避雷針は、落雷を避けるための道具として知られています。
しかし実際は、雷を避けるのではなく呼び込むために設置されるものです。
したがって、「被雷針」と書いた方が正しい呼び名だと言えます。
一般的には避雷針と呼ばれているので、そちらの方が定着しています。
避雷針は、設置していても雷が落ちないわけではありません。
そのため、マンションに設置していたとしても、落雷のリスクをなくすことはできないのです。
今回は、避雷針の歴史や種類、マンション運営をする中で知っておきたい落雷対策について解説していきます。
Contents
避雷針とは?基本原理・仕組みを解説
まずは、避雷針がどのようなものか再確認するために、歴史や基本的な原理、仕組みについてみていきましょう。
避雷針の歴史について
避雷針が発明されたのは1752年です。
アメリカの政治家であり、科学者でもあったベンジャミン・フランクリンによって発明されました。
雷雨の中で凧を上げる実験を行ったことで有名な人物です。
雷が鳴っている中で凧を上げる実験は非常にリスキーで、雷に打たれて亡くなってしまった方もたくさんいます。
そのため、ベンジャミン・フランクリンは非常に幸運な人物だったと言えるでしょう。
凧を上げている時に雷が落ちたことを機に、避雷針の発明がスタートします。
270年以上の歴史がある避雷針が日本国内に持ち込まれたのは、江戸時代の後期です。
避雷針という名称は、雷を避ける機能と針のような計上に関する概念を盛り込んだ言葉になります。
英語では、フランクリン・ロッドやAir Termination Systemなどと呼ばれていることから、避雷や針といった概念はありません。
日本に上陸した時に訳された表現が膨らみ、雷を避けるための道具と認識されるようになりました。
2003年の法改正では、避雷針という言葉がJIS規格上からもなくなっています。
避雷設備の内部で雷を受ける受電部と呼ばれるようになったのですが、今でも避雷針という言葉の知名度は衰えることがありません。
避雷設備は、雷を受ける受電部、雷の電流を地面に導く引下げ導体、接地の3つで構成されています。
日常生活において避雷針と呼ぶケースが多いのは、270年以上の長い歴史があるからだと考えられます。
ただし、現在は避雷針と記述されることはないので、書類などを見る時はそれを念頭に置いておきましょう。
普及するまでに時間がかかったが…
避雷針は、ベンジャミン・フランクリン自身が自宅に設置して効果を確かめようとしましたが、効果が本当にあるかどうかは落雷がないとわかりません。
そこで友人宅にも避雷針を付けてもらうことにしたのです。
すると、そのうちの1つに雷が落ちたものの建物に被害が及ばなかったので、避雷針の効果を証明できました。
実験に成功したことによって、アメリカでは急速に避雷針が広まりました。
1759年には、アメリカの富裕層の自宅には避雷針を設置していたと言います。
しかし、ヨーロッパではカトリックを信仰する国が多く、避雷針はなかなか広まりませんでした。
なぜかというと、当時のカトリック教会では雷=神の力だと考えられていたためです。
それをコントロールするのは神に対する冒涜だという声が度々上がっていたことも、広まらなかった理由の1つです。
そのような状況下でも、ベンジャミン・フランクリンのアイディアを支持する科学者が増え、教会や灯台、塔などに避雷針をお試しでつけるケースも増えていきました。
実際に設置してみると、雷の被害を抑えられた事例が続々と報告されていったのです。
このような経緯からヨーロッパではなかなか普及しませんでしたが、ドイツで初めて本格的な避雷針を設置したリヒテンベルグが「避雷針が神への冒涜なら、医薬品はどうなのか。神から送られたあらゆる厄災を受け入れろ、どんな治療も行ってはいけないのか。」と説得し、理解を得られるようになっていきました。
避雷針の原理・仕組みとは?
