを俯瞰して、その企業に合わせたワークスペースを用意することがポイントとなってきます。

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直近のワークスペースの動き

オフィス

直近のワークスペースは、新型コロナウイルスの影響によりこれまで以上に急速な変化をみせています。しかし、新型コロナウイルス以前からもワークスペースに動きはありました。
ここでは、直近のワークスペースの動きについて、以下の順序で解説していきます。
◼︎新型コロナウイルス発生以前の動き
・空前のオフィス不足が発生
・フレキシブルオフィスの台頭が見られる
◼︎新型コロナウイルス発生以後の動き
・コロナ禍によりテレワークが本格化
・オフィスは地方移転か?都心集中

コロナ禍前の空前のオフィス不足

2019年5月末時点での東京都心5区のオフィス空室率は三⻤商事発表によると1.64%でした。この数字はオフィス需要が最も高かったバブル期1990年12月の0.39%以来となる低水準です。
都心だけでなく大阪地区では2.45%、名古屋地区では2.11%、札幌地区では2.23%、福岡地区では1.81%と、全国主要都市で見ても、オフィス需要は高い傾向にあることがわかります。
これほどまでにオフィス需要が高まり、オフィス不足になりつつあった背景は、企業の人員増加や、人材確保のために広く快適な空間を確保する動きがあるからです。オフィスは人員確保のために有力なツールでもあり、狭くて心地悪いオフィスは求人に悪影響を与えるほどでした。

オフィスに変化の動き…フレキシブルオフィスの台頭

2019年4月に働き方改革関連法案が施行されたことやWe Workの台頭あり、テレワークなどを含む新しい働き方にも注目が集まりました。
これにより、従来スタートアップや起業家、フリーランスに根強く需要のあった「シェアオフィス」が、既存のオフィスを利用していた、一般企業も積極的に検討するような時代になってきました。
シェアオフィスはオフィス(ワークスペース)の一種であり、共用部分(会議室、コーヒースペース等)の有効活用ができる点からシェアリングエコノミーの一種でもあり、スペースを柔軟に活用できることからも「フレキシブルオフィス」とも言われます。
日本でのシェアオフィス市場の具体的な動きに、2018年にアメリカのコワーキングスペース事業者大手WeWorkが日本市場にも拠点を持ったことが大きな動きとしてあげられます。2020年3月時点ではオープン予定を含めて37拠点をもち、都内だけでも29拠点を構える規模となっています。
世界では日本より規模の拡大が進んでいるシェアオフィスですが、拡大の背景には「技術の変化」「雇用形態の変化」「働く場所の変化」といった社会的変化が関係しています。
業種に限りはあるものの情報技術の変化により、必ずしもオフィスでなくとも業務ができる環境になってきています。またスタートアップ起業ブームや、必要な人材を自由に雇うための雇用形態の変化が起こりワークスペースの再定義が必要な時代となっています。
そして最も大きなものとして、今後社会を担っていくミレニアル世代の意識変化が挙げられます、働く場所が柔軟に選択できることは働く上で重要な価値であり、企業からしてもその点を考慮しないことで有能な人材が確保できない事態が起こりつつあります。
そのため、フレキシブルな考えを持つ有能な人材を確保するためにも、シェアオフィスが必要と捉えている企業も少なくないのです。とはいえシェアオフィスを活用したテレワークへの企業理解はまだまだ課題点であることが実状でした。
しかし新型コロナウイルスの影響により、ほぼすべての企業がテレワークを経験したことが、今後のシェアオフィス市場に大きな変化(規模拡大か規模縮小かはまだ見えないが)をもたらすことは確かといえます。

コロナ禍によりオフィス立地の二極化が進む?

新型コロナウイルスの影響により注目されているオフィス市場の動きに、オフィス立地の二極化が挙げられます。日本では、以前より東京への一極集中は課題となっており、政府は税制改正などの条件を提示して企業の地方移転を促進していました。
しかし、この制度が2015年に始まり3年間の間で、地方移転をした企業はわずか74社。それほどにオフィスを東京に持つ必要性が高いことがわかる結果となりました。
しかし、2020年の新型コロナウイルスの影響により、特に都内の企業はテレワークが増加しました。これまでテレワークを導入していなかった企業でも実施されたことで、テレワークの新たな有用性が確認できた企業も多かったといえます。
そこで、必ずしも家賃の高い都内の一等地にオフィスを持つ必要がないとの考えを持ちはじめる企業も増えたのです。とはいえオフィス面積削減や解約の事例はあるものの、オフィスそのものを地方へ移転する事例はまだ少ない状況です。

オフィスの地方移転による課題

では、なぜ賃料の安い地方への移転事例が少なく、政府の税制改正を利用しても進まなのでしょうか。
それには賃料の負担が減るメリット以上に、多くの課題があるからと考えられます。
その主な課題は以下の3点です。
①従業員の居住地は都内、または関東圏にある
②インターネット環境
③新規営業先への営業

