定期借家制度は2000年3月に誕生した比較的新しい仕組みであることから、詳しい内容を知らないという人も多いです。
現に、定期借家制度を導入している民間賃貸住宅は2%ほどしかありません。
とはいえ、定期借家契約についてしっかりと学んでおけば、お得に家を借りられたり、空き家を有効活用できたりします。
また、定期借家契約は海外でも一般的な賃貸借契約の1つであるため、今後さらに増えていくことも考えられるでしょう。
そこで今回は、一般的な賃貸物件と比べながら定期借家についてご紹介します。
借主・貸主それぞれのメリットやデメリットについても解説していくので、ぜひ最後までご覧ください。
Contents
定期借家とは?
まずは定期借家について詳しく見ていきましょう。
ここでは定期借家の特徴や、誕生した理由についてご紹介します。
定期借家の特徴
賃貸借契約が満期になると、更新されずに契約が終了する賃貸物件を定期借家と言います。
通常の賃貸物件は、契約が満期になった時に更新できるため、そのまま住み続けることが可能です。
契約の形態は異なりますが、定期借家であっても貸主と借主がお互い合意すれば再契約もできます。
なぜ「定期借家」が誕生したのか
定期借家が誕生した理由は、貸主側に負担が偏ってしまっていたからです。
一般的な賃貸物件は、契約が満期になっても借主から契約更新を求められた場合、簡単に拒否できません。
すると、マナーを守らない借主が住み続けるといったトラブルが起こり、貸主側が大きな心理的ダメージを負うというケースが増えてしまったのです。
そんな借主に退去してもらうためには、多額の立ち退き料を用意しなければなりません。
定期借家制度を導入することで更新を拒否できたり、少なくとも契約期間が満了すれば退去してもらえたりするなど、安心感につながります。
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定期借家と普通借家、何が違う?
では、定期借家と一般的な賃貸物件(普通借家)の違いはどこにあるのでしょうか?
更新や契約期間に加えて、中途解約や通知方法についても詳しく解説します。
更新・契約期間
先ほどもご紹介したように、普通借家は契約が満期になった時、借主が求めれば更新できます。
一方、定期借家は満期になった時、借主が希望しても更新はできません。
貸主と借主がお互い合意すれば住み続けられますが、更新ではなく「再契約」といった形になります。
契約期間については普通借家であれば1年~2年と定められるのが一般的で、1年未満の契約はできません。
対して定期借家は「定期借家6ヶ月」など、1年未満でも契約が可能です。
建物を取り壊す予定がある場合、契約期間を1年未満にするといったケースがあります。
契約方法
普通借家は、契約書などの書面がなくても、言葉だけで契約する「口頭契約」が可能です。
実際は契約書を作って正式な契約を結びますが、法律上は契約書がなくても問題ありません。
定期借家の場合は、必ず契約書を作って契約を結ぶ必要があります。
契約書に加え、定期借家であるということをしっかりと説明する義務も課せられます。
しっかりと説明をしなかった場合は普通借家契約として取り扱われてしまうため、貸主側は注意が必要です。
書面で結ばなければならない理由としては、普通借家とは違い比較的借主側の負担が大きくなるためです。
契約書と説明で定期借家について把握し、契約期間満了後に備えられるようにしておく必要があります。
中途解約
普通借家では、契約で定められている場合に限り、中途解約が認められます。
一方で、定期借家の場合は途中解約ができないので注意しましょう。
ただし、借主側から中途解約できるケースがあります。
中途解約できるのは、一定の条件(200㎡未満の居住用建物で、やむを得ない事情があり、住み続けられない場合)を満たした場合です。
通知方法
普通借家の場合は、契約が満期になった時、手続きをしなくても自動的に契約が更新されます。
取り壊しなどの正当事由で立ち退きを求める場合は、1年~半年前までに通知をするのが一般的です。
定期借家の場合は、契約が満期になると自動的に契約が終了するため、借主はそれまでに退去できるよう準備しておく必要があります。
契約満期まで1年以上ある場合は、借主が契約終了の時期を把握できるよう、満期になる半年~1年前までに通知しなければなりません。
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【借主側】定期借家のメリット
定期借家を利用した場合、借主・貸主ともに多くのメリットが存在します。
まずは、借主側が定期借家を利用するメリットについてご紹介しましょう。
短期間だけ住める
定期借家の中には、3ヶ月や半年といった短い期間だけ契約することが可能な物件があります。
「転勤が決まっている」「建て替えやリフォームをしている間だけ住みたい」など、次の引っ越しまでの期間が短い時にとても便利です。
