マンションやビル、ホテルや学校などの大きな建物の場合、防火設備の1つである防火扉を見かけたことはありませんか?
防火扉は、火災を広めないために必要な設備ですが、マンションにおける設置基準や点検内容などを知らない方もいるでしょう。
そこで今回は、マンションに設置する防火扉の特徴や基準、点検の必要性などについて解説していきます。
マンションの防火扉について知りたい方は、参考にしてみてください。
Contents
防火扉とは?
防火扉は、防災機能を備えた扉のことです。
主に火災発生時の被害拡大防止、延焼防止などを目的に設置されています。
ここでは、防火扉の特徴や防火区画、扉の種類について解説します。
防火扉の特徴
防火扉は、防災性能を持つ扉のことです。
防火扉・防火ドアという呼び名は通称であり、建築基準法では「防火戸」と呼ばれています。
防火扉は2000年の建築基準法改正により、防火設備と特定防火設備というものに分けられました。
防火設備に該当するのは、今まで乙種防火戸になっていたものです。
外壁の開口部や防火区画の一部に使用されていた、網入りガラスや袖壁などの設備であり、主に隣接した建物からの延焼リスクを回避するために設置されています。
さらに、20分以上炎を通さないという特徴があるものが該当します。
もう一方の特定防火設備は、今まで甲種防火戸になっていたものです。
防火壁や防火区画の開口部、外壁、避難階段の出入り口などに使用されている防火扉・防火シャッターなどが該当します。
特定防火設備は、1時間遮炎時間を持っているのが大きな特徴です。
防火区画は4つに分かれる
防火区画に関しては、面積区画・高層区画・堅穴区画・異種用途区画の4つに分かれます。
・面積区画
面積区画の対象になるのは、準耐火建築物、主要構造が耐火構造となっている建築物が対象です。
壁と床は耐火構造、開口部は特定防火設備にしておかなければなりません。
大規模な火災拡大を防ぐことを目的に、一定の面積で分けた区画を面積区画と呼びます。
耐火建築物なら1,500㎡以内の区画になります。
・高層区画
高層区画の対象になるのは、11階以上の高層階で区画が耐火構造、防災設備、特定防火設備になるものが対象です。
高層区画は、はしご車での消火がしにくいことから火災が起こった時にデメリットに感じるかもしれません。
そのためにも、火災拡大を抑える区画となっているのです。
床と壁には耐火構造、開口部には、特定防火設備の設置が必要です。
・堅穴区画
堅穴区画の対象になるのは、階段や吹き抜けから縦に向かって延焼しないように防ぐ区画です。
階段やエレベーター、吹き抜けなどが当てはまります。
地下または3階以上の階に居室を設けている建物が適用となります。
主要構造部分は準耐火構造以上となり、壁と床は45分の準耐火構造、開口部は遮炎性能を設けている防火設備が必須です。
・異種用途区画
異種用途区画の対象になるのは、一定の規模以上の共同住宅、集会場、駐車場などです。
建物の一部が建築基準法27条に当てはまる建築物が対象であり、共同住宅の中に飲食店などが入っている場合が該当となります。
ただし、同一事業者が管理するなど、決められた条件を満たしている場合は緩和されます。
基本的な異種用途区画は、壁と床が1時間の準耐火構造であり、開口部は遮炎性能を持った特定防火設備でなければなりません。
常時閉鎖式・随時閉鎖式の違い
常時閉鎖式は、通常時は閉まっている防火扉のことです。
ドアクローザーの設置により、通行する際に扉を開けても手を放してしまえば自動的に扉が閉まります。
大きさは、3㎡以内という制限も定められています。
一方の随時閉鎖式では、通常時開放されている防火扉のことです。
煙や熱を感知すると、扉が閉まって燃え広がらないようにする仕組みです。
随時閉鎖式の防火扉にはサイズの制限はないものの、避難通路に置く時は一部をくぐり戸にしなければなりません。
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防火扉の特徴は?
そもそも、防火扉とはどのような条件や決まりがあるのでしょうか?
