テクノロジー活用と人財投資で高める不動産業の労働生産性 — INA&Associatesの取り組み

不動産業界は従来、長時間労働やアナログ業務が常態化し、生産性向上が大きな課題となってきました。しかし現在、この業界にもデジタル変革の波が押し寄せており、同時に「人」を活かす経営の重要性も見直されています。本記事では、不動産業界経験者の読者に向けて、INAが目指す労働生産性向上の取り組みを、テクノロジー活用と「人財」への投資という観点からご紹介します。業界共通の課題を踏まえつつ、INAが重視する価値観や具体策を紐解き、短期的な利益より持続的成長と社会的価値を重んじる当社の考え方を知っていただければ幸いです。

不動産業界が直面する労働生産性の課題

不動産業界全体で指摘される生産性低下の原因には、以下のような構造的課題があります。

  • 長時間労働の慣習: 業務範囲が広く多岐にわたるため、人海戦術に頼らざるを得ない場面が多く、結果として勤務時間が長時間化しがちです。実際に、一部の企業ではFAXで物件情報を送受信したり手書きで日報を作成したりといった非効率な手法が残存しており、その時間的ロスが残業の増加につながっています。
  • アナログな業務プロセス: 紙の契約書や対面中心の商習慣など、他業界に比べデジタル化が遅れた業務が多い点も問題です。情報共有やデータ管理が十分にシステム化されておらず、属人的な作業に頼るケースが散見されます。その結果、業務効率が上がらず、生産性が停滞する一因となっています。
  • 属人的なノウハウの蓄積: 個人の経験や勘に依存した営業・管理手法が根強く残っており、業務が特定の社員にひも付いてしまう傾向があります。この「属人化」が進むと、チーム内で知見が共有されず、高いスキルを持つ社員ほど業務負担が集中してしまうなどの弊害を生みます。担当者が不在になると業務引継ぎが滞り、顧客対応にも支障を来すリスクが高まります。

上記のような課題により、日本の不動産業の労働生産性は国際的に見ても低い水準に留まっています。一例を挙げると、米国の不動産業の生産性水準を100とした場合、日本はわずか27.1に過ぎないとの報告もあります。業界全体として効率化と働き方改革が急務であることは明白でしょう。

テクノロジー活用による業務効率化

こうした課題に対し、INAは積極的にテクノロジーを活用することで業務効率化と労働時間の短縮を図っています。最新のデジタル技術を業務プロセスに取り入れることで、従来の「アナログな非効率」を解消し、社員がより付加価値の高い業務に専念できる環境を整備しています。

  • RPA(Robotic Process Automation)の導入: 定型的な事務作業やデータ入力など、人手で行うと時間がかかる反復業務にRPAを導入し、自動化を進めています。例えば、契約書類の作成・チェックや物件情報の更新といった作業をソフトウェアロボットに任せることで、作業時間とミスの大幅削減が可能になります。現に、業界大手ではAIとRPAを組み合わせてチラシ作成を自動化し、年間約20,000時間もの工数削減を達成した例も報告されています。INAでも同様に、煩雑なバックオフィス業務の自動化を進めることで、現場社員が本来注力すべき顧客対応や提案業務に時間を振り向けられるようにしています。
  • AI技術の活用: 人工知能(AI)を業務に取り入れ、意思決定や顧客対応の高度化に役立てています。たとえば、入居者からの問い合わせ対応や、物件データの自動分類・分析により、担当者の負担を軽減しつつサービス品質を向上させています。実際にAIを導入して入居者対応や物件情報管理を自動化することで業務効率を上げ、スタッフはより付加価値の高い業務に注力できるようになります。これにより、蓄積されたデータをもとにした顧客ニーズの予測や、提案精度の向上も期待できます。
  • クラウドシステムの導入: 社内外の情報共有と業務管理にはクラウドベースのシステムを活用しています。INAでは数年前から顧客管理や物件情報管理にクラウドCRMを導入し、物件提案資料の作成や顧客フォローアップの効率化を実現しました。その結果、業務時間が従来の3分の1に短縮し、提案できる物件数も大幅に増加するなど、生産性向上に大きく寄与しています。クラウド上でデータを一元管理することで、社内の誰もが必要な情報に即時アクセスでき、属人的になりがちだったノウハウの蓄積・共有もスムーズになっています。

このように最先端テクノロジーの導入は、INAの業務プロセスを抜本的に効率化し、長時間労働の是正に直結しています。テクノロジーはあくまで手段ではありますが、煩雑な手作業を減らし生産性を底上げする強力な武器となるでしょう。

人を「人財」として捉えた投資と社員教育

INAが経営で最も重視しているのは「人材」ならぬ「人財」の成長です。INAでは人を単なる労働力やコスト要員ではなく、企業にとってかけがえのない財産と位置付けています。この考え方から、社員への教育・研修や理念共有への投資を惜しまず、人財育成に注力している点が大きな特徴です。

具体的には、社員一人ひとりが着実にスキルアップできるよう、社内研修制度の充実やOJTを通じた実践的な学びの機会を提供しています。また、業務上得られた知見をチームで共有する文化を育むことで、ノウハウの組織内蓄積を図っています。社内には「学び合い」の風土が根付いており、若手もベテランも互いに知識や経験を交換し合うことで、組織全体の知的生産性を高めています。こうした人財への継続的な投資により、社員が成長し能力を高めれば業務効率やサービス品質が向上し、それが顧客満足度の向上と企業の収益性向上につながるという好循環を生み出しています。