避雷針が針のような形をしているのは、先端がとがっていた方が放電しやすいためです。
針の先端は密度が高くなるため、放電させることができます。
地面に立っている避雷針の先から放電すると、上空に向かうことになります。
雷が落ちる方向とは真逆です。
雷が落ちる時に地面から放電するのは「お迎え放電」と呼ばれていて、雲から地面に向かう「先行放電」と空中で引き合って結ばれ、そこに雷雲から大きな負荷が流れるのです。
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避雷針と合わせて知っておきたい「避雷器(SPD)」とは
避雷器(SPD)は、雷によって生じる電子機器の故障を防ぐためのものです。
電柱や工場、ビルなど、様々な場所に設置されています。
普段目にすることはありませんが、私たちの生活を守ってくれています。
続いては、避雷器(SPD)とは何か、避雷針とは何が違うのか、という疑問に答えていきましょう。
避雷器(SPD)とは?
避雷器(SPD)は、前述したように雷によって生じる電子機器の故障を防ぐためのものです。
雷によって受ける電圧を分散させるという働きを持ちます。
一般的には、雷が直撃しそうな場所や雷から生まれる電圧の影響を受ける恐れがある電子機器などに設置されます。
電子機器に雷が影響を与えることは、雷サージと呼ばれる現象です。
一時的に異常な過電圧や過電流が発生し、電源線や通信線を通って建物内にある電子機器に侵入します。
そして、何らかの被害を及ぼすのです。
雷サージに関しては、後ほど詳しく解説します。
また、落雷による送電設備への不具合を防ぐために瞬時電圧低下という現象が起こる場合もあります。
電力供給を停止することで、電子機器が停まってしまう場合がありますが、故障するケースは稀です。
しかし、パソコンなどが強制終了してしまうとデータの損失や不具合が生じる可能性があります。
瞬時電圧低下によるパソコンの故障を防ぐには、雷が鳴り始めたらデータのバックアップを取るようにしましょう。
雷が収まるまでパソコンをシャットダウンして待つという方法もあります。
避雷針とは何が違う?
避雷針と避雷器の最も大きな違いは、守る対象が何かという点です。
避雷針は、直接的な落雷から建物やその内部にいる人を守ります。
一方、避雷器は建物の内部にある電子機器を雷サージから守ります。
また、避雷針は20m以上の高さがある建物だと設置が義務化されていますが、避雷器は設置義務がありません。
なぜなら、雷サージが人的な被害を直接もたらすことがないためです。
サイズにも違いがあります。
避雷針はサイズが大きいので、建物の上部に設置されるのが一般的となっています。
しかし、電話線や電柱に取り付ける避雷器は、小型なものが多いです。
最近は、避雷器を内蔵したコンセントも簡単に手に入るので、落雷が起こった時に備えて買っておくのも良いでしょう。
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避雷針の種類について
避雷針は長い歴史を持っていることもあり、種類もいくつかあります。
続いては、避雷針にどのような種類があるのかみていきましょう。
フランクリン型(従来型)
フランクリン型は、従来型とも呼ばれています。
建物の一番高い場所に設置し、雷が発生した時にお迎え放電によって雷を誘導します。
そして、電流を地表へと安全に流してくれるのです。
避雷針の防護範囲は、旧JIS A 4201だと避雷針の先端から45度または60度とされていました。
ガスや火薬など危険物を取り扱う場所では45度、一般の建築物であれば60度です。
しかし、この規定では建物の高さを考慮していなかったため、2003年のIEC規格に合わせるために改訂されました。
改訂によって、回転球体法によって求められるラッパ上の部分を防護範囲とみなすことになりました。
球体回転法は、建物の外部に建造物を包む大きな球体があると想定し、その球体が動いた時に触れた部分が雷の影響を受けやすいと判断するものです。
現在は、これまでの雷対策とともに多くの建物に適用されています。
現在でも昔からある保護角法なども使われていますが、回転球体法が基本的な対策となっています。
PDCE避雷針
PDCE避雷針は、雷を落とさない避雷針です。
