賃貸管理

築古賃貸物件オーナー必見:一括インターネット導入の専門解説

一括インターネットとは?仕組みと提供方式

「一括インターネット」とは、マンションやアパートなど集合住宅の建物全体でインターネット回線を契約し、各戸にその通信環境を供給する方式です。オーナーまたは管理会社が建物共用部分まで高速回線(主に光ファイバー)を引き込み、そこから各居室へ有線配線を行ったり共用部にWi-Fi設備を設置したりして、入居者は個別の契約や工事をせずにインターネットを利用できます。一般に「インターネット無料」や「インターネット完備」と表示される物件はこの一括型契約によるもので、物件側でプロバイダ契約まで完了している状態を指します。入居者が入居したその日から追加手続きなくネット接続できる点が大きな特徴です。

提供方式の種類: 一括インターネットには建物内への配線方法によっていくつかタイプがあります。それぞれ初期工事や速度、コストに違いがあります。代表的な方式は以下のとおりです:

  • 光回線(各戸専有型): 建物まで引いた光ファイバー回線を各住戸まで直接配線する方式です。各部屋ごとに専用の光回線終端装置を設置し、実質的に各戸が専有回線を使います。最大1Gbps級の高速かつ安定した通信が可能で、他の入居者の利用状況に左右されにくい最高品質の方式ですが、その分設備工事費用は高額になります。NTT東西の「フレッツ光マンション・全戸加入プラン」などがこのタイプに該当します。
  • 光回線+LAN配線型: 建物までは光ファイバーを引き込み、各住戸へは既設もしくは新設のLANケーブル(Ethernet)で配線する方式です。こちらも最大1Gbps程度の速度に対応し比較的高速・安定ですが、各部屋内までLANケーブル配線工事が必要です。費用は専有型より抑えられ中程度となり、マンションISPでは最も普及している一般的なモデルです。同時接続が集中すると速度低下の可能性はあります。多くのインターネット提供会社がこのタイプのサービスを展開しており、24時間対応のサポートを備える業者も見られます。
  • VDSL(電話線)型または同軸ケーブル型: 建物共用部まで光回線等を引き、各戸へは既存のメタル配線(電話回線やテレビ共聴の同軸ケーブル)を転用する方式です。例えば電話線を使うVDSL方式では各戸にモデムを設置し最大100Mbps前後、テレビのアンテナ線を使う同軸方式では専用モデムで下り320Mbps/上り10Mbps程度の速度が出ます。これらは宅内への新規配線工事が不要なため初期費用が安価で済む利点があります。ただし電話線・同軸線の技術的制約から通信速度や将来の拡張性は光ファイバー直結型に劣ります。築年数の経ったRC造マンションなどで「できるだけ工事負担を減らしたい」という場合に検討される方式です。実際にはJ:COMなどCATV会社のインターネットや、NTTのVDSLプランなどが相当します。
  • 共用部Wi-Fi型: 建物内に有線配線をほとんど行わず、共用廊下や屋外に設置した高出力Wi-Fiアンテナを通じて各戸に電波を届ける方式です。小規模アパート向けの手軽な方法で、各室への工事が一切不要な点がメリットです。木造・軽量鉄骨の低層アパート(概ね20~30戸以下)で導入されるケースが多く、事前に電波状況を調査した上で機器設置を行います。初期費用は比較的安価ですが、壁の材質や間取りによっては電波が届きにくい場合もあり、また2~4戸で1台の無線ルーターを共有するため利用状況次第では速度低下が発生し得ます。全ての機器が共用部にあるため保守は容易ですが、通信品質は他方式に比べるとやや不安定と言えるでしょう。

以上のように、一括インターネットには「高品質だが高コスト」から「手軽だが低速」まで様々な方式があります。築古物件に導入する際は建物構造や戸数、既存配線の有無に応じて最適な方式を選定することが重要です。例えば鉄筋コンクリート造の中規模マンションで配線工事を避けたい場合は既設のテレビ同軸を使う方法が有効ですし、木造アパートでコスト最優先なら共用部Wi-Fi型が候補になります。逆に多少費用をかけても高速化したい場合は各戸まで光配線するプランを検討するとよいでしょう。このような技術的選択については後述の「管理会社のサポート」でも触れますが、専門業者の提案を受けながら決定すると安心です。

