マンションでも消防訓練を実施すべき?重要性や法律、実施する流れを解説

マンションでの消防訓練に重要性を感じない方は多いのではないでしょうか。
実は、消防訓練に力を入れているマンションはかなり少ないと考えられています。
しかし、大家さんには消防訓練を実施する義務があるため、定期的に消防訓練を行わなければなりません。
とはいえ、居住者のモチベーションが低かったり、参加者が集まらなかったりすると大家さん自身のモチベーションも下がってしまうのは事実です。
今回は、マンションで消防訓練を行う重要性やマンションで消防訓練が行われない背景、参加者を増やすためのポイントなどをご紹介します。
飽きない消防訓練を実施したいという方もぜひ最後までご覧ください。

マンションで消防訓練を行う重要性

消防訓練

マンションの大家さんは、もしも火災が起こった場合、居住者が適切に行動できるように備えておく必要があります。
その理由は、マンションの大家さんには防火管理者として、消防訓練を行うという法律上の義務があるからです。
とはいえ、消防訓練を行っていないという理由で即座に罰せられることはありません。
罰せられる可能性があるのは、火災事故や災害が発生した時です。
火災が発生した時、居住者が被害に遭うと、消防訓練を実施していたかどうかの調査が行われます。
その時、消防訓練が実施されていなかったことが被害に遭った原因の1つとして判断されてしまうと、刑事罰を受ける可能性が出てくるのです。

マンションでの火災は、ニュースなどで見る機会が少ないこともあり、消防訓練の重要性が分かりづらいという大家さんは多いです。
しかし、消防庁が掲載している2022年のデータを見ると、総出火件数35,222件のうち、マンションなどの建物で起きた火災は19,549件となっており、55%以上であることが分かります。
10年前と比べるとかなり減っており減少傾向にあるものの、近年はあまり数値が変わっていません。
マンション火災の中でも、高層階が出火元となる火災が多いです。
高層階で火災が起きると、居住者が避難しにくくなり、逃げ遅れてしまう可能性も高いです。
高層マンションの場合、消防訓練は特に重要性が高いと言えるでしょう。

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マンションで消防訓練が行われない背景

消防訓練

消防訓練を行っていないマンションが多い理由としては、「戸数が多く居住者も多種多様であることから、訓練の内容や避難の仕方などがマンション全体に浸透しづらい」ことが挙げられます。
例え消防訓練に意欲的な人が力を合わせて積極的に取り組んだとしても、その他居住者のモチベーションが低ければ、全体の意識を上げることはできません。
その結果、意欲的な人のモチベーションも下がり、消防訓練に力が入らなくなるのです。
そんな状況を抜け出すためには、以下のような工夫が必要になります。

・防災委員会を立ち上げる
消防訓練は、居住者にとって身近なものになることによって、積極的な参加が叶うケースがあります。
防災委員会を立ち上げ、委員たちが実際に防災訓練を行っている姿を定期的に見せることで、居住者にも取り組んでもらおうという考え方です。
適切な動きを見てもらうことによって、参加しやすくなる・重要性を理解してもらえることが分かっています。

・コミュニティ形成スキルに特化した人がリードする
コミュニティ形成スキルに特化した人がリードするというのも1つの方法です。
消防訓練だけでなく、多角的な視点からコミュニティを形成していくため、より多くの居住者に参加してもらえるようになるのです。
中にはコミュニティ形成のプロを入れて、消防訓練に参加してもらうための工夫を施しているマンションもあります。

・お金をかける
消防のマニュアル作りをコンサルタントに依頼したり、プロのファシリテーターに依頼したりと、お金をかけることも消防訓練に参加してもらうための工夫です。
消防活動を本格的に行い、マンション全体に浸透させるには、お金をかけることも視野に入れなければなりません。

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マンションの消防訓練に参加しない理由

消防訓練

消防訓練自体を実施していないマンションもありますが、実施していても不参加の居住者がいることは多いです。
その理由にはどのようなものがあるのでしょうか。

わざわざ予定を空けたくない

火災のリスクを把握していない、危機感が低いという方も少なくありません。
予定を空けてまで参加するメリットがないと思っている方がほとんどであるため、工夫をしない限り参加は見込めないでしょう。