気候変動によって、落雷による大きな被害が出る可能性が高い状況になりつつあります。
そのため近年は、事後の対処よりも事前予防が重要だと考えられるようになってきました。
積極的に雷を呼び込むと被害に遭う可能性が高くなってしまうのではないか、という不安を解消するために開発されたのが落雷抑制型のPDCE避雷針です。
従来の避雷針は積極的に雷を呼び込んでいましたが、雷を誘導することがないのがPDCE避雷針ならではの特徴です。
そんなPDCE避雷針には、いくつかのラインナップがあります。
建物や施設への導入はもちろんですが、海上交通や工場などに設置できるタイプもあります。
広域エリア、通常避雷針エリア、耐振動性設計、耐熱設計といった種類があるので、用途に合わせて適したものを選択することになるのです。
様々なニーズに応えられるため、PDCE避雷針を導入するケースも増えつつあります。
ESE避雷針
ESE避雷針は、「Early Streamer Emission」の頭文字を取った言葉です。
日本語に訳すと、早期ストリーマ放出型避雷針となります。
ストリーマはお迎え放電のことで、それをより早く放出するという仕組みです。
フランスやスペイン、中国で使われるケースが多いタイプです。
雷を呼び込むという性質は従来の避雷針と同じですが、より早くお迎え放電ができるようになっています。
そのため、雷雲から放電される雷をキャッチできる距離が長くなります。
そしてそれは、フランクリン型よりも守れる範囲が広くなることを意味するのです。
落雷をより防ぎやすくなるだけではなく、ESE避雷針なら設置する数が少なくて済むという大きな利点も生まれます。
消イオン容量型避雷針
消イオン容量型避雷針は、アンドラ公国で2003年に発明されました。
従来の避雷針とは全く違う性質を持ちます。
現在では世界各国で使われていて、日本国内でも防災製品に認定されています。
この避雷針は上空にあるマイナスの電気、そして地面にあるプラスの電気を本体に引き寄せ続けています。
そして、電気(プラスとマイナス)を避雷針の内側で中和し、安全で微弱な電流として地面に逃がします。
そうすることにより、待機中にマイナスの電気が飽和することがなくなり、落雷自体の発生を抑制しているのです。
防護範囲は設置された場所から半径100mほどで、24時間365日機能しています。
ただし、接地する高さや位置によって範囲が変わるので、それを踏まえた上で導入するようにしましょう。
高さ20mの場所に設置した場合だと、半径100mの円錐形が防護範囲となります。
フランスでは国内200ヶ所に設置したところ、2005年~2011年までの5年間にわたって設置付近への落雷が確認されませんでした。
次世代の避雷針と言っても過言ではないでしょう。
今後はさらに改良が進められ、より普及していくことが期待されています。
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マンションに避雷針を設置する義務はある?
避雷針は、マンションなどの建物を雷から守るために必要な設備です。
重要な設備ではありますが、設置義務があるのか気になる方もいるでしょう。
そこで続いては、マンションに避雷針を設置する義務についてご紹介します。
結論から述べると、高さが20mを超える建物の場合は設置義務があります。
これは、建築基準法で定められています。
20mは、建物に乗っているものや付属しているものも含んだ高さです。
屋上に空調の室外機や広告塔、キュービクル、煙突などがある場合は、それらの高さも含めて計算しなければいけません。
したがって、20m以下の建物であれば、避雷針を設置しなくても問題ないと言えます。
しかし、基準以下の高さだから落雷のリスクがないわけではないので安心できません。
周りに避雷設備を備えた高層建築がない、山岳地帯などで落雷のリスクが高い、煙突やアンテナがあるといった場合は、義務付けられていなくても避雷針を設置しておくと安心です。
また、利用者が多い建物に関しても、避雷針を設置しておいた方が良いと言えるでしょう。
避雷器は、前述したように誘導雷や雷サージが人的被害を直接もたらすことがないため、設置は義務付けられていません。