防火扉という名前が付いていることからもわかるように、性能として注目したいポイントは遮炎時間です。
遮炎時間は保有遮炎時間と呼ばれる場合もあり、炎を遮る時間がどれくらい継続するかを意味しています。
特定防火設備(旧甲種防火戸)における防火扉
そもそも防火扉は、防火区画ごとに設置する種類が異なります。
特定防火設備の場合は、面積の区画・一部高層区画・異種用途区画の開口部へ設置されます。
一部高層区画に関しては一定の条件を満たす200㎡以内、もしくは500㎡以内の区画です。
特定防火設備の場合は、遮炎が1時間継続する性能を持つ扉となります。
この扉は、火災が屋内で発生した際に延焼を防ぐ役割を持ち、防火区画における開口部に置かれます。
特定防火設備の防火扉ですが、常時閉鎖式、または火災などの急激な温度変化、煙などの感知や温度の上昇によって、自動的に閉鎖される必要あります。
非常用エレベーター、乗車ロビー、避難階段の出入り口、異業種用途区画など、特に安全性を加味しなくてはいけない場所には遮炎性能も加えると安心です。
この特定防火設備の防火扉では、扉両面における遮炎性能が60分であり、これを満たす材料と厚さにも関係があります。
鉄製の扉の場合、鉄板の厚さは1.5mm以上です。
鉄骨コンクリートや鉄筋コンクリート製では35mm以上となります。
防火設備(旧乙種防火戸)における防火扉
続いて、防火設備(旧乙種防火戸)についても見ていきましょう。
防火設備(旧乙種防火戸)は、火災が起きてしまった時に炎の拡大を抑える設備です。
国土交通大臣認定を受けたものや、告示に規定されているものがあります。
基本的に閉鎖状態になっていて、煙や人を感知することで有効に遮るものであり、遮炎は扉の片面で20分のものが該当します。
この防火設備の防火扉は、一部の高層区画、竪穴区画に設置されることが多いです。
竪穴区画は、主要な構造部が準耐火構造以上、地下もしくは3階以上に部屋があるメゾネットタイプや階段、吹き抜けなどの部分が該当します。
一部の高層区画は、100㎡以内で区画された高層区画となります。
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防火扉の設置基準を知ろう!
火災から守ってくれる防火扉ですが、これには設置基準があります。
どのような基準が決められているのでしょうか?
外壁部の設置基準
火災が周囲で起こった場合、延焼リスクがある外壁の開口部には両面20分耐えられる遮炎性能か、片面20分耐えられる準遮炎性能が必要です。
延焼リスクがある部分に当てはまるのは、隣地境界線、道路中央線から1階部分なら3m以下、2階なら5m以下の距離にある箇所です。
耐火建築物または準耐火建築物の外壁開口部の防火設備には、両面に20分耐えられる遮炎性能が求められます。
耐火建築物は熱に耐えられる構造となる建物のことで、火災が収まるまで耐えられる、もしくは建物の周辺で起こった火災に耐えられるのが条件です。
準耐火建築物は上記で説明した耐火建築物に該当しない建物ですが、火災による延焼を抑制できるものを言います。
面積区画の設置基準
防火扉の設置に関しては、面積でも関係してきます。
それは、一定以上の広さのある建物では、火災が起こると被害も大きくなるからです。
例えば、大規模な商業施設などが集中している地域で火災が起こった場合、大惨事になる可能性が非常に高いです。
このような地域で火災の被害を最小限にするためには、防火扉などの設備で区分分けすることが重要です。
また、建物の構造制限によって防火機能を高めるために都市計画が定められた「防災地域」や、防災地域と同様に火災を拡大させないことを目的にした「準防火地域」もあります。
これらは防火区画の異なる条件に合わせて設置しなければなりません。
面積区画の場合、建物の構造や広さによって違いがあり、耐火構造もしくは準耐火構造で延べ面積1,500㎡以上の建物なら原則として床面積1,500㎡以内ごとに防火扉を使って区切る必要があります。
11階建てなどの高層階の場合、消火活動や救助活動が困難になるため、これより狭い床面積で区切って防火扉を設置します。
避難階段・特別避難階段の設置基準