普通借家でも解約条項があれば中途解約も可能ですが、契約によっては違約金が必要になる場合があります。
契約期間が長い物件も存在する
定期借家には契約期間を長く設定している物件もあります。
中には5~10年といった長さの定期借家も存在します。
普通借家契約の場合は更新手続きが必要になるケースがあり、1年~2年おきとはいえ、煩わしさを感じる方もいるでしょう。
定期借家の場合は更新手続きが発生しないため、契約期間中であれば手続きなどを気にせず過ごせるのです。
質の高い物件に住める場合がある
定期借家の大家さんの中には、「転勤の間だけ貸したい」「別荘やセカンドハウスをオフシーズン期間だけ貸したい」という方も少なくありません。
そういった物件を「リロケーション物件」と言います。
大家さん自身が住む住宅であることから、質の高い物件が見つかる可能性が高いのです。
新築や一戸建てはもちろん、分譲マンションなどもあり、アパートなどにはない設備などが設置されていることもあります。
ただし、親が住んでいた一戸建てを貸し出しているケースもあるため、築年数にこだわりがある場合は、短期間だけの居住でもしっかりとチェックするのがおすすめです。
家賃が相場より低い場合もある
期間が限られている定期借家では、借り手が付くように家賃が相場よりも低くされていることがあります。
長期的に住むことはできないものの、立地や周辺環境が良い場合、合わせて考えると好条件の物件も多いです。
特に引っ越しの予定がある場合は、立て続けの引っ越しで費用がかさむため、節約になるという意味でも借主のメリットになるでしょう。
入居者の質が高くなりやすい
アパートに住む場合、近隣住民とのトラブルが発生することがあります。
マナーが悪かったりルールを守らなかったりする入居者が存在することで、穏やかに住むことが難しくなるでしょう。
定期借家は、借主だけの希望で契約を更新できないため、迷惑行為を繰り返す住民は住み続けることが難しくなります。
大家さんの判断によって再契約が行われなければ、質の高い入居者だけが残っていくため、良質な住環境が手に入れられるのです。
別荘・セカンドハウスとしての利用もできる
契約期間が短いことから、別荘やセカンドハウスとして利用することも可能です。
先ほどご紹介しましたが、大家さんが別荘・セカンドハウスとして持っている建物をオフシーズン期間のみ貸し出しているケースは多いです。
しかし、大家さんがシーズン中も利用できない場合、シーズン中の貸し出しも行う可能性があります。
もちろん別荘やセカンドハウスとして建てられたものでなくても、別荘やセカンドハウスとして利用することは可能です。
旅行や長期的な休暇の間だけ契約するといった方法を取れば、ホテルなどに泊まるよりも安く住むケースもあるかもしれません。
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【借主側】定期借家のデメリット
次に、借主側に生じる定期借家のデメリットをご紹介します。
デメリットをしっかりと把握しておくことで、緩和させる工夫や対策ができるため、ぜひ参考にしてみてください。
途中で解約できない
普通借家では契約内容次第で認められる途中解約ですが、定期借家は途中で解約できません。
契約期間がしっかりと定められており、収集できるはずだった賃料が受け取れなくなってしまうことから、大家さんの負担が大きくなってしまうのです。
大家さんの立場が不安定にならないよう、途中解約については厳しい決まりがあります。
途中で解約する場合は、残りの契約期間分の賃料が請求されるなど、かなりの費用が必要になるでしょう。
ただし、一定の条件を満たした場合は借主側から中途解約することが可能です。
条件とは、200㎡未満の居住用建物でやむを得ない事情があり、住み続けられないといったものです。
例えば転勤や療養、親族の介護などが正当事由の例になります。
契約期間が終わればすぐに退去しなくてはならない
たとえ転勤までの期間が伸びたり建て替え工事が遅れたりしても、契約期間を延ばすことはできません。
契約が満期になった時は、すぐに退去しなければならないのです。
転勤や建て替え工事の期間が曖昧な場合は定期借家ではなく、普通借家を借りることも視野に入れるのがおすすめです。
契約が終了する時期については、大家さんが前もって通知してくれます。
大家さんから契約終了の通知が届いたら、次に住む物件を探し始めましょう。
原則再契約は難しい
貸主と借主がお互い合意すれば再契約が可能ですが、原則再契約は難しいと言われています。
定期借家は、「取り壊しまでの期間だけ」「転勤している間だけ」といった条件で貸し出していることが多いためです。
家賃滞納や近隣トラブルを起こしてしまった場合は特に難しいと言えるでしょう。
また、更新ではなく再契約となるため、再度敷金や礼金、保証金などを請求される場合があるため、費用がかさんでしまうことも少なくありません。
さらに一度目の契約と条件が変わるケースもあります。