毎回同じ訓練だから

訓練の内容が同じであることから、参加に積極的でなくなったという方も多いです。
内容が同じだと、何度も参加する意味がないように思えるのかもしれません。

このような理由であれば、訓練の方法を変えたり、外部の人を呼んだりすることで解決する可能性が高いでしょう。

訓練があることを知らなかった

訓練を実施していることが知られていないというのも理由の1つです。
張り紙などによる告知だけでは不十分である他、若い層であれば、回覧板の情報に関心がないことが多いことから、訓練の実施日が伝わりにくいのかもしれません。

このように、訓練実施日の告知方法を変えることで解決できる問題もあります。

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マンションで火災が発生した場合のリスク

消防訓練

一般的なマンションは、防火性能が高い耐火構造物で、燃え広がらないような工夫が施されています。
とはいえ、火災の6割が耐火構造物で起きていることから、安心材料としては弱いというのが事実です。
どれだけ耐火性能が高くても、場合によっては火元以外の部屋も全焼してしまう可能性があります。
実際に火災が発生した時のリスクを知っておくことによって、訓練の重要性も理解しやすくなるでしょう。
ここからは、マンションで火災が発生した場合のリスクについて詳しく見ていきます。
以下のようなリスクについても居住者へ説明しておくことによって、参加者の人数を増やせるかもしれません。

・逃げ遅れてしまう
火災が発生すると、エレベーターの停止やパニックによって逃げ遅れてしまう居住者が出てくる可能性があります。
階段から非難するにしても、居住者が多いことによって逃げ遅れてしまうケースもあります。
逃げ遅れてしまった場合は、はしご車で救助が行われますが、35m以上の階には届きません。
そのため、一般的なビル・マンションの11階よりも上の階の救助は難しくなってしまうのです。
低層階でも逃げ遅れのリスクはありますが、高層階は逃げ遅れのリスクがさらに高まります。
高層マンションの火災「グレンフェル・タワー火災」では、70人の死者が出ました。
このように多くの被害者を出さないためにも、日頃から消防訓練を行うことは欠かせません。

・一酸化炭素中毒になる
マンションでは、炎よりも煙が危険と言われることが多いです。
その理由は、防火区画が整備されていること、スプリンクラーが設置されていること、防炎物品の使用が義務付けられていることなどから、延焼の可能性が低い点にあります。
延焼は止められたとしても、煙を止めることはできません。
煙には一酸化炭素が含まれており、少し吸い込んだだけでも意識を失うおそれのある有毒ガスであるため、逃げ遅れの原因にもなり得ます。

・部屋が全焼する
マンションは壁が燃えづらいことから、全焼する可能性は低いと考えている方は多いでしょう。
しかし、床材や家具、壁紙といった燃えやすい物も多くあるため、火元の部屋が全焼するリスクは少なからず存在します。
マンションの優れた耐火性と消防拠点が点在していることから、火元以外の部屋が被害に遭うことは少なくなっています。

・水損する
消火活動によって全水損するリスクもあります。
これは、火元の部屋だけでなく、隣接する部屋でも起こり得ることです。
復旧が困難で住めなくなってしまうというケースもあります。
部屋の窓を閉めてから避難すれば全水損を防げるかもしれませんが、窓を閉めるという行為が逃げ遅れの原因になってしまう可能性があるため注意が必要です。

・燃え広がる
法律によって様々なことが義務付けられていることから、延焼するリスクは低いとご紹介しました。
しかし、ベランダやバルコニー、廊下から火が燃え広がるリスクはあります。
ベランダやバルコニーに干されている洗濯物、灯油のポリタンクなどに引火することによって、大規模な火災に発展することがあるのです。
風向きや季節も延焼に影響する可能性があり、場合によっては短時間で燃え広がるケースもあります。