避難階段、特別避難階段は、火災発生時の避難経路になります。
避難階段は、地下2階以下、地上5階以上の階に通じる直通階段が該当します。
特別避難階段は、地下3階以下または地上15階以上のフロアに通じる直通階段のことです。
これらの階段は、通常の階段と比べて有事の際に渋滞する時間が長くなる傾向にあり、安全を確保するためにも防火設備で延焼を防がなければなりません。
そのため、避難階段の出入り口には、常時閉鎖式もしくは煙感知器と連動した自動閉鎖式の遮炎性能を兼ね備えた防火扉が必要です。
これにより、階段に煙や炎が入らないようにしつつ、安全に避難できるようにします。
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防火扉の設置が必要な「防火地域・準防火地域」とは
防火扉は、該当する建物以外は設置しなくても問題ないと思われがちです。
また、火災により用心したい場合に用いれば問題ないと思うかもしれません。
しかし、都市計画法では準防火地域や防災地域に含まれている地域に建物を持つ場合は、決められた防災条件を満たさなければなりません。
防火地域・準防火地域がどこなのか、詳しい建築制限や調査方法について解説していきます。
防火地域・準防火地域とは?
防火地域・準防火地域とはどのような地域なのでしょうか?
名前を初めて聞く方も多いかもしれませんが、これらの地域は都市計画法で「市街地における火災の危険を防除するための定める地域」に決められているところが該当します。
火災の危険を防いだり取り除いたりする地域は全国的にありますが、主に駅前の建物が密集している地域、幹線道路周辺などに指定されていることが多いです。
これは建物が密集しているため、火災によって延焼しないように防ぐこと、そして幹線道路は火災の時に消防車などの緊急車両の通行などを妨げないようにすることが目的となっているためです。
東京都では、新たな防火規制区域も制定されているなど、地域によって制限や区域は異なります。
住宅の多い地域、幹線道路の周辺に建物を建てる場合は、防火地域に指定されているかどうかを確認しておくと安心です。
各地域の建築制限
同じ建築に関しての制限はあるものの、制限の厳しさにもランクがあります。
ここでは、各地域の建築制限についてみていきましょう。
・防火地域の建築制限
最も厳しく建築制限されているのが防火地域です。
防火地域では、3階以上の建物で延床面積が100㎡以下でも100㎡以上でも耐火建築物に該当します。
1~2階の建物では、延床面積が100㎡以下なら耐火建築物もしくは準耐火建築物です。
・新たな防火規制区域の建築制限
防火地域の次に基準が厳しいのが新たな防火規制区域です。
この場合、4階以上の建物なら500㎡以下でも1,500㎡以上でも耐火建築物となります。
1~3階の建物で500㎡以下なら準耐火建築物です。
・準防火地域の建築制限
準防火地域の建築制限では、4階以上の建物なら500㎡以下でも1,500㎡以上でも耐火建築物です。
3階の建物で500㎡以下の場合は、耐火建築物、準耐火建築物、一定の技術基準に適合となりますが、500㎡以上1,500㎡以下なら耐火建築物、準耐火建築物のいずれかに変わります。
1~2階の建物の場合、500㎡以下で木造建築なら外壁、軒裏、開口部に一定の防火措置を取らなければなりません。
500㎡以上1,500㎡以下なら3階の建物同様、耐火建築物、準耐火建築物になります。
・法22条区域
法22条区域は、外壁に防火性能のある材料、屋根の部分を燃えにくい不燃材料にする必要があります。
防火地域・準防火地域の調べ方
防火地域・準防火地域は役所で調べられますが、不動産会社や建築家、施工会社などを通じて依頼することも可能です。
インターネットでこれらの地域を検索し、防火地域に該当しているかなど都市計画図の閲覧もできます。
東京都の場合、比較的新しい条例があったり、翌年に変更されていたりするケースもあるので、最新の情報かどうかを確認してみてください。
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防火扉も消防点検は必要?
