テレワーク時代の優秀な人財の見極め方 ~「人財」思想に基づく考察~

コロナ禍を経てテレワークが定着した現代、企業は非対面環境でも優秀な人財を発掘し、適切に評価することが求められています。INAでは、「会社の成長は社員一人ひとりの成長から生まれる」と考えており、社員を単なる労働力ではなく企業のかけがえのない資産「人財」と位置付けています。INAでは、働く人が正当に評価され報われる社会を目指し「人間的想像力と最先端のテクノロジーを融合させ、すべての人が正当に評価され、報われる社会」を使命に掲げています。本稿では、その「人財こそ企業の本質的価値」という経営思想を軸に、テレワーク時代における優秀な人財の見極め方について考察します。

非対面環境下での人物評価の課題と解決策

テレワークでは上司や同僚が直接部下の働きぶりを見る機会が減り、人物評価に独特の課題が生じます。例えば、対面であれば得られる表情・態度などの非言語情報がオンラインでは読み取りづらく、コミュニケーションの不足から相互理解に齟齬が生まれがちです。また、勤務態度や仕事への取り組み方の評価が難しく、成果以外のプロセスや情意面を適切に把握することが困難になります。こうした状況では「姿が見えないから正当に評価されない」という不安が社員に生まれ、評価の公平性が損なわれかねません。

これらの課題への対策としては次のようなものが有効です。

  • コミュニケーション頻度を増やす: 定期的な1on1ミーティングやチームミーティングをオンラインで設定し、業務状況や悩みを共有する場を持ちます。評価者と被評価者の対話を重ねることで、お互いの意図や状況を正確に把握しやすくなります。
  • 評価基準の明確化と共有: オンライン環境下では成果や実績にフォーカスして評価される傾向が強まるため、事前に何をどう評価するか基準を明示し、全員に周知徹底します。特にテレワークでは目標達成度合いなど客観的指標に基づく評価が重要となります。
  • 目標管理(MBO)の導入: 上司と部下で合意した目標に対する成果で評価する目標管理制度を採用する企業も増えています。あらかじめ合意した目標に基づけば、場所に関係なく公正に評価しやすく、評価プロセスの透明性も高まります。
  • 業務プロセスの「見える化」: 日々の成果や活動内容を共有するしくみ作りも効果的です。例えば日報・週報の導入は、在宅勤務で見えづらいプロセスや工夫を文章化して残すことで、上司が部下の努力や成長を評価する材料となります。

テレワーク下でも、努力や成果が埋もれて不当な評価とならないよう、双方向のコミュニケーション客観的評価軸によって信頼に基づく評価体制を築くことが重要です。

面接・選考プロセスにおけるオンライン特有の工夫

優秀な人財を見極めるには、採用面接・選考プロセスにもオンラインならではの工夫が欠かせません。対面と異なり候補者が企業の雰囲気を肌で感じることができないため、事前情報の共有に力を入れることが有効です。例えば面接前に会社紹介資料や採用ブログ記事を送付し、企業文化やビジョンを理解してもらうことで、面談当日はより踏み込んだ質疑に時間を充てられます。オンライン面接のみでは伝えきれない情報は事前提供し、限られた接触機会を有効活用します。

選考方法にもオンライン特有の手法があります。ひとつは構造化面接(STAR面接)の活用です。Web面接では対面より表情や仕草といった視覚情報に頼れない分、言語情報から候補者を見極める重要性が増します。あらかじめ評価基準に沿った質問を用意し、過去の具体的な経験(Situation, Task, Action, Result)を順序立てて掘り下げるSTAR形式の質問を行えば、候補者の行動特性や価値観を客観的に把握できます。例えば「前職で自発的に提案し実行した改善策はありますか?」といった質問は、候補者の主体的行動力を垣間見る機会となります。構造化面接は評価のブレを減らし、オンラインでも公正な比較をしやすいメリットがあります。

さらに、オンライン特有の選考フローも工夫できます。候補者によっては画面越しだけでなく一度は直接会って話したいと希望する場合もあるため、可能であれば最終段階でオフライン面談の機会を設けるか、難しければ複数回のオンライン面談で様々な社員と話す場を用意すると良いでしょう。複数の面接官や将来の同僚とのカジュアルな面談を通じて、候補者の人柄や社風適合性を多角的に評価できます。また筆記テストやコーディングテストなどオンライン適性検査を導入する企業もあります。Web上での適性試験であれば場所を問わず受検でき、公平性確保のためAIによる不正監視を組み合わせたサービスも登場しています。デジタル化された選考プロセスを駆使して、地理的制約なくより広範な人財プールから優秀層を選び抜くことが可能になっています。