築古物件で高まる入居者ニーズの変化

インターネット環境は現代の入居者にとって必須の生活インフラとなっています。特に若年層や単身世帯では、日常のコミュニケーションや情報収集、動画配信サービス利用にネット接続は不可欠であり、物件選びの際にも重視される条件です。近年では賃貸情報サイトの検索項目にも「インターネット無料」や「ネット対応」が用意されており、チェックを入れるだけで該当しない物件が検索結果から除外されてしまうほど、その有無は入居希望者の絞り込み条件になっています。つまりネット環境がない物件は、初期段階で候補から外されるリスクが高まっているのです。

特に築古物件(築年数の経過した賃貸住宅)においては、入居者ニーズの変化を踏まえた対応が急務です。新築物件では今や9割超がインターネット無料を備えているという調査もあります。これは新築ではネット完備がもはや標準設備になりつつあることを示しています。一方、築5年以上の物件ではネット無料化率が半数程度、築10年以上になると2割台まで落ち込むとのデータもあり、築浅物件と築古物件の間でネット設備の有無に大きな差が生じています。入居者目線では、新築・築浅物件は家賃が高めでもネット完備が当たり前なのに対し、築古物件は家賃が多少安いだけでネット環境がないと割高に感じられてしまうという指摘があります。実際、新築~築5年の平均家賃(単身向け)は約6.3~6.4万円ですが、築5年超の物件は平均約6.0万円と3,000円ほど安くなる一方で、その半数はネット無料ではありません。入居者からすると家賃が少し下がる代わりに毎月5~6千円のネット契約料が別途かかる計算になり、「それならネット無料の物件の方が割安だ」と判断されてしまうのです。このように築古物件こそネット設備の有無が空室率に直結しやすい状況になっています。

さらに、2020年以降のコロナ禍でリモートワークやオンライン授業が普及し、自宅のネット回線に対する要求水準は一段と上がりました。在宅勤務でのテレビ会議、大容量データのやり取り、動画配信サービスでの娯楽消費などが日常化し、「すぐ使える高速インターネット」は以前にも増して入居者の強い要望となっています。築古物件のオーナーにとって、こうした入居者ニーズの変化に対応することは賃貸経営を維持する上で不可欠です。古い建物だからといって設備面で見劣りしたままでは、競争力を失い空室が埋まらないリスクが高まります。逆に言えば、築古物件であっても現代のニーズに合わせてインターネット環境を整えれば、入居希望者に「選ばれる物件」に生まれ変わるチャンスがあるということです。