・損害賠償の請求ができない
火元に重大な過失がある場合を除いて、損害賠償の請求はできないことになっています。
火災保険に入っていても、マンションが加入している火災保険で補償が受けられるのは「共用部分」のみとなっています。
居住者のいる部屋の補償を受けるためには、居住者自身が火災保険に加入していなければならないのです。
契約締結の条件に火災保険の加入が入っているかどうか、今一度確認してみましょう。

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訓練の種類

消防訓練

では、実際行う訓練にはどんなものがあるのでしょうか。
消防訓練の種類は、マンション内でできるものから、消防署でできるものまで様々です。
1つずつ詳しく見ていきましょう。

消火訓練

消化器や屋内消火栓などの使い方を学びます。
実際に放射訓練を行うことも可能で、マンション内で放射訓練ができない場合は、消防署にて放射訓練ができます。

避難訓練

避難訓練の種類は大きく分けて4つあります。

基本編

出口や階段の方向を示す「通路誘導灯」通りに進み、出口や階段の付近に設置されている「避難口誘導灯」から避難する訓練です。
避難経路を知っておくことで、万が一の時にスムーズに避難できるようになります。

避難経路は1つだけではなく、2つ以上の方法を把握しておくことでイレギュラーにも対応しやすくなります。
曲がり角、階段、出入り口、エレベーター前には、避難誘導員を配置し、冷静に指示できるように訓練しておくことも大切です。
また避難訓練では、万が一火災が起こった時パニックにならないよう、火災が起こった時の心理行動を知れるような工夫が必要です。

避難経路編

マンションの共用部分に物を置くリスクについても伝えられるとベストです。
特に階段や通路、防火戸が居住者の私物で塞がっていると、危険なだけでなく、避難の妨げになります。
避難経路の維持、管理の重要性をマンション全体が理解できるように工夫しましょう。

避難はしご編

基本的には階段からの避難をメインとし、避難器具は補助的な役割として認識してもらえるようにします。
その上で、避難はしごでの避難もできるように訓練していきましょう。
使い方の確認はもちろん、物を置いていないかなどのチェックも欠かせません。

はしごには、「吊り下げはしご」や「救助袋」、「固定はしご」といった種類があるため、どのタイプが設置されているか把握しておくことも大切です。

緩降機編

高い所からも安全に降りられる緩降機についても、避難時スムーズに使用するためには訓練が必須になります。
避難訓練の中でも危険な訓練となるため、実施する時は専門家を呼んだり安全管理を徹底したりするのが大切です。

火災が起きた時は装着できませんが、ヘルメットや手袋があるとより安全に訓練できます。

通報・伝達訓練

通報・伝達訓練では、119番へ通報する方法や非常ベルの使い方などを学びます。
携帯電話だけでなく、eメール119番やFAX119番といったサービスがあることも伝えておくと良いでしょう。

eメール119番やFAX119番は、聴覚や言語機能に障がいがある、病気で話せないといった通報が困難な方を対象としています。
多種多様な居住者が存在するマンションでは、このような情報も万が一のことが起こった時の手助けになる可能性があります。
特に火災では、「誰かが通報したはず」と考えてしまう方が出てきてしまうのです。
そういったことを避けるためにも、通報の重要性をしっかりと伝えましょう。

応急救護訓練

三角巾やAED(自動体外式除細動器)の使い方、怪我人の搬送方法などを学びます。
通報後、救急車などで助けがくるものの、応急救護によって怪我の悪化を防ぐことができます。

被害を最小限に抑えるためにも重要な訓練であることを伝えられると良いでしょう。

総合訓練

総合訓練では、上記でご紹介した訓練を通して行います。
通報・伝達から応急救護までの一連の流れをまとめ、万が一の時にスムーズに避難できるようにしておきましょう。

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消防訓練を実施する際の流れ

消防訓練

マンションで消防訓練を実施しようと考えた時、どのような流れで進めていくべきなのか迷ってしまう大家さんもいるでしょう。
特に大家さんになりたての方だと、どうすべきなのか戸惑ってしまう可能性が高いです。
続いては、消防訓練を実施する際の具体的な流れについて解説していきます。