①従業員の居住地は都内、または関東圏にある

オフィスを地方へ移転するということは、人員を含む全ての本社機能を移転しなければいけません。つまり従業員は、居住地も地方に移さなければいけなくなるのです。
実際に地方移住のニーズやUターンを希望している方はいますが、全員に当てはまることではありません。
居住地の選択にオフィスが関係していることも確かですが、従業員にとっては、個人のライフイベントや人生設計の方が重要視されます。
つまりオフィスだけを理由に、全ての人が地方へ移住するとは限らず、離職増加につながる恐れもあるのです。
そのため従業員を多く抱える企業にとって地方移住は現実的なものではなく、実現しやすいのは本社機能の一部を地方に移転するといった動きでしょう。

②インターネット環境

地方といってもそのくくりはさまざまですが、大阪や名古屋、福岡のような主要都市の地方であれば、インターネット環境も整っています。
しかし、山間部や農村地のような本格的な地方は、ビジネス基盤が整っていないため、インターネット環境が整備されていないことも多いのです。
地方といっても快適に仕事ができるインターネット環境が整っている地域は、ビジネス基盤の整った都市部であることが現状です。
インターネット回線も日本全国への普及を目指しているサービスもあるものの、すぐには実現しないでしょう。
地方に移転して賃料が安くなっても、業務の効率や生産性が低下してしまっては本末転倒です。

③新規営業先への営業体制

企業にとって営業は欠かせないものです。
テレワーク導入の課題でもあった営業体制は、新型コロナウイルスの影響により少しずつオンラインへと移行している状況にあります。
オンラインで営業できるようになったことで、移動にかかるコストや商談の意思決定の速さにポジティブな影響がみられることは確かです。
しかし、一方で対面による直接のコミュニケーション価値は高いものであるとの再認識や、オンライン商談にコミュニケーションの難しさを感じている方も多いのです。
オフィスを地方移転した場合は、オンライン商談の割合も増えるでしょう。
しかし、対面を希望する顧客が多い場合には、都市部へ行き来する手間はかなりのものです。
そのことを踏まえると、気軽に営業へ向かえる都市部の環境を捨てるのはなかなか難しいといえます。

結果的にオフィスは都心に集中

上記の地方移転の課題を踏まえると、結果的にオフィスが都心に集中する傾向は変わらないのではないでしょうか。
もちろん今後ICTやインターネット環境の発達により、今よりも地方のビジネス基盤が整う可能性はあります。
そしてテレワークが本格化する企業の場合、都内に住んでいない人がまれにオフィスへ出向くことも考慮すると、空港や新幹線の止まる駅などから行きやすい交通の利便性が高い立地の需要が増えます。
しかし、交通利便性の高い立地は賃料が高いことからも、固定費が抑えられるシェアオフィスの需要が増加すると予想されます。
つまりオフィスは形を変えながらも、都心へ集中していくということです。
さらに求められるものは単なる作業場としてのオフィスではなく、コラボレーションする場としてのオフィスです。オフィスへ出向く目的は、対面でのコミュニケーションや業務環境が整っているなかで仕事をするためがメインとなります。
その場合は従来の作業場としてのワークスペースよりも、コラボレーションを重視したワークスペースを活用することで仕事における新たな価値やイノベーションが創出しやすくなります。
企業側もあえてそうしたワークスペースを用意することが、テレワークによる効率や生産性の向上をさらに良い方向へ進めることになるのです。

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ワークスペースを整えるために街をつくる?トヨタが開発する実験都市

街

トヨタ自動車株式会社は、米国ネバダ州ラスベガスで開催したCES2020にて、あらゆるモノやサービスにつながる実証都市「コネクティッド・シティ」の開発を発表しました。
生活がより豊かになるための実証都市プロジェクトは、ワークスペースにどのような影響を与えるのでしょうか。

トヨタの壮大な実験「コネクティッド・シティ」プロジェクト

トヨタは2020年末に閉鎖予定の静岡県裾野市にある、トヨタ自動車東日本株式会社東富士工場の跡地を活用して「コネクティッド・シティ」の開発を発表。
2021年初頭より着工予定で、その都市は「Woven City」と命名されています。
街の設計はデンマークの著名な建築家である、ビャルケ・インゲルス氏が担当。
その他にもCASE、Ai、パーソナルモビリティ、ロボットなどの実証をするために、多くのパートナー企業や研究者と連携します。
この実証都市はまさに近未来都市の第一歩。人々が生活を送るリアルな環境下における、自動運転、モビリティ、アズ・ア・サービス(MaaS)、パーソナルモビリティ、ロボット、スマートホーム、ロボット、AI技術などを導入・検証するための都市です。
竣工時にはトヨタの従業員やプロジェクト関係者をはじめとした、およそ2,000名が居住予定となっています。

なぜ「Woven City」を作るのか?