しかし、マンションなど多くの方が利用する建物で電気機器の故障が起こると、大きな影響を与えてしまいます。
万が一、エレベーターが使えなくなると不都合が生じる場合もあるでしょう。
そのため、避雷針と避雷器の設置はしておいた方が安心だと言えます。
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避雷針をマンションに設置・交換する場合の費用
マンションのような大きな建物では、建物内部にくまなく設置しなければなりません。
ここでは、避雷針をマンションに設置または交換する場合の費用を見ていきましょう。
交換や新たに設置する際の費用
避雷針を新たに設置する場合、100万~400万円が費用の目安とされています。
費用に差があるのは、建物の大きさによって変動するからです。
避雷針は安いものでも数万円、高いものでは数十万円と金額に幅があります。
仮に1台10万円の避雷針をマンション内部に10台設置すれば、避雷針だけで100万円かかることになります。
ここに接地工事・建注工事・アース線配線工事・接地抵抗測定・支持管取付工事・窒素防爆工事などがプラスされるため、最大400万円程度がかかる計算となるのです。
マンションでは、建物内部の配電盤や各フロアの電源などにくまなく設置する必要があるため、事前に必要台数や工事の目安を確認しておくと良いでしょう。
修理や移設する場合の費用
修理や移設する場合は、避雷針を新たに設置する際に必要となる電柱の建物工事や接地工事などが不要です。
そのため、かかる費用としては新しい避雷針の必要台数分と接地抵抗測定、アース線配線工事などとなります。
費用としては40万円ほどが目安になりますが、建物の大きさや設置台数によっても変動します。
また、避雷針の修理が必要な場合は、数万円で済む場合もあるでしょう。
修理箇所にもよるので、見積りを取って確認してみてください。
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避雷針を含む雷対策設備を点検・メンテナンスしよう
避雷針を含む雷対策設備については、建築基準法において定期的な点検・メンテナンスが義務付けられています。
ここでは、避雷針が劣化するとどうなるのか、点検・メンテナンスにおけるチェック項目などについて解説します。
雷対策設備は定期的な点検・メンテナンスが必要不可欠
避雷設備は雷から建物を守るために重要な設備であり、建築基準法においては検査及び保守に関する規定があります。
基本的に、雷対策設備は屋外に設置するケースがほとんどです。
そのため、天候や外気温などの影響を受けやすく、建物とともに徐々に劣化していきます。
建築基準法では、このような避雷設備を日本工業規格JIS4201 4.1に基づき設置を義務付けているほか、JIS4201 4.2に基づき年1回以上検査を行わなければならないことが規定されています。
検査によって規格に適合しないと判断された場合には、修理・補修が必要です。
避雷針が劣化するとどうなる?
避雷針をはじめ、避雷設備が劣化すると以下のような症状が見られます。
サビ
外気の影響や経年劣化により、支持管や金属部分にサビが生じる可能性があります。
多少のサビでは問題なくても、内部までサビが進行した場合には支持管そのものが倒れてしまう恐れがあります。
また、サビが原因で配線の取付金物が外れてしまう場合もあり、線が伸びてしまったり、線抜けにつながったりする可能性があるため注意が必要です。
接続不良
劣化や破損など、様々な原因で雷電流を流すための接続が途切れてしまうこともあります。
接続不良となれば当然雷対策としての効果を発揮できず、建物の躯体やガラスが破損したり、建物火災や人命にかかわったりする恐れもあります。
避雷針を正常に機能させるためにも、接続不良は避けなければなりません。
支持管のズレ
支持管や支持管先の突針にズレが生じると、落下する危険性が高まります。
建物の屋上に落下しても危険ですが、最悪の場合地上の歩行者や走行車などに重大な影響を及ぼす恐れもあります。
このような事態を未然に防ぐためにも、避雷針を含む雷対策設備は定期的に点検しなければなりません。
雷対策設備の点検・メンテナンスでのチェック項目