さらにINAでは、単に業務スキルを伸ばすだけでなく企業理念の共有にも力を入れています。経営トップから現場までビジョンやミッションを浸透させ、社員全員が「なぜこの仕事をするのか」という目的意識を持てるよう努めています。企業の価値観に共感し、自らの役割を理解して主体的に動ける人財こそが真の競争力になるとの信念が背景にあります。このため採用においてもスキル以上にカルチャーフィットを重視し、入社後も定期的な面談や社内イベントで理念の共有・再確認を図っています。

INAは「人財」の成長への投資を決して惜しまず、社員一人ひとりがその可能性を最大限発揮できる環境を整えることを経営のミッションとしておいています。人こそが企業の最重要資産であり、社員への積極的な投資こそが持続的成長の基盤であるという確固たる信念のもと、人への投資を経営の中心に据えています。

短期利益より持続的成長と社会的価値を重視する経営方針

INAの経営方針のもう一つの柱が、「短期的な利益にとらわれず、持続可能な成長と社会への価値提供を優先する」という考え方です。四半期ごとの売上や目先の利益に左右されるのではなく、長期的視野に立った意思決定を行うことで、真に強い企業体質を築こうとしています。

私は常に、「利益は企業存続に不可欠な“酸素”のようなものだが、それ自体が目的になってはならない。企業の本質的な目的は社会や顧客に価値を提供し続けることであり、利益はその結果としてついてくるものだ」と考えています。この信念のもと、INAでは事業戦略においても短期的な数字よりも中長期的な成長性や社会的意義を重視しています。

例えば、新たなテクノロジー導入や人財育成への支出も、短期的なコスト増としてではなく将来への投資と捉えています。また、クライアントやパートナー企業との関係構築においても、公平で持続可能な win-win の関係を追求します。無理な値下げ競争や過度なコスト削減で一時的に利益を上げるのではなく、関係者すべてにメリットが行き渡る仕組みを構築することで、長期的な信頼と協業体制を築いているのです。実際に、賃貸管理業務においては最新ITの活用により中間マージンを圧縮し、オーナーにも協力会社にも利益を還元するビジネスモデルを採用しています。これによりサービス提供側・利用側双方の満足度を高め、結果的に事業全体の持続的な成長につなげています。

このような経営判断の背景には、「頑張っている人が正当に評価され、報われる社会を実現したい」という強い想いがあります。短期的な損得に囚われず将来への投資を優先する姿勢は、社員に対しても社会に対しても誠実であり、ひいては企業ブランドの信頼性向上にも寄与しています。

現場社員がやりがいを持って働ける職場環境づくり

INAが目指すのは、現場の社員一人ひとりが高いモチベーションとやりがいを持って働ける職場をつくることです。そのために、自己成長の機会、適切な裁量権、そして公正な評価を与える組織風土の醸成に努めています。

まず自己成長の機会については先述のとおり研修やチャレンジ推奨の文化を通じて保証されています。社員には新しい業務やプロジェクトにも積極的に挑戦することが奨励され、失敗を恐れず成長の糧にできる心理的安全性の高い環境が整えられています。情報共有制度の充実やナレッジマネジメントにも力を入れることで、各自が得た学びを組織全体の資産として蓄積し、自分の成長が会社の成長に直結している実感を持てるようにしています。こうした取り組みが社員の自己効力感を高め、仕事への意欲向上につながっています。

次に裁量権の付与です。INAでは社員を信頼し、大きな裁量を持って仕事に臨ませる文化があります。現場の判断を尊重し、トップダウンではなくボトムアップで意見を取り入れる風通しの良い組織体制を敷いています。若手であっても重要なプロジェクトを任されたり、自分のアイデアを提案・実行できる機会が多く用意されており、「自分が会社を動かしている」という当事者意識を醸成しています。これにより社員は責任ある仕事にやりがいを感じながら邁進できるのです。

そして公正な評価制度も、社員のモチベーション維持には欠かせません。不動産業界では従来、元請け・下請けの多重構造の下で現場の人に正当な評価や利益が届きにくいという課題がありました。INAはこの点を是正するため、社内外問わず透明性と公平性の高い仕組みを徹底しています。加えて、成果に応じた報酬やインセンティブ制度も整備し、「努力がきちんと報われる」実感を持てるよう配慮しています。実績ある社員には相応の称賛と昇進の機会が与えられ、逆に困難に直面している社員には上司やメンターが寄り添いサポートする文化が根付いています。社外に対しても、前述のように協力会社や職人といったパートナーに適切な報酬と評価が行き渡る関係を築いており、現場で汗を流す人たちにも光が当たるよう配慮しています。

おわりに:人とテクノロジーの融合が生み出す持続可能な未来

INAは、テクノロジーの力と人財への投資を両輪に、生産性向上と企業価値向上の両立を追求しています。長時間労働や属人化といった業界の根深い課題に真正面から向き合い、最新技術の導入による業務革新と、人を大切に育て活かす経営哲学を組み合わせることで、持続的な成長を実現しようとしています。

このアプローチは、単に社内の効率を上げるだけでなく、不動産業界全体の働き方に一石を投じるものです。社員がやりがいを持っていきいきと働き、顧客やパートナーから信頼され、社会に貢献できる企業であり続ける――そのためにINAはこれからも変革を恐れず挑戦を続けるでしょう。業界で働く皆様にとっても、「テクノロジー×人財」の融合による生産性向上の取り組みは、新たな可能性と共感を呼ぶものではないでしょうか。INAの価値観や取り組みに触れることで、不動産業界の未来像について改めて考えるきっかけになれば幸いです。

稲澤 大輔

稲澤 大輔

INA&Associates株式会社 代表取締役。大阪・東京・神奈川を拠点に、不動産売買・賃貸仲介・管理を手掛ける。不動産業界での豊富な経験をもとに、サービスを提供。 「企業の最も重要な資産は人財である」という理念のもと、人財育成を重視。持続可能な企業価値の創造に挑戦し続ける。

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