特に賃料が上がるということが多くあるため、再契約をする際は内容をしっかりと確認するようにしましょう。
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定期借家契約で借主が気を付けるべきポイント
定期借家契約は普通借家契約と違う点が多いため、気を付けるべきポイントについても異なります。
定期借家を借りようとしている方は、以下のポイントに気を付けながら契約を進めましょう。
おとり物件に注意
おとり物件とは、集客をするために契約済みの物件や架空の物件の情報をネットに記載する手口のことを言います。
好条件の定期借家で来店を促し、店を訪れた客に定期借家のデメリットを説明します。
デメリットに納得したところで、契約してほしい他の物件を紹介するという、悪質な手口になります。
相場よりもかなり賃料が安い場合や、驚くほど好条件の物件はおとり物件の可能性もあるため注意しましょう。
契約の種類と期間は必ず確認する
「定期借家契約だと思っていたら普通借家契約だった」といったケースは往々にしてあります。
特に普通借家契約と思い込んで契約してしまった場合はとても大変です。
契約する際は、口頭などで聞いていてもしっかりと契約書や重要事項説明を確認しましょう。
定期借家契約の場合は、契約期間の確認も欠かせません。
定期借家は契約が満期になると速やかな退去が求められます。
引っ越しの予定なども考え、契約期間が満了した時に引っ越せるかどうかを確認してください。
「家賃不減特約」について理解する
家賃不減特約とは、「借主は賃料減額を要求できない」といった旨を定めた契約のことを指します。
普通借家契約では、家賃不減特約が定められている場合でも効力がなく、賃料減額を申し出ることが可能です。
つまり、いつでも家賃の値下げ交渉できるのです。
一方で定期借家契約では、家賃不減特約が定められている場合、賃料減額の要求ができません。
周辺相場からかけ離れた賃料であっても決まった家賃を支払わなければならないため注意しましょう。
とはいえ、家賃の値下げ交渉は長く住んでいる場合に行うことが多いため、契約期間が短い定期借家ではあまり行われません。
長期的に定期借家を借りる場合は、しっかりとチェックしておく必要があります。
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【貸主側】定期借家のメリット
続いては、定期借家にすることで貸主側が得られるメリットについて、詳しく見ていきましょう。
入居期間を決められる
貸主側にとって最大のメリットともいえるのが、入居期間を自由に決められることです。
更新もなく最初に契約した入居期間が終われば予定どおり退去してもらえるため、「貸した物件からいつ退去してもらえるのか」といった不安から解放されます。
また、更新はなくても再契約を売り返すことで同じ人に貸し続けられるため、最初の契約期間はあえて短く設定し、借主の様子を見てから決めることも可能です。
ただし、定期借家の場合、原則として中途解約はできません。
したがって、「転勤が早く終わった」などの理由から、当初の予定よりも早く自宅に住みたいと思った場合でも、契約期間が終わるまでは待たなくてはいけません。
もしも、途中で予定よりも早く契約期間を終了する可能性がある時は、特約で中途解約の条件を設定する必要があります。
確実に契約を切ることができる
定期借家契約では、確実に契約を切ることができる点もメリットの一つです。
通常の普通借家契約の場合、当初の契約期間が終了したとしても、借主側が更新を希望すれば、正当な事由がない限り拒否することはできません。
しかし、定期借家契約であれば契約期間は自分で決められる上、その期間を過ぎれば契約も終了します。
たとえ借主が再契約を望んでも貸主は拒否できるため、家賃滞納やトラブルを起こすような人だった場合、定期借家契約なら確実に契約を切れるのです。
また、更新がないため、「転勤の間だけ」など限られた期間だけ貸し出すことも可能です。
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【貸主側】定期借家のデメリット
定期借家にはメリットもあれば、デメリットも存在します。
ここでは貸主側のデメリットを解説するので、契約方法をどうするのか、決める際の参考にしてください。
別途書面の交付と説明が必要
定期借家契約では普通借家契約とは違い、書面の交付や説明が必要です。
そのため、契約書とは別に書面を交付し、「契約期間のある定期借家契約であること」「契約の更新はないこと」を事前に説明しなくてはいけません。
万が一別途書面の交付と説明を怠った場合、定期借家契約とはならず、普通借家契約とみなされる可能性もあるので注意してください。
相場より家賃が安くなりやすい
定期借家契約では、家賃が相場より安くなりやすい点がデメリットとして挙げられます。
一度引っ越しをしたら、長く住みたいと考えている人は多いです。