計画を立案する

消防訓練を行うなら、まずは計画を立てなければいけません。
消防訓練を実施する時期や訓練内容などが書かれている書類が「消防計画」です。
この書類は、防火管理に関して書かれているもので、消防署に届出しています。
したがって、計画を立案する時は消防計画に書かれている時期から大幅にずれないようにしなければいけません。

基本的には、過去の実施状況や消防計画に基づいて、計画を立てることになります。
実施する数ヶ月前に理事会や自治会の会合で相談し、詳しい日程や役割分担を決めるケースが多いです。
消防署に協力を要請するのであれば、候補日を複数決めておくのがおすすめです。
特に9月は、消防訓練を行う自治会が多く見られるため、希望日に対応してもらえない可能性が高くなっています。

消防署へのアポ取りや書類の提出を行う

計画が立ったら、消防署へのアポ取りや書類の提出を行いましょう。
消防訓練をするためには、「消防訓練実施計画書」の提出が必要不可欠です。

必要な書類や期日は管轄の消防署によって異なるので、早めに確認しておきましょう。
消防訓練の当日に消防車などを読んだり、消火訓練の指導を養成したりしたい場合は、別途依頼が必要です。
その旨も管轄の消防署に伝え、日時に問題がないか確認してもらってください。

関連企業・自治体に協力を要請する

消防点検設備の点検を依頼している企業や自治体への協力要請も忘れないようにしましょう。
消火訓練用の消火器の用意や避難訓練開始の合図となる自動火災報知設備の鳴動などをしてもらうためです。

消火器を使った訓練、避難器具を使う体験などをする場合は、その旨も伝えると指導やサポートもしてもらえます。
自治体に協力要請した場合、非常食を支給してくれるところもあります。
その他にも、防災マップなど参加者に配布できるものがないか、市区町村役場の防災課に問い合わせてみるのも良いでしょう。

住民に告知する

日時や訓練内容が決定したら、参加を促すためにマンションの住人へ告知してください。
広報紙がある場合は、底に掲載するのがおすすめです。
また、掲示板やエレベーター内にポスターを張っておいたり、各戸にポスティングしたりするのも効果的です。

ただ参加を促すために告知するわけではありません。
何の前触れもなく火災報知設備が鳴動すると、住民が訓練だとわからずにパニックになってしまう可能性があります。
そのような事態を防ぐためにも、事前の告知は重要です。

事前準備する

事前準備には、当日のタイムテーブル作成や参加者に配布するもの(飲み物や防災用品のサンプルなど)の手配、使用するもの(メガホンや住民名簿、筆記用具、受付用テーブルなど)の用意が挙げられます。
大家さんが1人で全て準備するのは大変なので、役員や住民に協力してもらいましょう。

訓練を実施する

消防訓練当日を迎えたら、実施するだけです。
全て完了した際は、振り返りを行って、改善点を話し合いましょう。

改善点が見えてくれば、次の消防訓練はより円滑に進められるようになります。

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消防訓練の参加者を増やすには?

消防訓練

マンションで消防訓練をする時、できるだけ参加者を増やしたいと考えるものです。
しかし、住民にもそれぞれ都合がありますし、イベントごとに参加するのが面倒だと感じる方もいます。
そのような状況下で、少しでも多くの住民に参加してもらうにはどうすればいいのでしょうか?

子どもたちが参加したいと思える内容にする

子どもたちが参加したいと思える内容にすると、ファミリー層の参加を促せます。
子どもが喜んでくれるような消防車に乗る体験やミニ消防服の試着などをするのがおすすめです。

消防署に依頼すると、このような提案をしてくれるところもあります。
自治体の中には、消防訓練のポスターを子どもに描いてもらっているところもあるのです。
子どもの参加意欲が向上すると、楽しい学びの場となる訓練が実現します。