一括インターネット導入による主なメリット

一括インターネットを導入することは、築古物件の価値向上策として多くのメリットをもたらします。具体的な利点を以下に解説します。

  • 空室率の低下と入居率向上: 最大の効果は空室対策としての有効性です。インターネット無料物件は入居者からの人気が高く、他の同条件の物件より優先的に選ばれやすくなります。実際、賃貸住宅の設備人気ランキングでは「インターネット無料」が近年連続して堂々の1位を獲得しており、ネット環境が整っていること自体が強力な集客ポイントです。「ネット無料ならここに住みたい」という層を確実に取り込めるため、導入後は入居率アップが期待できます。また既存入居者にとってもメリットが大きいため退去抑制に効果があり、結果として長期的な空室率低下につながります。
  • 賃料の維持・アップ: 一括インターネットの導入は物件の付加価値を高めるため、適正な家賃水準を維持したり場合によっては小幅な値上げを図ったりすることも可能になります。ネット完備物件は入居者にとって毎月の通信費負担が減るメリットがあるため、多少家賃が高めでもトータルコストで得と感じてもらいやすくなります。実際に市場データでも、同エリア・同間取りで比べた場合にネット完備物件の家賃は未導入物件より平均1,000~2,000円程度高く設定されているという調査があります。これはオーナー側がネット提供コストを賃料に上乗せして回収していることを示唆します。入居者も個別契約なら月額5,000円以上かかるネット代が家賃+共益費に1,000~2,000円上乗せされる程度で済むなら納得感があります。例えば後述するシミュレーションのように1戸あたり月額2,000~3,000円の家賃アップで導入費用をまかなえるケースも多く、導入後は実質的に家賃収入増につなげることが可能です。築古物件では家賃下落が課題になりますが、ネット無料という付加価値によって家賃水準を維持・向上させられれば、収益悪化の防止策として大きな意味を持ちます。
  • 競合物件との差別化: 築古物件が新築・築浅物件と競争していくには、何らかの強みや特徴づけが必要です。一括インターネット導入は手っ取り早く物件を差別化する手段となります。特に同じエリアに似た条件の物件が多数ある場合、「ネット無料」の一言があるだけで募集広告の反響率が格段に上がります。SUUMOやHOME’Sなどポータルサイトでも、「無料インターネット付き」と明記された物件は目を引き、設備にこだわる入居者にアピールする強力なキャッチコピーになります。築年が古い物件でもネット環境を整えていることで、「古いけどちゃんと今風に手入れされている」という印象を与えられ、競合物件との差別化・ブランディングに寄与します。特に築10年以上でネット未対応の物件がまだ多数ある中、いち早く導入することで周辺の築古物件群から一歩リードできるでしょう。差別化により入居付けが有利になるだけでなく、後述のとおり物件価値の維持にもつながります。
  • オーナーの収益性向上: 空室減と適正家賃維持という効果により、トータルではオーナーの賃貸経営収益が向上します。一括契約するネット回線はボリュームディスカウントが効くため、各戸あたりの月額費用は個別契約より安価です。その分を家賃上乗せで補填すれば、回線費用を差し引いても手元に利益が残る設計が可能です。導入コスト回収後はまるまる増益要因となるケースも多く、投資対効果が高い設備といえます。加えて、物件の魅力が増すことで長期的な安定経営に寄与し、空室損失や広告費の圧縮といった間接的な収益改善効果も見逃せません。つまり一括インターネット導入は入居者満足度向上を通じてオーナーの収入増につながるWin-Winの施策なのです。
  • 入居者満足度向上とクレーム削減: オーナー側の視点だけでなく、入居者サービス向上の面でもメリットがあります。新居で面倒なネット回線工事の手配が不要となり、入居初日からWi-Fiが使えるのは入居者にとって大きな利便性です。これにより「引っ越したのにネット開通まで時間がかかる」「工事業者の立会いが煩わしい」といった不満を解消できます。また昨今問題視される低品質な無料ネット設備による苦情も、適切な方式と帯域容量を選べば回避可能です。初期に普及した低速回線では「動画が止まる」「通信が遅すぎる」といったクレームが相次いだ事例もありましたが、現在ではオーナーや管理会社も品質に配慮してグレードの高いサービスを導入する傾向です。さらに、契約や技術面の問い合わせ・トラブル対応は通常プロバイダのサポート窓口が直接受け付けます。そのためオーナー自身が入居者からネットの不具合連絡を受けて対応に追われるリスクも低減します。きちんと24時間サポート体制のある業者を選べば、入居者の不満は早期解消されクレームが管理会社経由で持ち込まれるケースも減るでしょう。結果として入居者満足度が向上し、オーナーにとっても管理負担軽減につながります。

以上のように、一括インターネット導入は空室対策から収益改善、サービス向上まで幅広いメリットをもたらします。ただし恩恵を最大化するには、適切なサービス選定と運用が重要です。次章では、そのためのコストと回収見通しについて検討します。

導入コストと投資回収の目安

実際に一括インターネットを導入する際に気になるのが費用対効果でしょう。ここでは一般的な導入コストの範囲と、投資回収期間の目安モデルを解説します。

●導入費用の相場: 費用は主に初期工事費用(回線引き込み工事や機器設置費)と月額費用(回線使用料やプロバイダ料、保守費用)に大別されます。金額は建物規模や方式によって幅がありますが、目安として10戸規模の集合住宅で記載します。

  • 初期費用: 0~20万円程度(有線方式の場合)0~40万円程度(無線方式の場合)。光回線を引き込むか否か、各戸への配線工事の有無、建物構造、防水処理や機器増設の必要性などで変動します。業者によっては初期費用無料プラン(工事費を月額に加算する形)を提供している場合もあり、分割払いや長期契約条件で初期負担をゼロにすることも可能です。例えば費用を6年程度の分割で月額費用に上乗せし、実質工事費無料とするケースもあります。
  • 月額費用: 7,000~30,000円前後(10戸あたり)。1戸あたりに換算すると数百円~数千円ですが、これはサービス内容とサポート範囲によって差があります。シンプルなベストエフォート型インターネットのみの場合は安価(例:10戸で月7,000~1万円程度)ですが、24時間サポートや高品質ルーター貸与などフルセットの場合は高め(同20,000~30,000円規模)になります。契約帯域の大きさ(例えば共用部まで1Gbpsか200Mbpsか)でも料金は変わります。機器レンタル料や通信障害対応の保守費が含まれるか否かが大きなコスト差要因です。