テレワーク環境における成果の可視化と評価の仕組み

テレワーク下では、成果を如何に「見える化」するかが人財評価の肝となります。対面であれば進捗状況を雑談や朝会で把握できても、遠隔では成果物が出るまで苦労が見えにくいためです。前述のように目標管理や定期的な報告を導入することは、社員のアウトプットを透明化する基本施策です。例えばOKR(Objectives and Key Results)のようにチームと個人の目標を連動させ、進捗を共有する仕組みを取り入れれば、各人の貢献が全体目標にどう寄与しているか把握しやすくなります。KPIダッシュボードやプロジェクト管理ツール上でタスクの完了状況を共有すれば、プロセスも含めたリアルタイムの見える化が可能です。INAでは、地方在住の優秀な人財を採用し、都心部の物件管理を遠隔で行う仕組みを構築しています。このようにテクノロジーを活用して地理的な壁を取り払い、成果さえ上げれば場所を問わず活躍できる環境を整えることが、真に人財の価値を引き出すポイントと言えます。

成果の見える化と並び、評価のフィードバック体制も重要です。遠隔下では評価者側のフィードバック不足により、部下が自分の評価を実感しにくい懸念があります。これを解消するため、評価サイクルを短くして小まめにフィードバックする仕組みを設けます。四半期ごとの面談に加え、月次で目標進捗を確認してアドバイスを与えるなど、サイクルを高速化する企業もあります。オンラインで使える1on1支援ツールやフィードバック管理ツールを使えば、対話内容の記録や課題の見える化ができ、人事評価と人財育成を一体的に進められます。評価結果は迅速に本人と共有し、強み・弱みのフィードバックや今後の期待を伝えることで、遠隔でも社員のモチベーションとエンゲージメントを維持できます。

自律性・誠実さ・理念共感を見極めるための具体的手法

INAの経営思想では、自律性(主体性)・誠実さ理念共感を備えた人財こそが真に企業価値を生み出す存在だとされています。テレワーク時代においても、こうした本質的な資質を見極めることが優秀な人財確保のカギとなります。具体的には、採用選考や評価の場面で以下のような手法が考えられます。

  • 行動面接で主体性と誠実さを問う: 候補者の過去の行動エピソードから人柄を探ることで、自律的に動ける人か誠実に責任を果たす人かを判断します。例えば「前職で自発的に提案し実行した改善策はありますか?」といった質問は、候補者の主体的行動力を垣間見る機会となります。INAでは採用時にスキル・経験だけでなく理念への共感度や人柄を重視しており、特に誠実さ成長意欲、そして企業ビジョンへの共感を採用基準の軸に据えています。このように質問設計段階で評価したい価値観や資質を明確にし、面接で深掘りすることが大切です。
  • 自己管理能力の確認: フルリモート環境では「自由=自己責任」です。自律的に業務を進められる人かどうかを評価するには、時間管理や仕事の優先順位づけに関する問いかけが有効です。「在宅勤務で成果を出すために工夫していること」を尋ねたり、直近のプロジェクトでどのようにタスク管理をしたかを具体的に説明してもらうことで、自己管理力の高さを測れます。実際、リモートワークの柔軟性は自律して働ける人材にとっては恩恵ですが、自制が利かない人には生産性低下の落とし穴になり得ます。そのため、選考段階でセルフマネジメント力を見極めることが不可欠です。
  • 価値観・理念への共感度を測る: 候補者が企業の使命やビジョンに共感しているかどうかは、長期的な活躍に直結します。そこでミッション面接とも言えるような場を設け、会社の理念や文化について候補者と議論するのも有効です。「当社の掲げるビジョンについてどう思うか」「あなたの仕事観と当社の価値観で共通する部分は何か」といった問いで、候補者自身の価値観を語ってもらいます。その際、事前に企業理念やサービス内容への共感が大切だと候補者にも伝えておくと良いでしょう。組織文化研究の中では、カルチャーフィットの要素として「商品・サービスへの共感」「経営理念・ビジョンへの共感」「社員との相性」の3点が挙げられています。面接官はこうした観点で候補者の発言を評価し、自社の理念に心から賛同し体現できる人かを見極めます。