しかし、定期借家契約では借りられる期間が決まっているため、入居を希望する人が見つかりにくい可能性があります。
もしも、なかなか入居希望者が見つからなければ、家賃を安くするなどの対策をしなければいけません。
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定期借家契約で大家さんが気を付けるべきポイント
定期借家契約にする場合、大家さんは契約時だけでなく、再契約時や普通借家からの切り替え時、契約期間満了時とそれぞれの段階で注意しなければならないポイントが存在します。
ここでは、定期借家契約で大家さんが気を付けるべきポイントを詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
契約締結時の注意点
定期借家契約が成立したとみなされるには、4つの要件が必要です。
・契約期間の定め
・更新しないということ
・契約の締結を書面ですること
・書面で更新しないことを事前説明
「定期借家契約」「更新しない」と契約書に記載するだけでは、認識や理解の有無を問わず不十分とみなされ、普通借家契約となるため注意が必要です。
再契約を行う際の注意点
更新と再契約は全く異なるものです。
定期借家契約では普通借家契約に比べて、契約期間内の解約が厳しく制限されます。
そのため、定期借家契約の場合、契約期間を1年2年と比較的短い期間に設定し、再契約条項を盛り込んでおくことで、契約期間終了後に再契約をし、更新と同じように扱うこともあります。
ただし、実際は再契約のため、更新とは違い、また契約書を作成したり、書面を交付し説明をしたりするなどの手順が必要です。
さらに、更新であれば引き継がれる保証人や敷金、保証金も再契約では再び一から行わなくてはいけません。
一度返却してからまた預けてもらうなど、金銭を移動させるのは避けたい場合には、再契約時に預託された資金を引き継ぐ旨を記載しておく必要があります。
なお、再契約時は原状回復についても、再契約時ではなく最初の物件を貸した時の状態であることを特約条項に入れることも忘れてはいけません。
普通借家から定期借家へ切り替える際の注意点
定期借家契約のメリットを知り、切り替えを検討している方もいるでしょう。
ただし、ここで重要なのは、切り替えができない物件もあるという点です。
定期借家に関する法律は平成12年3月1日に施行されました。
よって、それ以前に締結した普通借家契約を定期借家契約への切り替えには制限があり、双方が合意したとしても無効となります。
平成12年3月1日以降に成立した契約であれば、双方の合意があれば切り替えは可能です。
契約期間満了時の注意点
確実に契約を切れるとはいえ、契約期間が終了するからといって何もせずに明け渡してもらえるわけではありません。
契約期間の終了の時期が近くなったら、大家さんは借主に対して終了通知を出す必要があります。
終了通知は必ずしも書面でと決まりがあるわけではありません。
ただし、契約書に書面で通知すると記載した場合は、口頭で通知しても要件を満たしていないと満たされるため注意が必要です。
終了通知は、契約期間満了の6ヶ月~1年前までに出しておきましょう。
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定期借家が活用される主な事例
どのようなケースの場合、定期借家契約が活用されているのでしょうか。
ここでは、主な事例をご紹介します。
建て替えを行うまでの期間
建物の劣化などにより、建て替えを予定している場合、定期借家契約を活用することがあります。
普通借家契約では正当な事由がなければ解約が認められず、退去してもらうには立ち退き料などを支払わなくてはならない可能性があるからです。
そのため、建て替えまで数年ある場合、空室が出ても明け渡しがスムーズに進まないことを懸念して、入居者募集を控えるケースも少なくありません。
しかし、定期借家契約で建替え予定時期に契約の終了日を設定すれば、明け渡しで揉めることなく、空室の有効活用が可能となります。
大規模修繕の入れ替え時
建物の市場価値を維持するには、定期的な大規模修繕が欠かせませんが、入居者がいる状態で修繕工事を行うのは、手順も複雑で費用もかさみます。
また、万が一事故などによって入居者が被害を受けるようなことがあれば一大事のため、できるだけ入居者の入れ替え時期に合わせて工事を進めるのが望ましいです。
とはいえ、計画どおりに入居者の入れ替えが進むとは限りません。
そのため、修繕工事をスムーズに進める方法の一つとして、定期借家契約を活用し、契約期間の満了時期を設定するのも効果的です。
転勤が決まり持ち家が空室になってしまう時
転勤が決まり、住宅ローンの返済と転勤先での家賃を二重で支払わなくてはならないようなケースでは、定期借家契約の活用が有効です。
転勤の期間だけ、留守にしている持ち家を貸し出せば、入ってきた賃料収入で住宅ローンを返済できるため、月々の負担軽減につながります。