防火扉は、6ヶ月に1回の機器点検や年に1回の総合点検といった消防設備点検や、防火設備定期検査などが必要とされています。
ここでは、点検時にチェックされる項目や定期点検にかかる費用について解説します。
共同住宅の消防点検は義務付けられている
防火扉の役割は、建物内で火災が発生した場合、炎や煙を一定区画で食い止めるためのものです。
そのため、賃貸物件や共同住宅など建物を管理する上では、万が一の時でも正常に機能するよう、定期的な点検をしなければなりません。
消防法第17条3の3によると、防火対象物の関係者に点検義務があると定められており、関係者については防火対象物または消防対象物の所有者・管理者・占有者となっています。
つまり、賃貸物件のオーナーや管理担当者などは、消防設備点検や防火設備定期検査を行う義務があるということです。
具体的には150㎡以上のアパートやマンションなどの共同住宅では、6ヶ月に1回・1年に1回・3年に1回の点検を実施し、管轄の市町村の消防署長に報告義務があり、怠ると罰則されることになっています。
消防点検を行えるのは、消防設備士または消防設備点検資格者です。
しかし、面積が1,000㎡未満のアパートやマンションの場合、資格のない所有者や管理担当者が点検するのも問題ありません。
ただオーナーが自ら行っているケースは少なく、ほとんどの場合有資格者による点検を行っています。
点検時にチェックされること
消防設備点検や防火設備定期検査では、防火扉以外にも消火器や自動火災通知設備、避難器具・誘導灯・非常警報設備・連結送水管など、様々な設備が点検されます。
このうち、防火扉は開閉動作や損傷の有無などを確認することになります。
まずは防火扉周辺で防火扉付近に物が置かれていないか、正常に作動できるかの確認が必要です。
防火扉のすぐ近くに物が放置されていると、正常に開閉できず死傷者が増えてしまう恐れがあります。
続いて、扉の取り付け状態を確認します。
扉や枠、金具などの細かな部分に損傷がないか確認することで、問題なく使用できるか判断するのです。
最後に、危険防止機能の確認を行います。
防火扉は、閉鎖作動時に周囲の人々に危害が及ばないよう、正常に働くかどうかが非常に重要になります。
防火扉の重量・閉鎖スピード・運動エネルギーが一定基準以下になっているかどうか確認した上で、防火戸に挟まれた時の押し付ける力が一定基準になっているかの検査も必要です。
定期点検の通知が届いたら?
検査時期になると、特定行政庁より建物の所有者や管理者に消防点検の通知が届きます。
検査通知書が届いたら早めに検査会社を探し、検査を行わなければなりません。
中には検査時期になっても通知が届かないといった場合があります。
しかし、消防点検が義務であることには変わりはないため、検査時期になったら必ず検査するようにしましょう。
通知が届いた後は、まず検査会社を探します。
消防点検は、事故や災害を防ぐためにも、防設備士もしくは消防設備点検資格者の資格を保有し、資格豊富な経験を持つ検査会社に依頼しましょう。
年間200件以上、従業員数が20名以上、検査後の追加料金が発生しないところがおすすめです。
検査会社を探したら、検査に向けて書類の準備を行います。
初回の検査の場合は、検査日の1週間前までに、確認済証・検査済証・建築平面図・設備図面・面積記載図・消防設備点検報告書を準備します。
2回目以降は、前回の報告書・平面図・消防設備点検報告書の準備が必要です。
消防検査から市町村の消防署長に報告書を提出するのは、1ヶ月以内に行わなければなりません。
報告書の作成は、検査後に検査会社が1週間程度で行ってくれます。
報告書が郵送されてきたら、建物の所有者もしくは管理者の印を押し、検査会社宛てに返送します。
検査日から3ヶ月を経過した場合、再検査が必要になるため、報告書が届いたら早めに印を押して返送するようにしましょう。
押印された報告書が返送されると、検査会社で特定行政庁へ報告書を提出します。
その後、2ヶ月程で報告書の副本が特定行政庁から検査会社に返送される流れです。
防火設備の定期点検はいくらかかる?