また、リファレンスチェック(照会) を通じて過去の同僚や上司から候補者の誠実さ・働きぶりを聞き取ることも、オンライン採用では取り入れる企業が増えています。人柄に関する第三者の証言は貴重な判断材料であり、遠隔で直接会えない弱点を補完できます。INAは「誠実さと成長意欲」を持ち「事業を通じて関わる全ての人の幸せを実現する」というビジョンに共鳴できる人を重視しています。
企業は独自の理念に共感し自律的に動ける人財像を定義し、それに沿った評価方法を設計することが重要です。

オンライン上でも企業文化や価値観への適合性を測る方法

遠隔採用では、企業文化や価値観へのフィット感を判断することが難しいとされています。実際、Web面接だけで内定を出すケースでは、候補者が社風や職場の雰囲気を十分に理解しないまま入社し、ミスマッチに気付くリスクがあります。対面ならオフィスの空気や社員の様子から感じ取れる「ソフト情報」も、オンラインでは積極的に伝えない限り伝わりません。そこで、企業側がオンライン上でも自社のリアルな姿を発信し、候補者との認識合わせを図る工夫が求められます。

一つの方法はオウンドメディアやSNSで企業文化を発信することです。例えば、社内イベントや社員の声を紹介するブログ、ビジョンや働き方を語るYouTube動画、代表メッセージの掲載など、多角的なコンテンツを候補者に届けます。INAでも、自社サイトのコラムで「社員一人ひとりを最も重要な資産と位置付ける理念」や「オープンで風通しの良い文化」を発信しています。候補者はこれらを通じて入社前に価値観のすり合わせができ、企業もミッションに共感してくれる人財を引き寄せやすくなります。「Web面接だけで企業文化を伝えきれると期待しないこと」そして「別のチャネルで文化を語ること」がミスマッチ防止のポイントだと指摘されています。

さらに、バーチャルオフィスツアーオンライン懇親会の実施も効果的です。実際のオフィスをWeb会議で案内し、働く環境や社員の様子を動画で見せることで、候補者に職場の雰囲気を疑似体験してもらえます。たとえば「社員は私服で働いており会議中に和やかな笑い声が聞こえる」「テレワーク中心だが週1出社日があり、その日はランチ会をしている」といった日常の実態を共有すれば、テキスト情報では伝わらないカルチャーを感じ取ってもらえます。複数社員との座談会も、カルチャーフィットを確認する有効な手段です。候補者にとっては先輩社員の生の声を聞く機会となり、企業にとっては候補者のコミュニケーションスタイルや価値観の相性を見極める場となります。社員側から見た候補者の印象もフィードバックとして集め、総合的に適応度を判断すると良いでしょう。

最後に、リアリスティック・ジョブ・プレビュー(RJP)の考え方も注目されています。可能であれば「お試し就業」やインターンをリモートで実施し、候補者に実際の業務や社内コミュニケーションを短期間体験してもらいます。リモートでの体験入社を通じて、企業文化やチームとの相性をお互いに確認できれば、正式入社後のミスマッチを大幅に減らせます。このようにオンラインでもできるだけリアルに近い情報交換を行うことが、文化・価値観の適合性を測る上で非常に重要なのです。

デジタルツールを活用した人財の適性判断とフィードバック

テレワーク時代の人財評価には、様々なデジタルツールやテクノロジーが利用できます。適切なツールを活用することで、対面では難しかった情報の可視化や客観的なデータ分析に基づく判断が可能となり、評価精度と納得感を高めることができます。

採用フェーズでは、AIを活用した適性検査や面接ツールが登場しています。例えば、録画した面接動画をAIが解析して表情や話し方の傾向からパーソナリティを評価するサービスや、ゲーム形式で認知能力や価値観を測定する適性検査があります。これらは人間の主観バイアスを補正し、公平で一貫性のある評価に役立つとされています。加えて、オンライン適性検査においてAIがカメラで受検者を監視し、不正行為を検知するといった仕組みも実用化されており、遠隔地からでも信頼性の高い試験運用が可能です。

人事評価フェーズでも、クラウド型の人事評価システムや分析ツールが普及しています。これらのシステムは目標管理と評価プロセスを一元管理し、社員の目標達成状況や360度評価の結果などをデータベース化します。蓄積されたデータにより、例えばハイパフォーマーの共通点の分析モチベーションの可視化ができ、次世代リーダー候補の発掘や離職リスクの検知に活かせます。こうした客観データに基づく評価は、公正さの向上につながり得る一方で、評価はあくまで人間が最終判断するという原則を忘れてはなりません。ピープルアナリティクス(人材データ分析)と現場マネジメントの知見を組み合わせ、デジタルと人間の協働によってより精度の高い適性判断を目指すことが重要です。