また、定期借家契約によって終了期間を定めていれば、転勤から戻った際、確実に自宅に住めます。
高齢者が戸建てからマンションへ住み替える時
子どもの独立後、管理が大変な一戸建てからマンションへの住み替えを検討する高齢者は多いですが、このような場合にも定期借家契約は有効です。
戸建てを貸し出すことで家賃収入を得られるからです。
さらに、もしもマンションが合わなくても契約期間終了すれば帰る家があるというのは安心材料となります。
また、定期借家契約なら亡くなって相続した後は、契約期間が終了した時点で、貸し出すか、売却するか、自ら住むかを相続人が決められる点も魅力です。
事業用テナントを貸し出す時
定期借家契約は、事業用テナントの賃貸契約でもよく活用されています。
普通借家契約の場合、入居者に退去してもらうには立ち退き料が必要です。
店舗の場合さらに営業補償なども必要となるため、貸主側にとっては負担が大きく、リスクが高いです。
しかし、あらかじめ契約期間の終了日を設定しておく定期借家契約であれば立ち退き料や営業補償も必要ないため、貸主側の負担軽減につながります。
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定期借家に切り替えるなら?不動産会社も見直そう
定期借家に切り替えを検討している方は、不動産会社の見直しも行いましょう。
ここでは、不動産会社を選ぶ際のポイントをご紹介します。
定期借家契約の実績があるか
まずは、定期借家契約の実績があるかどうかを確認しましょう。
賃貸契約には、普通借家契約と定期借家契約の主に2つの方法があります。
一般的な賃貸物件では普通借家契約であることがほとんどです。
定期借家契約の場合、事前に書面の交付や説明する手間があるため、普通借家契約ばかりを取り扱っている不動産会社だと契約手続きや管理に不備が生じる可能性があります。
不慣れからトラブルに発展する可能性もあるため、定期借家契約を結ぶのであればしっかりと実績のある不動産会社を選ぶことが大切です。
また、実績を確認する際は、合わせて管理物件数もチェックしておきましょう。
管理物件数が多い不動産会社は、それだけ大家さんから選ばれているということです。
空室対策や建物管理に関するノウハウを持っているとも考えられるため、事前に確認しておくと安心です。
なお、不動産会社への委託形式には管理委託方式とサブリース方式があります。
管理委託方式は管理全般を任せ、家賃収入から管理委託費を支払うものです。
一方、サブリース方式は不動産会社が一括して借り上げるもので、たとえ空室であっても家賃保証があります。
どちらが良いかは人によって異なるため、自分に合った方法を選択することが大切です。
どんな空室対策を行っているか
空室があるとその期間中は家賃収入が入りません。
空室が続けば続くほど損をしてしまうことにつながるため、きちんと空室対策を行ってくれる不動産会社を選ぶことが大切です。
空室対策について確認したい場合は、「どうやって入居者を募集するのか」を質問してみましょう。
最近では、スマホやパソコンから部屋探しをする人も多いので、検索サイトに物件情報を掲載しているのか、物件の魅力が伝わるような写真を載せているのかなどをチェックしてください。
ただ撮影した写真を載せているだけの不動産会社は、避けたほうが無難です。
構図や画質にこだわり、綺麗に見せようという意図を感じられる不動産会社を選ぶことをおすすめします。
入居者の審査・管理まで任せられるか
入居者の審査や管理を任せられるノウハウを持っているかも大事なチェックポイントの一つです。
万が一家賃を滞納する入居者がいた場合、不動産会社は速やかに対処することが求められます。
不動産会社を選ぶ際は、2ヶ月以上の滞納率をチェックしてみてください。
1.5~1.7%以上あるようなら、回収能力が低い可能性があるため注意が必要です。
なお、こうしたトラブルを事前に防ぐには、入居者の審査も重要となります。
希望者は誰でも入居させるのではなく、どのような基準で判断するのか、審査基準を事前に確認しておくようにしましょう。
トラブルにも対応できるか
騒音や水漏れなどトラブルへの対応を怠ってしまうと、入居者へ不信感を与えてしまい、退去や空室につながる恐れがあります。
不動産会社を選ぶ際は、トラブル発生時にどのような対応をするのか、サポート体制を確認しておきましょう。
入居者からの問い合わせに対応している窓口の運営時間やスタッフの人数なども、信頼できるかどうかを判断する上で重要なポイントとなります。
今回は定期借家について、特徴や普通借家契約との違い、借主・貸主双方のメリット・デメリットを詳しく解説しました。
更新がなく、契約期間満了とともに確実に契約を切ることができる定期借家契約は、大家さんだけでなく、借主側にもメリットがあります。
ただし、デメリットがないわけではありません。
定期借家契約を利用する際は、自分に合っているかどうかを確認することが大切です。