避雷設備の点検・メンテナンスでは、避雷設備全体の所見に加え、避雷突針部や支持管、支持管取付部、避雷導線部、接続部、ワイヤーロープ部、架空地線部、引下導線部、接続極部など全31のチェックを行います。
例えば、避雷針支持管では異音がしないか確認するための打音検査を行ったり、規定の数値を満たしているか設置抵抗値の測定を行ったりします。
目視や測定など様々なチェックを行うことで、法定規格に適合しているか見極めることが可能です。
チェックポイントとしては以下が基準になります。
・突針が正常に設置されているか・傷みはないか
・避雷針のポールや支線の腐蝕や傷みがないか(サビや折れなど)
・避雷針ポールの取付金物や取付代が腐蝕していないか
・避雷針の配線に異常がないか
・接続部が途切れていないか
・アース抵抗値に異常がないか
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避雷針があってもトラブルが発生する?!「雷サージ」を解説
避雷針は、雷そのものを回避するための設備ではありません。
あくまでも雷電流による被害を避けるためのもののため、避雷針があっても雷サージが発生する可能性があります。
ここでは、雷サージがどのようなものなのか解説します。
雷サージとは
雷サージとは、通信線や電源線などを伝って雷電流が屋内に侵入する電流のことを言います。
避雷針を設置しているマンションであっても侵入する可能性があり、テレビ・パソコン・電話など家電製品が誤作動を起こしたり絶縁破壊したりする可能性があります。
雷サージによる電流は、雷の規模によって1,000アンペア~300キロアンペアにもなるため、対策をしなければ大きな被害につながる可能性が高いです。
雷サージは、雷によって発生する異常な過電圧や過電流ですが、建物に直接落雷がなかったとしても発生する可能性があります。
通常、雷サージには直撃雷・誘導雷・逆流雷の3種類があります。
直撃雷は建物の避雷針やアンテナ、配電線などに雷が直撃することです。
この場合、小さな雷であっても100万ボルトを超える電圧になります。
誘導雷は建物や樹木などに落雷して放射された電磁界によって、周辺の配電線に電圧が誘導されることです。
直撃雷よりも電圧は低いですが、100m離れていたとしても10万ボルトの電圧が発生する恐れがあります。
逆流雷は山頂にある通信設備や放送設備等、電力供給を行う配電線で発生するもので、大地を経由して送電線に流れていくことです。
雷による被害の多くは、実は直撃雷よりも誘導雷や逆流雷だとされています。
たとえ落雷地点から離れていたとしても、雷サージの影響がマンションにまで及ぶ可能性は少なくないのです。
雷サージによる被害
雷サージが発生すると、以下のような被害が発生します。
・通信ケーブルの焼損
・パソコン本体や周辺機器のメイン基板の焼損
・家電製品の電源ケーブルの焼損
・集積回路の破損
雷で発生する高電圧が、アンテナ線や通信線などを通じてマンションの屋内に流れ込んだ場合、家電製品が破損してしまう恐れがあります。
特に近年は家庭で使用する家電製品は増加傾向にあり、様々な家電製品が電力線やケーブルなどの電線につながっています。
そのため、落雷によって被害に遭う可能性もより高まっているのです。
特に被害例として多いのがパソコンや周辺IT機器をはじめ、テレビなどのデジタル機器です。
半導体や基板などを使った繊細な構造のものは、高電圧の影響を受けると焼損が発生する可能性が高く、故障しやすくなります。
電力エネルギーを多く必要とするエアコンや電気ストーブ、照明機器などは壊れにくいとされていますが、故障しないとは限りません。
また、落雷が発生している時に室内にいれば、雷サージによる感電の危険性もあります。
雷サージ対策としてできること
対策としてできるのは、アース電位の調整や雷サージ防護デバイスの設置、絶縁トランスの設置などが挙げられます。
アース電位の調整
雷サージによる絶縁破壊は、その部分の電位差が非常に大きくなることで発生します。
そのため、電源アースや通信アース等、アース電位を同じレベルに調整しておくことで、アース電位がシステム全体で同等になるため、電位差が生じにくくなります。
事前にアース電位を調整しておけば、雷サージによる被害を最小限にできるでしょう。
サージ防護デバイスの設置