また、メンバー自身が成果をアピールできる機会を意図的に設けることも重要です。例えば定期ミーティングで各自の工夫や成果をオンライン発表する場を作れば、評価されるだけでなく自ら成果を示す文化が醸成されます。日報や自己PRの機会と同様に、プロセスや取り組み内容を上司が把握する助けともなり、上司・部下間のコミュニケーションにもつながります。

もっとも、デジタルツール活用にあたってはプライバシーと信頼のバランスにも注意が必要です。例えばPCの操作ログやWebカメラで常時勤怠を監視するといった過度な管理は、社員の不信感を招きモチベーションを損ないかねません。「信頼に基づいた関係性」を損ねないよう、あくまで人財をエンパワーし正当に評価するための補助としてテクノロジーを位置づけることが重要です。人間的な洞察力と先端技術の融合というINAの理念に立ち返り、デジタルツールも人財の可能性を最大化する方向で活用すべきでしょう。

今後のハイブリッドワーク環境下での人財確保における展望

パンデミックを契機にリモートワークが広がったものの、完全在宅と出社の中間を取るハイブリッドワークが現在主流となりつつあります。今後、企業はリモートと対面を組み合わせた柔軟な働き方を前提に人財戦略を練る必要があります。地理的制約が薄れたことで、優秀な人財を地域や国境を超えて確保できる一方、企業間の人材獲得競争はさらに激化するでしょう。その中で勝ち残るには、「人財と信頼を経営の軸に据え」たアプローチが一層重要になります。すなわち、場所を問わず活躍できる環境を整備し、遠隔でも社員一人ひとりの可能性を最大限に引き出せる企業が選ばれる時代になるのです。

評価制度の継続的なアップデートは不可欠です。ハイブリッド勤務では、出社組と遠隔組の評価に差が出ないよう、これまで見てきたような成果重視・公平重視の評価手法を進化させていかなければなりません。優秀な人財ほど柔軟な働き方を望むため、企業は公平な評価働き方の柔軟性の両立を追求する必要があります。地方人財の遠隔活用で示したように、場所に関係なく成果を評価し報いることができれば、優秀な人財は地域や国境を超えて集まるでしょう。一方、企業文化の維持や社員のエンゲージメント低下を防ぐ対策も欠かせません。例えば定期的に対面で交流する機会を設けるなど、ハイブリッド環境に適した総合的な人事施策が求められます。

人財こそ企業価値の源泉であるという信念は、どんな時代でも揺るぎません。ハイブリッドワーク時代においても、企業はテクノロジーを駆使しつつ人間中心の視点を忘れず、評価・育成の仕組みを進化させていく必要があります。そうすることで「頑張っている人がきちんと報われる」環境を守り抜き、優秀な人財に選ばれる企業として持続的成長を遂げられるでしょう。

まとめ

テレワーク時代における優秀な人財の見極め方について、解説しました。INAでは、非対面環境下では評価の難しさがあるものの、成果の見える化や明確な評価基準、構造化面接の活用などで公正さを担保できることを示しました。加えて、自律性・誠実さ・理念共感といった本質的資質を重視しオンラインでもそれらを測る工夫が肝要であること、また企業文化や価値観のミスマッチ防止にはデジタルを通じてありのままの会社像を発信し候補者との相互理解を深める必要性について述べました。さらに、人事評価やフィードバックに先端テクノロジーを取り入れることで、遠隔下でも適正で納得感のある評価を実現できる可能性が広がっています。

INAは「人財」と「信頼」を経営の軸に据え、一人ひとりの可能性を最大限に引き出す組織づくりを目指しています。この思想は、テレワークやハイブリッドワークが進むこれからの時代にも通じる普遍的な指針です。人財こそ企業の本質的価値であるという原点に立ち返り、公平で人間味ある評価を行うことで、場所を問わず優秀な人財を惹きつけ、企業全体の持続的な成長につなげていくことができると信じています。

稲澤 大輔

稲澤 大輔

INA&Associates株式会社 代表取締役。大阪・東京・神奈川を拠点に、不動産売買・賃貸仲介・管理を手掛ける。不動産業界での豊富な経験をもとに、サービスを提供。 「企業の最も重要な資産は人財である」という理念のもと、人財育成を重視。持続可能な企業価値の創造に挑戦し続ける。

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