体験イベントを充実させる

普段ではめったにできない体験イベントを行えば、興味を持ってくれる方も多くなります。
毎年異なる体験をできるようにすれば、マンネリ化も防げるでしょう。
消防訓練はあくまでも訓練なのでイベントにしてしまうと意識の低下につながるのではないかという懸念を持つ方もいるかもしれません。
しかし、よくある訓練で参加しない方の防災意識が高いともいえないでしょう。
だからこそ、普段はできないことを体験イベントとして行い、1人でも多くの方に興味を持ってもらうことが重要です。
スモークハウスを使った避難体験やAEDの講習などをしてくれる消防署もあるので、依頼する際に体験イベントを実施できないか確認してみてください。

結果に触れた呼びかけを行う

消防訓練に関する呼びかけを行う時、過去の実績だけに触れるケースが多いです。
しかしそれでは、住民から興味を持ってもらえる可能性は極めて低くなります。
過去の実績を公開するのであれば、行った結果についても紹介してみてください。

訓練に参加した人が全員消火器を使えるようになった、避難のスピードが〇分早まった、などの良い結果に触れるのがポイントです。
そうすることで、これまで参加してこなかった住民にも興味を持ってもらいやすくなるでしょう。

食べ物や防災グッズを配る

消防訓練でただ避難訓練をしたり、消火器の使い方を学んだりするだけではなく、食べ物や防災グッズを配るのもおすすめです。
自治体によっては、消防訓練をする時に備蓄されている防災グッズを無償提供しているところもあります。

それぞれの自治体で取り組み内容が違うので、知りたい場合は市区町村役場の防災課に問い合わせてみてください。
震災を想定した消防訓練の場合、マンション独自の炊き出し体験を行ったり、参加した方に保存食(アルファ米や乾パンなど)を配ったりするのも、参加者を増やすコツです。

参加しないリスクを伝える冊子を配る

参加率がなかなか伸びない時は、参加しないリスクを伝える冊子を配るのが効果的な場合もあります。
具体的には、参加しないと非難が遅れて命にかかわる事態になる恐れがある、いざという時に混乱しパニック状態になってしまう可能性がある、といった点を伝える必要があります。
どのようなリスクがあるのかわかりやすくまとめた冊子を配布するなどの方法がおすすめです。

イラストや写真を盛り込むとより伝わりやすくなります。
しかし、リアルなイラストや写真は衝撃が大きいので避けるようにしましょう。

特に、流血した人や実際に起こった津波による水害の写真などは、必要以上に不安をあおることになりかねません。
使用するイラストや写真は、あくまでも避難が遅れてしまった様子や不安そうにする人の姿などを想像させるものにしましょう。
過激な内容は逆効果です。

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マンションの避難設備・器具の点検も忘れずに

消防訓練

マンションに暮らす綬民の安全を守るためには、定期的な消防訓練を実施するだけではなく、避難設備・器具の点検も必要です。
最後に、マンションの避難設備・器具の種類と点検について解説していきます。

マンションの避難設備・器具の種類

マンションの避難設備や器具には色々な種類があります。
それぞれの特徴は以下の通りです。

吊り下げはしご

吊り下げはしごは、ベランダの手すりや壁面などに設置してあります。
建物の一部に引っ掛けて使用する避難期設備です。
吊り下げはしごには、折りたたまれた状態になっていてロック品を外す折りたたみ式、ぐるぐる巻かれたワイヤーを伸ばすワイヤーロープ式という2つのタイプがあります。
使用する時は、説明が気にしっかりと目を通し、正しい場所にひっかけることが重要です。

格納箱に取り扱い説明が書かれたステッカーが貼られているので、日頃からチェックしておくように住民に伝えておきましょう。

ハッチ用吊り下げはしご

ハッチ用吊り下げはしごは、マンションで多く見られるタイプです。
ベランダに設置されている避難ハッチの中にはしごが取り付けられています。
避難ハッチの上蓋と下蓋のロックがかかるまで開き、はしご付近にあるボタンを押すと下のベランダまで下りられるようになります。
緊急時以外に子どもが開けてしまうことを防ぐため、チャイルドロックがついているタイプもあるのです。
地域によっては、消防隊員が下から突入できるような仕組みになっている場合もあります。
下から突入できるタイプは、舌からワイヤーを引くことにより、ハッチが開いて上に上れるという仕組みです。
ハッチの蓋には取り扱い説明のステッカーが貼ってあるので、いざという時にすぐ伝えるように日頃から使い方を確認しておいてください。

