企業が失敗を恐れずに挑戦することの必要性

企業が長期にわたり成長し続けるためには何が必要でしょうか。私は、その大きな鍵の一つが「失敗を恐れずに挑戦すること」だと信じています。では、なぜ失敗を恐れずに挑戦することが必要なのでしょうか。その理由を次の三つの観点から考えてみます。

短期的な利益ではなく持続的な成長が本質

私は、企業経営の本質は短期的な利益追求ではなく、明確なビジョンのもとですべての関係者が幸福になる持続可能な成長を目指すことだと考えています。確かに利益は企業が存続するための“酸素”のように不可欠ですが、呼吸そのものが人生の目的ではないのと同様、利益そのものも企業の存在目的ではありません。企業は社会や顧客に価値を提供し続け、その結果として利益が後からついてくるものだという長期的な視点が欠かせないのです。要するに、短期的な数字だけを追うのではなく、自社は何のために存在し誰にどんな価値を提供するのかという原点に立ち返ることが、持続的成長への第一歩となります。

短期的な利益にとらわれた経営では、変化の波に乗り遅れてしまいかねません。実際、目先の利益を守ることに固執して革新の機会を逃した企業(例えば米Kodak)は市場の変化についていけず没落しました。一方で、短期的な損失を厭わず将来を見据えた大胆な投資を行った企業(日本の富士フイルム)は新たな活路を開き、事業転換に成功しています。この対照的な例が示すように、長期的視野に立った戦略と挑戦の有無が企業の命運を分けるのです。

人財こそ企業にとって最大の資産

企業はつまるところ「人」の集合体であり、どんな優れた戦略もビジョンも、それを実行に移すのは人です。古くから「企業は人なり」と言われるように、人こそが企業の価値を生み出す源泉であり、社員一人ひとりがかけがえのない“人財”なのです。だからこそ企業は、人財の成長を何より重視すべきだと考えます。従業員の成長なくして企業の成長はあり得ません。社員に挑戦の機会を与え、その挑戦を通じて成長することを全力で支援する――その積み重ねが組織全体の力を高めていきます。社員が積極的に挑戦し新たな経験を積むことで、結果的に多くの価値やイノベーションが生まれるのです。実際、企業の理念に心から共感し情熱を持って働ける人財は、困難な局面でも自発的に工夫してそれを乗り越えてくれるものです。人という最大の資産を大切にし、安心して挑戦できる環境を整えることこそが、企業の未来を切り拓く原動力になります。

失敗を恐れず未来を見据えた意思決定

急速に変化する時代において、失敗を恐れて挑戦しないことは最大のリスクと言えます。社内に「失敗しても責めない」文化が根付いていれば、社員は安心して新しいアイデアに挑戦でき、革新的なアイデアや取り組みが次々と生まれてきます。反対に、失敗を過度に恐れる文化では挑戦が萎縮し、組織の成長は停滞してしまうでしょう。環境の変化に直面したとき、現状維持に固執していては先細りになるばかりです。プレッシャーや不確実性があっても、未来を見据えて果敢に挑戦する意思決定ができるかどうかが、企業の将来価値を大きく左右します。

もちろん、そのような大胆な決断を下すにはリーダーシップが求められます。経営トップは将来の方向性を示す明確なビジョンを掲げ、短期的な業績に一喜一憂せずに長期的視野で決断する覚悟を持たねばなりません。たとえ周囲から短期的成果を求める圧力があっても、将来の成長につながると信じる道を貫く強さこそが真のリーダーの資質です。私は、失敗を恐れずに未来志向で挑戦し続ける企業文化と、ブレない信念を持ったリーダーシップによってこそ、企業の価値は大きく高まり持続可能な成長が実現すると確信しています。

稲澤 大輔

稲澤 大輔

INA&Associates株式会社 代表取締役。大阪・東京・神奈川を拠点に、不動産売買・賃貸仲介・管理を手掛ける。不動産業界での豊富な経験をもとに、サービスを提供。 「企業の最も重要な資産は人財である」という理念のもと、人財育成を重視。持続可能な企業価値の創造に挑戦し続ける。

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