サージ防護デバイスは、その名のとおり雷サージによる被害を受けないようにするための保護機器です。
サージ防護デバイスを設置すれば、雷サージが発生しても逃げ道が作れるため、電子機器の故障を防げます。
ただし、電子機器によって雷エネルギーによる故障の度合いが異なるため、適切なものを選択しなければなりません。
絶縁トランスの設置
絶縁トランスは、電源線や通信線などに挿入することで雷サージのみを遮断するためのものです。
交流電流や通信信号は問題なく通るので、雷サージ対策として非常に有効なものになります。
サージ防護デバイスとともに活用することで、より雷サージを防ぐ効果が期待できます。
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入居者に伝えたい落雷対策について
雷によって甚大な被害を受けないようにするためにも、管理人や大家さんは落雷対策をマンションの入居者に伝える必要があります。
最後に、入居者に伝えるべき落雷対策についてご紹介します。
雷サージ対応の電源タップを活用する
電源タップは、雷サージに対応したものも多く販売されています。
雷サージ対応の電源タップには、過剰な電圧を吸収してくれる保護機能が付いています。
パソコン周辺やスマホの充電機器、テレビ周辺など、家電に応じて適したものが販売されているので、適切なものを使用してください。
ただし、一度でも過電圧を吸収した場合は保護機能が失われてしまうため、定期的に交換できるよう準備しておくと安心です。
家電製品にアース線を付ける
冷蔵庫やテレビ、電子レンジ、洗濯機、エアコンなどの大型家電については、アース線を付けておきましょう。
アース線を付ければ、過電流があってもアース線を通じて電流を外へ逃がすことができます。
雷サージなどの異常電圧による故障を防ぐためにも、アース線は取り付けておいてください。
使用しない電源プラグは抜いておく
異常電圧による故障は、当然ながら電源プラグがつながっている家電のみに影響があります。
電源を入れていなかったとしても、電源プラグがつながっていれば雷サージによる被害を受ける可能性があります。
そのため、普段使用しない電化製品については、できるだけ電源プラグを抜いておくようにしましょう。
電力使用量の高い電化製品を優先して抜いておくとより効果的です。
データのバックアップを取る
パソコンやスマホなどの精密機器は、雷サージの影響を受ける可能性が高いです。
万が一雷サージが発生すれば、大切に保存していたデータが消えてしまう可能性もあります。
保存しているデータを守るためにも、日頃からバックアップを取っておきましょう。
オンラインストレージサービスを利用すれば、仮に落雷の影響を受けても影響は少なくなります。
雷が近付いてきたら家電や水回りから離れる
雷の音が鳴っている時には、家電や水回りなどから離れてください。
雷サージは、いつどこに侵入してくるか予測できません。
電話やLANなどケーブルが集まるところや、充電機器の近くは特に危険です。
また、雷は水道管を通じて侵入する場合もあるので、家電製品だけでなく水回りからも離れておくと安心です。
どうしても家電に触らなければならない場合は、電気を通さないゴム手袋などで対策を徹底しましょう。
ランタンやモバイルバッテリーを準備しておく
急な停電時に備えて、懐中電灯やランタン、モバイルバッテリーを用意しておくと安心です。
普段から災害対策として準備している方も多いですが、部屋全体を明るく照らしたり、お手洗いや入浴時にも持ち運んだりでき非常に便利です。
また、モバイルバッテリーがあると、電化製品への給電ができるため、スマホやパソコンなどだけでなく、電気ケトルや扇風機なども動かせます。
このほか、寒さ対策や飲料水なども準備しておきましょう。
今回は、避雷針の原理や仕組み、種類、設置費用などのほか、マンションの落雷リスクや対策などについて解説してきました。
避雷針はマンションなど、大きな建物を落雷の被害から守るために非常に重要な役割を持っています。
しかし、マンションに避雷針を設置していたとしても、雷サージの影響を受ける可能性があるため、入居者にも落雷対策をするよう呼びかける必要があります。
雷による影響を最小限に留めるため、避雷針の定期的な点検や対策を徹底するようにしましょう。