固定はしご

固定はしごは、壁面などにはしごがむき出しになったはしごが固定されているタイプです。
サル梯子と表現されるケースが多いです。
災害時だけではなく、普段から使用できます。

基本的にはむき出しになっていますが、中には収納できるタイプもあります。

避難ロープ

避難ロープは簡易的な避難器具です。
繊維製のロープに金具や滑り止めの部品が取り付けられています。
吊り下げはしごと同じような樹脂製の袋もしくはプラスチックのケースに格納されています。
それを取り出し、窓の手すりに付属のカラビナで固定したり、窓の端に付属している金具に引っ掛けたりして使うという仕組みです。
はしごと比べるとリスクを伴う避難方法なので、高齢者や子ども、妊婦などが利用するのは避けましょう。

緩降機

緩降機は、住んでいる階から地上まで直接降下できる避難器具です。
格納箱の中に支柱があり、調節器やロープ、着用具などがしまわれています。
火災などの災害が起こった時に格納箱を外し、市中に調速機をかけたら、ロープを巻いたリールを落とします。
そして、着用具を身につけたまま降りると、調速機の働きでゆっくりと地上に降りられるという仕組みです。
ロープの両端に着用具が付いていて、1人が下に降りるともう片方で同じように避難できます。
使い方は、格納箱のステッカーを確認しておいてください。

救助袋

救助袋は、自力で非難するのが難しい方が利用する施設に設置されているケースが多いです。
袋状の筒の中を滑り降りて避難します。
病院や高齢者施設、幼稚園などで目にすることが多いです。
マンションでも高齢化率が高いところであれば、万が一に備えて救助袋を使えるようにしておくと安心です。

垂直に加工するタイプと斜めに滑り落ちていくタイプがあります。

すべり台

救助袋と同じように、自力で非難するのが無図解し方が多い建物で採用されている避難器具です。
見た目は、公園にあるらせん状の滑り台と同じようになっています。
保育園や幼稚園など子どもが利用する施設で見かけることが多いでしょう。

避難設備の点検について

マンションは、防火対象物に含まれている建造物です。
そのため、消防設備などの点検を定期的に実施し、消防署に結果を報告することが義務付けられています。
点検を怠ってしまったり、虚偽の報告をしたりすると、罰せられてしまうので要注意です。

決められた点検はきちんと行うことで、住民が安心して暮らせる環境を維持できます。
6ヶ月に1回のスパンで行う機器点検は、消防設備が正しく設置されているか、損傷はないか、などを確認するために行われるものです。
機器点検を行う際に、感知器を作動させたり、非常ベルを鳴らしたりして、異常がないことを確かめます。
1年に1回のスパンで行う総合点検は、マンションに設置されている設備を起動させてチェックします。
消防点検は専門的な知識がないと適切に行えないため、専門の委託業者に依頼するのが一般的です。

マンションの消防点検を行う際は、避難設備の点検も実施しましょう。
避難はしごの上に物を置いている家庭もありますが、点検の際に邪魔になってしまうため、置かないように周知しておいてください。
適切な点検が行えるようにするためにも、住民から理解を得ることが重要になります。

まとめ

マンションの消防訓練は、住民の安全を守るためのも重要な役割を担っています。
しかし、実際に消防訓練を行っていないマンションは少ないという現状があります。
モチベーションが高い方だけが頑張り、それが全体に浸透しないというケースが散見されるのです。
火災などが発生しなければ問題ありませんが、いざという時に訓練をしていないと対応できずに逃げ遅れてしまう可能性もゼロではありません。
そのため、マンションの消防訓練は定期的に実施すべきだと言えるでしょう。
消防訓練の参加者を増やすための対策などを工夫し、多くの住民に参加してもらえるような工夫を凝らしてみてください。
悩んだ時は、消防署や市区町村役場の防災課などに相談してみるのがおすすめです。

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