以上は目安で、実際の見積もりは各物件ごとに異なります。ただ、多くの業者が無料で現地調査・見積もりを行ってくれるため、複数社に問い合わせて比較検討すると良いでしょう。また初期費用0円プランを利用する場合は、途中解約時の違約金条件なども確認が必要です。

●回収期間のシミュレーション: 投資として考えた場合、どの程度の期間で費用を回収できるかを試算してみましょう。典型的な例として、10戸のアパートに初期費用20万円・月額費用1万円のプランを導入したケースを考えます。この場合、各戸の家賃を月3,000円アップすることで、1年間で初期投資と年間ランニング費用をほぼ回収できます。具体的には:

  • 一年間の追加支出: 初期費20万円 + 月額1万円×12ヶ月=32万円
  • 一年間の家賃増収: 3,000円×10戸×12ヶ月=36万円

上記のように1年目で収支+4万円となり、初期費用を償却した2年目以降は、増収分から月額費用を引いて毎月約2万円(=年間約24万円)の純増益が見込めます。入居者にとっても個別契約なら5,000円以上かかるネット代が実質3,000円負担で済んでいる計算となり、双方に利点のあるモデルです。

もちろん、市場家賃との兼ね合いもあるため安易な値上げは禁物ですが、周辺相場を見極めつつ数千円程度の上乗せであれば入居付けに響きにくいという指摘もあります。実際、「ネット無料でも家賃が高すぎると逆効果」という声もありますが、入居者のネット契約コストとのバランスを考えれば1,000~2,000円程度までのアップであれば受け入れられやすいでしょう。上記モデルは極端に短期回収を狙った例ですが、例えば家賃+1,000円程度に抑えれば入居者負担感はほぼ無く、3年ほどで回収できる計算になります。空室がちな物件であれば家賃は据え置いてネット無料化し、空室期間の短縮による損失圧縮で元を取る戦略も考えられます。この場合の回収期間は明確には算出しづらいものの、「1室でも空室が埋まれば月数万円の機会損失が解消される」と考えると十分ペイし得る投資といえます。

要は、一括インターネット導入の費用は家賃調整や空室改善によって回収可能であり、中長期的にはオーナーの利益を増やす効果が高いことがわかります。導入コストのハードルは、以前に比べてかなり下がってきています。さらに後述するように、物件価値や将来資産にもプラスに働く点を考慮すれば、単なる費用ではなく資産価値向上のための投資と位置付けられるでしょう。

物件価値向上・資産保全への影響

築古物件に一括インターネットを導入することは、短期的な入居率アップや収益増だけでなく、長期的な資産価値の維持・向上という観点でも重要です。いくつかのポイントに分けてその影響を見てみます。

  • 競争力維持による資産価値の底上げ: 賃貸物件の市場価値は、最終的には「安定して賃料収入を生み出す力」によって決まります。現代の入居者ニーズに対応できない物件は空室が増え賃料下落も避けられず、結果として収益価値=物件価値が下がってしまいます。インターネット無料設備を導入することは、築古物件が賃貸市場での競争力を回復・維持する策であり、ひいては将来の資産価値下落を食い止める効果があります。実際、新築物件ではネット無料が当たり前となった現在、築年が進んだ物件でもネット完備へアップグレードする動きが広がっています。築20~30年の物件でも約3割がネット無料に踏み切っているとのデータもあり、これは裏を返せば「導入した物件は他より優位に立てている」ことを意味します。時代の標準設備に合わせて物件をアップデートすることは、資産価値の目減りを防ぐ上で不可欠なのです。
  • 賃料増加分による資産価値評価の向上: 不動産の資産価値は収益還元法(賃料収入÷期待利回り)で評価される場合があります。この観点では、一括インターネット導入によって家賃を維持・上乗せできること、また空室損失を減らせることは直接的に物件の評価額を押し上げる要因となります。前述のモデルのように月数万円でも純収入が増えれば、その分物件価格が上昇してもおかしくありません。また、仮に売却を検討する場合でも「当物件は全戸インターネット完備です」とアピールできれば買い手への印象も良くなり、交渉を有利に進められるでしょう。特に昨今は投資用マンションでもネット無料が売り文句になる時代です。オーナーチェンジで引き継がれる入居者にとってもメリットが継続するため、資産としての魅力が高まります。
  • 建物のブランドイメージ向上: 築古物件の場合、どうしても「設備が古いのでは」「暮らし心地は大丈夫か」といったマイナスイメージを持たれがちです。そこで時流に合わせた設備投資(例:インターネット設備更新や宅配ボックス設置等)を行うことで、「適切に手入れされ価値が維持されている物件」というブランドイメージの向上につながります。入居者からもオーナーの管理姿勢に信頼感を持ってもらえ、結果として長期入居や知人紹介など好循環を生む可能性もあります。建物そのものの寿命とは別に、“選ばれる物件”としての寿命を延ばす効果が期待でき、資産を守ることにつながるでしょう。