防火扉をはじめとする防火設備の定期点検は、建物の延床面積によって費用が異なります。
例えば、東京都23区内での消防設備点検費用は、以下のようになります。
・延床面積~1,000㎡未満:3万円
・延床面積~2,000㎡未満:3万5,000円
・延床面積2,001㎡~:要見積もり
中には、延床面積が3,000㎡を超えた場合に別途見積もりが必要になるところもあるので、検査会社に確認が必要です。
上記費用には消火器や避難器具・誘導灯・連結送水管などの点検費用も含まれています。
設備ごとの検査費用で見ると、防火扉は1ヶ所あたり3,000円程が目安です。
また、消防点検は設備がどれくらいあるかによって費用に幅が出てきます。
10戸未満なのか、20戸以上あるのかによっても消防設備の数は異なります。
消防点検の際は、アパートやマンションの部屋に入らないと行えない場合もあるので、入居者に事前に通達しておかなければなりません。
入居者が立ち会えない場合、代わりにオーナーや管理会社が立ち会う必要があるため、よく確認しておきましょう。
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防火扉の使い方によっては消防法に違反する可能性も
建物を安全に管理する上で、防火扉は必要不可欠なものでもあります。
防火扉は建築基準法で設置する必要がありますが、使い方によっては消防法に違反する可能性があります。
例えば、防火扉にドアストッパーを挟んで開放し、荷物を搬入している場合や、防火扉周辺に荷物を置いている場合などです。
防火扉は火災が発生した時に扉を閉めることで延焼を防ぐためのものです。
そのため、開放したままの状態にしたり、開閉の妨げになるものが置かれていたりするのは違反になってしまいます。
実際に、2001年には東京都新宿区で雑居ビル火災が発生し、44人の命が失われました。
この雑居ビルは延床面積が516㎡という狭い敷地で、地上4階・地下2階立ての建物でした。
出火は3階のエレベーター付近で、上の階へと延焼が拡大し、一酸化炭素が十万したことで多くの命が失われた甚大な被害となっています。
当時、防火扉の周辺には使用していない備品やゴミなどが置かれていたほか、開放されたままの状態だったため、防火扉が正常に作動していなかったことがわかっています。
仮に防火扉を正常に作動させていれば、被害を食い止めることもできたかもしれません。
消防法に違反したことで、甚大な被害につながるケースが少なくありません。
防火扉を開放したままにしない・周辺に荷物を置かないなど、万が一のことがあってもすぐに対処できるような状態にしておく必要があります。
また、国土交通省が作成した「マンション標準管理規約」によれば、アパートやマンションのオーナーや管理者は、必要があれば専有部分の立ち入りを請求できるということや、入居者はそれを拒否してはならないことなどが記載されています。
賃貸物件によって管理規約に違いはありますが、国土交通省のマンション標準管理規約に則って、入居者が不在の場合でも立ち入って点検する場合があるという旨を記載しておくことは可能です。
仮に入居者が立ち入りを拒否した場合、後に火災が発生し、損害が生じた場合は入居者に賠償責任を問うことも可能になります。
基本的には入居者に理解を得るのが大切ですが、管理規約に盛り込んでおくとルール化しやすくなるでしょう。
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防火設備以外にも!その他の防災設備もチェックしよう
防災設備は、防火扉のような防火設備だけではありません。
防災設備には、消火設備や警報設備、避難設備、防排煙設備などの種類があります。
これらはすべて災害から身を守るための重要な役割があります。
ここでは、防災設備の種類や役割をご紹介しましょう。
消火設備
消火設備は、火災が発生した際に建物の延焼を防ぐための設備です。
消防隊が到着するまでの間に炎を抑えられるものでもあります。
消火設備には、屋内消火栓設備や屋外消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、不活性ガス消火設備、粉末消火設備、動力消防ポンプ設備、ハロゲン化物消火設備などがあります。