このプロジェクトの狙いは「人々の暮らしを支えるあらゆるモノ、サービスが情報でつながる時代を見据え、都市のなかで技術やサービスの開発と実証のサイクルを素早く回ること。そして実証を通じて、新たな価値やビジネスモデルを生み出し続けること」にあります。
人々の暮らしを支えるモノやサービスの開発を最前線で担うのはトヨタのようなメーカーです。
トヨタは主にエコシステムや自動運転をはじめとした、生活インフラに近いモノやサービスの開発を担当します。
今回は街をゼロから作り上げることにより、将来街のインフラとなるデジタルオペレーティングシステムの開発も視野に入れています。
住民や建物、車などのモノとサービスが情報によってつながることにより、暮らしのポテンシャルは最大化できると考えられているのです。
今でもモノやサービスが情報でつながっている時代といえますが、現段階では始まりにすぎず、まだまだ発展の余地はあります。
今はまだ生活の基盤に大きく影響するほどではなく、スマートフォンやPCありきで情報とつながっています。
しかしAIやロボットなど人工知能の発展が進み、人々の暮らしにも応用がきくようになりつつあります。
とはいえいきなりリアルな生活環境で導入するのは難しく、開発と実証のPDCA確保が課題となっています。
そこでゼロから街を作ることにより、そうした近未来の環境に合わせた暮らしができるようになるのです。
そして実証のもと生活をすることで、改善すべき点やさらに開発すべき点が見つかりやすくなります。
Woven Cityの開発により、わたしたちがなんとなくイメージしている近未来都市が現実的なものになりつつあるのです。
この都市での生活環境がより快適なものであると証明されれば、近い将来モノとサービスが情報でつながる生活が実現するのです。

ワークスペースの進化にも期待できる

もちろんインターネット環境の整備は当たり前となり、都市内でのワークスペースはこれまでにない新しいものとなるでしょう。
Woven Cityで開発予定となる「eパレット」は、広い室内を活用して各種サービスを提供する移動オフィスです。
これまで固定の場所で事業を営んでいた物販や医療サービスは、拠点が自動走行で目的地へ向かうことを想定して作るそうです。
つまりWoven Cityにおいてはオフィスや店舗というものが存在せず、必要に応じて目的地へ移動する新しいスタイルとなります。
つまりどこにいてもモノやサービスが受け取れるようになり、まさにモノとサービスが情報でつながることを体現しています。
ではワークスペースはどうなるでしょうか。
今のようにシェアオフィスやコワーキングスペースへ出向いていた時代から、必要に応じてワークスペースが出迎えてくれる時代になるかもしれません。
eパレットのような移動オフィスが主流となれば、より柔軟に場所を選んだワークスペースが実現します。
まさにコラボレーションを最大化したワークスペースができるといえるでしょう。
Woven Cityにおいてはワークスペースのみならず、その他サービスもコラボレーションする環境です。
モノやサービスが情報によってつながれることにより、開放的な都市に期待できるでしょう。
そして仕事だけでとどまらず、生活における生産性や効率も向上するといえます。

まとめ

新型コロナウイルス発生以前より新しい働き方、そしてワークスペースの定義は変化しつつありました。
しかし日本のオフィス慣習が大きく影響していることもあり、ワークスペースへの設備投資などは十分ではないのが実状でした。とはいえ、そのような中でワークスペースの重要性を確信し、新しいワークスペースを作り上げてきた企業は少なくありません。
特にこれからの時代は今よりもワークスペースが重視され、働く場所の選択肢もより多様化していくことが求められます。ここをクリアしなければ、優秀な人材の確保が難しくなってしまうとすらいえるでしょう。
つまり企業の競争力の源泉である人材確保のためにも、ワークスペース作りが必要なのです。
また、ワークスペースの歴史と変遷からもみてきたように、時代の流れによる社会的変化も影響し、ワークスペースの定義は変わり続けています。
そして現時点では新型コロナウイルスの発生によって、変わりつつあるのです。
これまでは作業ができる、そして必要な人員が入るワークスペースがあれば良いとしか考えられていませんでした。
しかし、新型コロナウイルスによってテレワークを経験したことにより、必ずしもオフィスで仕事をしなくても良く、自分に最適な場所、そしてモチベーションの上がる場所を選択しながら働けるようになりつつあります。そして、そこで重要なのはコラボレーションの接点としてのワークスペースです。
快適に仕事ができる環境だけでなく、人々との交流が意図的に発生するようなワークスペースで働くことが、新たな価値やイノベーションを創出するための重要なポイントなのです。

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