以上のように、一括インターネット導入は単なるサービス強化に留まらず、物件の資産価値を守り高める戦略的施策でもあります。築古物件ほど、こうした改善によるビフォーアフターの効果が大きい点も見逃せません。今後も入居者のネット需要は高止まりすると予想されるため、適切な設備投資で資産価値を将来にわたって支えていくことが肝要です。

導入の成功事例:築古物件が満室復活したケース

実際に築古アパートで一括インターネット導入を行い、空室改善に成功した事例を紹介します。

〈事例〉築30年超・10戸アパートの場合: 都内近郊にある木造2階建て全10室、築古(築30年程度)の単身者向けアパートでは、従来から簡易的なインターネット設備が導入されていたものの通信速度が遅く、入居者から「動画視聴に耐えない」「ネットが重い」と不満の声が上がっていました。この物件を管理する不動産会社はオーナーと協議の上、共用部Wi-Fi型の新しい一括インターネットサービス(Buffalo社のアパート向けWi-Fiシステム)を導入することにしました。ポイントは各戸内工事が不要な方式を選んだことで、入居中の住戸があってもスムーズに導入できた点です。事前に1室空きがあるタイミングで電波調査を実施し、全室で十分な電波強度が得られることを確認した上で工事を行いました。

導入にかかった初期工事費用は約35万円でしたが、これについては6年間の分割払い契約(初期費用実質0円プラン)を活用し、月額費用に組み込む形としました。ランニングコストは月額1戸あたり約1,200円(10戸で約12,000円)で、24時間サポート・保守対応込みの料金です。オーナーはこの費用負担に見合うよう家賃を調整し、各入居者に実質数百円~千円程度の負担増となるよう共益費をわずかに上げました。その結果、入居者から大きな不満は出ず、むしろ「ネットが快適になった」と好評を得ています。導入後4年ほど経過していますが通信品質に関するクレームは現在まで一件もなく、物件は満室稼働を継続しています。オーナーも「以前は退去が出ると埋まるまで時間がかかったが、ネット環境を改善してからは空室がすぐ埋まるようになった」と効果を実感しており、費用負担に対する納得感も高いとのことです。

この事例は、築古でも適切な方式を選べば低コストでネット設備を一新でき、空室対策に大きな効果があることを示しています。特に既存の遅いネット回線を放置していると入居者不満が蓄積し空室要因にもなりえますが、思い切って刷新することで物件の評価が一変します。「無料インターネットあります!」と胸を張って言える状態にすることが肝心だといえます。事例のように一度導入してしまえば長期間にわたり安定稼働し、オーナーにも入居者にも満足度の高い結果を生む設備投資となり得るのです。

導入検討における管理会社の役割と業者選定ポイント

一括インターネット導入を成功させるには、信頼できる管理会社や専門業者のサポートが欠かせません。技術的な事項や入居者対応を円滑に進めるため、以下の点で管理会社・業者の役割が重要となります。