それぞれ技術上の規格が消防庁告示により定められているので、設置の際は確認が必要です。
中でも消火栓設備は屋内・屋外ともに設置でき、消火器では消火しきれない段階でも対処できる設備です。
放水量や有効射程が大きく、消化能力も高くなっています。
また、スプリンクラー設備や水噴霧消火設備はヘッドから散水することで、自動で消火する設備です。
粉末薬剤や泡を使用して消火するものや、不活性ガスを使用するもの、ハロゲン化物を使用するものなど、様々な方法で建物の延焼を防ぎます。
アパートやマンションの場合、自動火災報知設備や非常警報設備、屋内消火栓、スプリンクラー設備などが設置されるケースが多いです。
警報設備
警報設備は、火災が発生した際やガス漏れが発生した際に検知し、建物内部にいる人々に知らせるための設備です。
警報設備には自動火災報知設備や手動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備、漏電火災警報設備、非常警報、消防へ通報する火災報知設備などがあります。
すべて消防法で定められている通報設備で、通報はもちろん感知して警報を鳴らすために必要不可欠なものです。
中でも火災報知設備は自動のものと手動のものがあり、非常ベルを鳴らして火事を知らせ、火災地区ランプを表示させてどこで火災が発生したのかを知らせる役割があります。
漏電やガス漏れに関しては、事前に発生を感知して知らせる必要があります。
火災報知設備は、室内の気温が急激に上がった場合に作動する差動式と、室内の温度が一定になった時に作動する定温式があり、設置場所に違いがあるのが特徴です。
差動式は様々な場所に対応していますが、定温式はキッチンやボイラー室など、温度変化しやすいところに設置されます。
避難設備
避難設備は、火事や地震など、何らかの災害が発生した時に避難するための機械器具・設備を言います。
避難設備は避難器具と誘導灯・標識に分けられています。
避難器具は避難階段がなく避難できない時に使われるもので、応急的・補足的な手段として用いられるのが特徴です。
例えば、避難ロープや避難はしご、すべり台、すべり棒、避難タラップ、緩降機・救助袋などがあります。
アパートやマンションでは、避難はしごやすべり台などが設置されることが多いので、実際に設置しているという方もいるかもしれません。
誘導灯・標識は、非常口の場所や避難する方向を示す目的で用いられます。
照明装置がある誘導灯と照明装置のない標識があり、誰にでもすぐに識別できるようなものであることが原則となっています。
誘導灯や標識には、いずれも避難口を示す記号や避難する方向への矢印、「非常口」という記載で構成されることが法令で決まっており、緑色の色彩が特徴です。
誘導灯は災害による停電時でも対応できるよう非常電源が備えられており、非常時でもすぐに点灯させることが可能です。
防排煙設備
防排煙設備は、火災によって煙が広がるのを防ぐため、煙を排出させる設備のことです。
火災で亡くなる人の死因では、煙による窒息死が約8割を占めると言われており、防排煙設備の設置が重要とされています。
防火戸や防火シャッター、垂れ壁、排煙口などが挙げられますが、防排煙設備には自然排煙設備と機械排煙設備があります。
自然排煙設備は、建物の天井付近に設置された窓のことで、火災時に窓を開放して煙を排出させるための設備です。
機械排煙設備は、天井面に吸い込み口がある換気扇のようなもので、機械で煙を吸い込み、外部へと排出させる設備です。
排煙口は床面積500㎡ごとに防煙壁で区画した後、区画ごとに天井もしくは天井から80cm以内に設置すること、防煙区画それぞれから水平距離が30cm以内であることが求められています。
そのほか、自然排煙設備と機械排煙設備とで設置基準に違いがあるため、よく確認しておく必要があります。
アパートやマンションのような共同住宅において、防火扉の設置が必要になる場合があり、外壁部や、面積区画、避難階段などによって設置基準も異なります。
防火扉を設置する場合、消防法によって定期的な点検を行うことが義務付けられているほか、使い方を間違えてしまうと消防法違反になる恐れもあります。
防火扉は、設置基準や使い方などをしっかりと確認した上で設置しましょう。
また、防火扉のような防火設備だけでなく防災設備についても改めて理解し、入居者に安心してもらえるよう努めることが大切です。