  • 最適プランの提案: 前述したように、建物の構造や状況によって適切な導入方式は異なります。経験豊富な管理会社であれば、同種の物件での実績を踏まえて「この建物ならLAN配線型が良い」「いや電話線が活かせるのでVDSL型が現実的」など、オーナーにとってベストな提案をしてくれるでしょう。特に入居中住戸が多い場合は工事負担の少ない方式を勧めてくれるなど、実務的な観点でアドバイスしてもらえます。また複数の業者から相見積もりを取って条件交渉する際も、管理会社が仲介することでスムーズに進むケースが多いです。オーナー自身が通信技術に詳しくなくとも、専門家の提案を受けながら判断できるので安心です。
  • 導入工事・運用の負担軽減: 管理会社は導入決定後の工事日程調整や入居者への周知等も代行してくれます。各戸内工事が必要な場合、入居者との日程調整や立会いは煩雑ですが、管理会社が間に入ることでオーナーの手を煩わせません。事前通知や工事立会い、テナントからの問合せ対応など煩瑣なプロセスを一任できるのは大きな利点です。さらに導入後に入居者から「使い方が分からない」「接続設定をしてほしい」といった相談が出た場合も、管理会社経由でサポート窓口につないでもらえます。結果として、オーナーは導入を決める判断と費用負担をするだけで、実務作業の多くはプロに任せられるため、負担軽減と効率化が図れます。
  • 業者選定のポイント: 近年、一括インターネット提供業者は多数ありますが、選定にあたってはサービス品質とサポート体制を重視すべきです。具体的には「回線速度の実績(ピーク時でも安定して高速か)」「帯域保証の有無」「IPv6対応など将来性」「障害発生時の対応(何時間以内復旧か)」といった技術面を確認しましょう。特に24時間サポート窓口があるかどうかは重要です。深夜でも対応可能なコールセンターがある業者なら入居者も安心ですし、オーナー自身が夜間に呼び出される心配もありません。またサポート対応を自社で行っている会社は外注よりレスポンスが早い傾向があります。実際に「24時間自社対応のコールセンターを持つ業者にしたら導入後のトラブルが起きにくかった」というオーナーの声もあります。さらに契約条件もチェックしましょう。長期契約の縛りや途中解約違約金の有無、初期費用分割時の条件など、事前に管理会社とともに業者から詳細な説明を受けてください。信頼できる管理会社であれば過去の取引経験から「○○社は対応が丁寧」など情報を持っていますので、それも踏まえて業者選定すると失敗が少ないでしょう。
  • 導入後のフォロー: 管理会社は導入して終わりではなく、その後の運用フォローも担います。例えば利用状況をモニタリングし、常に満室で回線が混雑してきたら上位プランへの増強を検討する、逆に過剰な帯域を契約しているなら見直す、といった提案も考えられます。入居者から直接管理会社にネットに関する苦情が届いた場合、一次対応して業者へエ scalate(エスカレーション)するのも管理会社の役割です。こうしたアフターサポート体制を整えることで、入居者満足度を高く維持しつつオーナーの手離れの良い運用が実現します。

総じて、一括インターネット導入には技術面・運用面で専門知識が伴うため、信頼できるパートナーの存在が成功の鍵となります。もし現在お付き合いのある管理会社から具体的な提案がまだ無いようであれば、オーナー側から相談してみるのも良いでしょう。「実は最近ネット設備に関心がある」と伝えれば、多くの管理会社は前向きに検討・調整を進めてくれるはずです。自主管理の場合でも、実績のある専門業者に直接問い合わせれば丁寧に案内してもらえます。オーナーにとって無理なく導入できる形を探る意味でも、プロの意見を積極的に活用することをおすすめします。

結論:築古物件こそ一括インターネット導入を積極検討すべき

賃貸市場におけるインターネット環境の重要性が年々高まる中、築古物件のオーナーにとって一括インターネット導入は空室対策兼資産価値維持策として極めて有効です。新築では当たり前の設備となった今、後発である築古物件ほど導入効果は大きく、「ネット無料」という魅力によって入居付けや家賃設定で不利だった状況を覆すことができます。実務面でも、適切なプランを選び専門家のサポートを得れば、過度な負担なく導入可能であることが各種事例やデータから伺えました。

最終的に賃貸経営は入居者のニーズに応えられるかどうかに尽きます。インターネットは現代の入居者ニーズの中核です。築古だからと尻込みすることなく、むしろ築古物件だからこそ積極的に最新の設備を取り入れる柔軟さが求められています。幸い、一括インターネットは設備投資としての費用対効果が高く、オーナー・入居者双方にメリットが大きい施策です。本記事で述べたポイントを参考に、ぜひ前向きに検討してみてください。適切な判断と投資によって、築古物件でも魅力ある快適な住まいへと生まれ変わり、安定した賃貸経営を実現できることでしょう。入居者に選ばれ続ける物件づくりの一環として、一括インターネット導入はきっと大きな力となってくれるはずです。

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